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赤い卵と緑の卵

まず最初に、声を大にして言っておこう。

卵は殻の色が違うからといって、栄養価に違いはありません!



上記の記事のように与えるエサによって特殊な卵を作る場合もあるらしいけれど、最初の写真の卵はすべて我が家で採れたもの。したがって、我が家にいるニワトリたちは同じエサを食べているわけなので、産んだ卵に色の違いがあるのは、ニワトリの種類が異なるだけ。日中は外を自由に歩き回り、夜になったら勝手に鶏小屋に入って寝るという、飼育環境もまったく同じ。だから、卵の栄養価にも違いがあるわけがないのだ。

と、いくら説明しても、家人のファンファンのお客さんの中には、頑として茶色の卵を選ぶ人がいるよう。そんな時には、ファンファンは聞くらしい。「あなたは卵を殻まで食べるのですか?」 相手はムッとした顔になるらしいけれど、茶色い卵信仰はなくならない。

したがって、商売人であるファンファンは、茶色の卵を産むニワトリを育てることを決意した。それも去年、88羽のヒヨコが生まれた後にである。

普通、そういうことって卵を孵化させる前に決めるんじゃないかと思うのだけれど、相手は計画性のないフランス人だから仕方がない。

ファンファンが聞いたところによると、雑種になるほど産む卵の色も薄くなるそうで、我が家のニワトリたちはまさに年々、様々な種類を掛け合わせている雑種の雑種。だから、今後は純血種を繁殖させることにするのだとか。中でも濃い赤茶色の卵(写真右端)を産む、黒い胴体に赤銅色の首を持つマラン(marans noir à camail cuivré)という種類のニワトリがいいらしい。


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しかし、時期はすでに初夏に入っていて、マランの雌鶏が売りに出されていない。見つかったのは、マランの雄鶏のみ。とりあえず、雄鶏だけでも確保しておこうと10羽は手に入れたのだれど、雌鶏がいなければ、やっぱり赤玉を産んでもらえない。

同じマランでも種類はいろいろあるようで、次に見つけたのはグレーバージョン(marans bleu à camail argenté)の雌鶏。卵の色はほとんど同じだけれど、若干茶色みの強い卵(写真右から2番目)を産んでくれるよう。


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しかしマランの雌鶏は2羽しか手に入らず、やっぱり足りない。さらに探し続けると、マランの有精卵を売ってくれるところが見つかった。ということは、私が卵をまた孵化させるということですね。こうして手に入れた赤玉51個は家に帰って見てみると、すでに3個が割れていた。よって我が家の有精卵を3個追加し、去年は4回目となる孵化器の出動となったのだ。



しかし、結果は先の3回と雲泥の差。48個の赤玉から生まれた黒いヒヨコはたったの8羽! 追加した我が家の卵3個からは、2羽生まれたのだけれど1羽はすぐに死んでしまったことを考えても、買ってきた赤玉のヒヨコ誕生率が低すぎる。買って来た時に卵自体がずいぶん汚れていると思ったのだけれど、鮮度そして保管状態がよかったのかが、そもそも怪しい。

教訓1、フランスで孵化させるための卵は買ってはいけない。

食べるための卵は、さすがに下手なものは売らないだろう。しかし孵化させるための卵ならば、買った側はヒヨコがただ生まれなかったとあきらめるしかない。しかも、買った時に中身を調べるわけにはいかないのだから、相手を信じるしかないのだ。

実は、有精卵の赤玉を売ってくれる家がもう1軒あったのだけれど、その人は数が集まらなかったと正直に話してくれたため、断念。上のリンクの記事で知ったのだけれど、赤玉を産む雌鶏は、白玉を産む雌鶏の産卵率よりも低いらしい。

赤玉を売ってくれたおっさんは、自家製野菜も売っていて他のお客さんもいたし、とてもいい人そうに見えた。そして、50個の有精卵だったら、30羽のヒヨコが生まれるのが平均と、彼自身も言っていた。たぶん、卵の数が足りなくて、長く放ったらかしにされていた古い卵を加えたに違いない!

でも、証拠は何もないし、卵ごときでおっさんを訴えるわけにもいかない。フランスでは、特に個人間の売買において、むやみやたらと相手を信じることは禁物。中身が確認できない卵を孵化目的で、赤の他人から買ってはいけないことを肝に銘じるだけである。

所詮、商売は消費者のニーズに応えて成り立っているものなのだから。有精卵の赤玉が51個必要ならば、かき集めてでも売るというもの。白い卵と中身が同じでも、茶色の卵が欲しいと言われれば、ファンファンのように茶色い卵を産んでくれるニワトリを飼うのと同じことである。

インスタ映えするから青い卵が欲しいと言われれば、青い卵を産むニワトリを探す人だっていることだろう。なんて思って調べてみると、世の中には実に様々な色のニワトリの卵があるらしい。

で、我が家でも負けじと緑色の卵(写真左端)を作ってみた。

なんてわけはなく、3月末に我が家の鶏小屋で見つけたものである。

今年1月になって、我が家の鶏小屋に念願の赤玉が、時々1~2個ずつ産み落とされるようになったのだけれど、3月に入って1日に採れる卵の数が増えたと思ったら、その中にどこからどう見ても緑がかった卵が入っている。

通常のニワトリの卵よりも大きめで、両端の細い側と丸い側の違いがはっきりとした均整の取れた形。硬そうな殻には艶があり、微かに緑色を帯びた色合いはまるで翡翠のよう。写真を撮るためにいろんな色の卵を並べてみると、たかが卵と言えども何と美しいものなのかと、うっとりしてしまう。

しかし我が家にいるのは、以前からの白と薄茶色の卵を産む雌鶏と、赤玉を産むマランのはず。緑の卵は突然変異か、はたまた鶏小屋に入り込んだ野生動物が勝手に卵を産んだか? なんて不思議に思ってみたけれど、そういえば我が家には鴨が1羽いることを思い出した。


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去年、まさにヒヨコ誕生の最中、我が家の中庭に1羽だけ迷い込んできた子ガモがいたのである。上記の3コマ漫画のように、その子ガモを秋田犬のオスであるダイが捕獲してくれたのだ。ダイに咥えられた子ガモを取り上げると、まったくの無傷だったため、ありがたく頂戴して、ヒヨコたちと一緒に育てることにした。


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あの子ガモが無事に成長し、運良くも雌(種類はマガモのよう)だったため、卵を産んでくれたというわけ。もちろん、私たちはお肉をいただくつもりで育てていたわけだけれど、赤玉よりもさらに珍しい緑色の卵を産んでくれるとなっては、話が異なる。何にしても、雌の子ガモを捕まえてくれたダイには、でかした!でかした!である。

教訓2、子ガモを無傷で捕まえてくれる秋田犬を飼うべし(笑)。

こうして1日置きくらいに5個の卵を産んだ雌鴨。しかし、その後はパッタリと卵を産まなくなった。そりゃそうだよね、雌鶏が年中卵を産むのは品種改良されているからなわけで、野生の雌鴨が年中卵を産むわけがない。しかし、年中採れると勘違いして喜びのあまり、そのままファンファンに渡してしまったため、鴨の卵を味見することを忘れた。

野生の鴨は食用に改良されていず、体が大きくならないため、正直に言って食べるにしてはお肉の部分が少なすぎるのが問題。しかも、ニワトリとは異なり、羽毛をむしるのも大変な作業と言う。本当かどうか分からないけれど、鶏卵よりも鴨の卵の方が栄養価が高いとか(我が家では鴨もニワトリと同じエサですけど)。

となると、年に1回だけでも緑色の卵を産んでくれるのであれば、飼育し続けてみようか。雄の鴨を買って来て、今度は鴨の繁殖に挑戦してもいいかもしれない。いや、また我が家の中庭に子ガモが迷い込んで来るのを待つべきか。うちの秋田犬たちが、次は雄の子ガモを捕まえてくれるかもしれない。

さて、雌鴨の運命やいかに!である。


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