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お手玉でツボを見つける『お手玉ツボかるた』▶高齢者向けゲームの難しさと学んだ教訓

今回は、渋谷区のデイサービスセンター パール鉢山で開催された『ツボかるた』イベントの舞台裏をお届けします。

今回は参加者が20名以上いましたので、A3サイズの大きな『ツボかるた』を2セット分用意をし、絵札に向かって、お手玉を投げる『お手玉 ツボかるた』を実施しました。

A3サイズの札20枚セットを2セット用意


A3サイズの絵札に向かってお手玉を投げる『お手玉 ツボかるた』

お手玉ツボかるたのルールはこちらの動画をご覧ください。

笑顔あふれる活動の一方で、高齢者向けゲームの新たな課題に直面しました。

今回は参加者の人数がいたので、赤・青・緑のチーム対抗戦で行いました。
チーム別にリボンの輪を首からかけてもらい、チームの色がついたお手玉を配布しました。

3色対抗戦で遊ぶため、青・赤・緑のお手玉と首からかけるリボンを用意
3チーム対抗戦で実施


イベントの様子と挑戦


30名近くの高齢者が参加したこの日、認知症を含む多くの方々に『ツボかるた』を体験していただきました。スタッフの献身的な支援のもと、誰一人離れることなく、イベントは成功裏に終わりました。しかし、この成功の背景には、見過ごせない課題がありました。


高齢者向けゲームの難しさ

準備段階から、私は高齢者の方々にとってのゲームの難易度を痛感しました。高齢者がゲームを楽しむとき、ルールなどを詳しく説明し、ゲーム進行をする司会者のほかに、周りのプレイヤーの高齢者を見守る人の必要性を強く悟りました。

1. 視認性の問題

高齢者になると、白内障にほとんどの人がなり、視界が黄色っぽくなってしまいます。これは人間の目でカメラの凸レンズに相当する水晶体が年齢とともに黄色く着色してしまうことによるものです。

実際に高齢者が見ているのイメージが以下のような色になります。
見ているものが全体的に黄ばんでしまい、色では区別にしくくなるのですが、縦でみると、区別が比較的しやすいため、明暗の区別はできることになります。

つまり、高齢者向けサービスでは、色でデザインするのではなく、明暗のトーンでデザインすることが重要です。

▲ 高齢者の色の見え方のイメージ    長野県建築士会諏訪支部青年委員会の資料より


よって、ゲームの札や指示は、明暗を意識しなければ、見えにくいという問題があります。特に、小さな文字や複雑なデザインは理解が難しく、楽しむことを妨げる要因となります。

2.音声の聞こえにくさ
高齢になると、聞き取りにくい音域がでてきます。かるたの冒頭の文字もきちんと聞き取ることができない方が多かったので、声で伝えつつ、読み札も見せて伝えることが大事だと悟りました。


3.操作・ゲーム進行の難しさ
物理的な操作、例えば札をつかむ動作やゲームの進行に必要な操作が困難である場合があります。これは、手の握力が弱い、指の動きが鈍いなど、高齢に伴う身体的変化に起因します。

今回、絵札は100円ショップのダイソーで手に入れたパネル(現在は廃盤。店頭在庫のみの品薄商品 840㎜×450㎜×5㎜のパネル)を使い、厚みを持たせたほか、札を取るときに使うお手玉は、つかみやすいようにリボンを付け、投げた感覚がわかりやすいように鈴を付けました。

パネルを張り付けて厚みを持たせた絵札


リボンと鈴をつけたお手玉
赤組のお手玉

ゲーム進行がスムーズに進むよう、プレイヤーの高齢者の方1人に3つのお手玉を渡したところ、「1枚の絵札に1個のお手玉を投げてください」と言っても、3つのお手玉すべてを投げる方もいて、ひとりがやるとみんなもしだして困りました。

3. 理解の難しさ

ゲームのルールや目的を理解することが難しいという問題もあります。特に新しいコンセプトや活動に慣れていない場合、認知機能の低下も影響し、学習が困難になります。

特に、札の視認性や指示の理解度に課題があり、介護スタッフの負担軽減には至っていません。スタッフからの「頑張ってくれたほうです」という言葉には、この難易度が介護現場に与える影響を強く感じました。
高齢者向けゲームは「シンプル」でなければいけません。

対応策と改善点

1. 視認性の向上

今回は絵札のサイズをA3と大きくし、色彩やフォントを高齢者に優しいものに変更することで、視認性を高めました。
また、ゲームの進行に大型モニターを使用することで、視覚的なサポートを提供することで、理解を助けることができます。

2. 操作性の改善

札の持ちやすさを考慮し、素材や形状を工夫することで、物理的な操作を容易にしました。また、操作が必要な動作を最小限に抑え、よりシンプルなゲームデザインにすることも有効です。

3. ゲーム理解の促進

ルールの簡素化や、視覚的な説明を充実させることで、ゲームの理解を助けます。
また、これまで20秒間ツボ押しをしてくれないという課題がありました。そこで、さらに、ツボ押しの20秒間「ツボ押しの歌」をかけてみたところ、ツボを押していただけました。

参加者が共に行動することでルールを自然に理解できる工夫も有効です。

まとめ

『ツボかるた』イベントを通じて、高齢者向けゲームの難しさとそれに対する対応策を学びました。これらの課題に真摯に向き合い、改善策を講じることで、高齢者が楽しく、かつ安全にゲームを楽しめる環境を提供することが今後の目標です。高齢者の皆さんに喜んでいただけるゲーム作りを目指し、日々の活動を続けてまいります。

 募集

東京近郊の高齢者が集う施設様(~30名まで)にて、ツボかるたの実演をさせていただける施設・団体様を募集中です。

ご興味がある施設・団体様はこちらから、お問い合わせください。


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