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クビの配達引き受けます #14

【戻る】

「百八十秒ですよ、ザジ」
「わーってる、って!」

 ザジは飛ぶ。目に見えて向上したスラスター推力は、数ブロック離れたヘカトンケイルへ追いつかんとする。

 凄まじい速度。到達まであと何秒だろうか。こちらのハンマーパンチ突撃と同等、いやそれ以上の瞬発力がある――赤い保護シールドの下、ヘカトンケイルのモノアイは冷徹に戦況を分析する。

 状況、不利。撃墜可能性濃厚。されどAIに撤退の二文字無し。何よりヘカトンケイルmk-Ⅵにも、切り札がある。

「おっ?」

 ザジは声を上げる。ヘカトンケイルが構えを解いたのだ。潰れた装甲が引っかかっていたのを、強引に。衝撃で歪んだ指が数本脱落したが、ものともしない。

「見上げた根性だ」

 だが、そこからどうする気なのか。損傷が大き過ぎて打突には使えぬ。ガトリングガンも展開出来まい。そんな状況で――とザジが訝った矢先、それは射出された。

DODODODOOOOOOMMM!!!

 使い物にならぬと思われていた、ヘカトンケイルの四腕。その肘から先が切り離され、ミサイルじみて飛翔したのである。

 アームドブースター。試験搭載されていたその武器に、ザジはバイザー下で目をむいた。

何て面白いモノを。
だが用心しなさい。
何でだよサンジュ。
センサーが高エネルギー反応を捉えています。
下手に触れば爆発の危険性があるでしょう。
成程。
だったら。

「下手に触らなきゃあ、イイ訳だッ!」

 コンマ数秒の打ち合わせ。リミッター解除によってもたらされたサンジュとのリンクを元に、ザジは対処行動開始。

 スラスター推力向上。更なる加速。目前。迫るアームドブースター。
 身を捻る。スラスター偏向。重力制御装置調整。再びザジは鉄拳上へ飛び乗った。
 そのまま走る。曲芸じみたスプリント。だが二秒と持たぬ。速度差、何より走るには短すぎる足場。

 故に、ザジは蹴る。アームドブースターを。雷の装甲から、先程同様の攻撃を叩き込みながら。
 ザジは跳ぶ。次のアームドブースター目掛けて。ひしゃげ、ねじくれる蹴落とされた腕。それが爆発する頃には、もうザジは三発目へと飛んでいる。

 直角を描く、稲妻じみた軌道。四発目に到達。全腕撃墜。凄まじき、雷光の現し身じみたAPの挙動。その一挙手一投足を、ヘカトンケイルは解析する。予測する。

 照準を、合わせる。

「ストーム・フォール・ダウン。発動」

 四腕と繋がっていた、ヘカトンケイルの大型マルチコネクタ。その内部に仕込まれていた切り札、多連装光撃曲射砲が、火を噴いた。

【続く】


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