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スピーチ、エミネム、パラサイト‼︎胸熱すぎたアカデミー授賞式2020を総ざらい

昨日は興奮した。予想はほとんど当たらなかったけれど(苦笑)。以下、備忘録も含め、受賞作品についてではなく授賞式について超私的な総括を。※ヘッダーはシネマトゥデイより。

とどのつまりパラサイト・ナイト!

『1912』との一騎打ちと予想したものの、『パラサイト』に大きく傾いた。ハリウッドの資金が投入されない韓国映画が作品賞をとるだなんて! 授賞式の演出もリズムがあって、スピーチ時間もたっぷり。パフォーマンスもまったりせずに、例年の数倍本当に楽しめた。どこかおカタいイメージがあったアカデミー賞自体も大きく変ろうとしているのかもしれない。

日本人初歌唱の松たかこ!

『アナと雪の女王』のメイン楽曲『イントゥ・ジ・アンノウン』を世界9か国のエルサ役の声優と共に披露。2番の歌い始め担当だし、メインのイディナ・メンデルの横の立ち位置だし。さすがに大興奮。一方、レッドカーペットの着物姿について、「素敵」と大絶賛の中、「地味」「無難」との意見も散見。話は違うと思うのだが、日本出身のカズ・ヒロさんが2度目のメーキャップ&ヘアスタイリング賞を受賞しインタビューで、「こう言うのは申し訳ないのだが、私は日本を去って、米国人になった。(日本の)文化が嫌になってしまい、(日本では)夢をかなえるのが難しいからだ。それで(今は)ここに住んでいる」と答えたということが頭をよぎる。


ベスト・パフォーマンスはプリンスが愛したアーティスト

シンシア・エリヴォ、ビリー・アイリッシュ、エルトン・ジョン……素晴らしいパフォーマンスが目白押しだった今年の授賞式。中でも、私がいちばんだと思うのはオープニングのジャネール・モネイ。

ステージの途中で、映画『ミッドサマー』をテーマにしたお花のドレスをまとい、バックダンサーにもホルガ住民の姿が……。この作品は、スウェーデン奥地のホルガで開かれる「90年に一度の祝祭」を舞台としたスリラー。オスカーナイトという祝祭でのジャネールのぶち込みぶりがおもしろい。

「黒人でクィアの私が物語を始められることを誇りに思う!」。そして、最後には「自分自身を生きて!」とメッセージ。歌曲賞を受賞したエルトン・ジョンも『(I'm Gonna) Love Me Again』を熱唱。今年の授賞式は、そういうテーマだったのだと思う。いや、ここしばらく海外のエンタメ界はずっとそうか。

ビッグサプライズが超私的ベスト・パフォーマンス!

と、ジャネールのことを書いたものの、私がいちばん興奮したのは……

そう、エミネムです。

たくさんの名画と名曲をつないだ映像のラストに『8mile』。他はいわゆるいちばん美味しいサビのワンフレーズだけなのに、「(主題歌)『ルーズ・ユアセルフ (Lose Yourself)』は前奏から入った?」……「んっ、やけに尺が長いな」……まさか、まさか、まさか……きたー!!!  で、立ち上がっていました、私。

デトロイトのスラム街でいじめられっ子として育った少年の自伝的映画『8mile』。もう、何回観たか分からない。

エミネムはゲイバッシングをしてたたかれまくり、その後、グラミーでエルトン・ジョンと共演し必死におさめた黒歴史がある。バリバリのレイシストのレッテルを貼られつつもポップ・アイコンになり時代の寵児となった白人ラッパーのエミネム……時を超え、昨夜、楽屋でエルトンと肩を組んでいた(エルトンは本当にいい人!!!)。

『ルーズ・ユアセルフ (Lose Yourself)』は2002年度アカデミー歌曲賞を受賞したももの、エミネムは授賞式には欠席。このことを引き合いに出し、「アカデミー賞の主催者、招待してくれてありがとう。ここにくるまでに18年もかかってすまなかった」と自身のSNSにコメント。当時は権威に背中を向け欠席した彼を「クール!」と崇めていた私だが、エミネム同様歳をとったからでしょうか、彼が素直になっていて泣ける。

パフォーマンス中の客席で、当時ヒットしていた時期に産声を上げたであろうビリー・アイリッシュがポカーンとしていたのとマーティン・スコセッシ監督が眠そうにしていたのはご愛嬌。かなりの列席者がノリノリでシング・アロングしていたのが印象的。

当時の精悍さはなく、ちょっと太っていたし、1曲を歌いきる体力もなかった様子だったけれど無問題。ブランクを経て小沢健二がメジャーシーンに気さくな態度で戻ってきたように、「あれ?」と感じることもあるけれど当時を知っている世代である私(たち)には、そういうものは目に入らない。とにかく、この日いちばんボルテージが上がったハイライトシーンはココ!

バレたらキャンセルだったらしいので、正真正銘のドッキリ大成功の瞬間であった。

ベスト・キャラクターは北欧の妖精⁉︎

「オーロラちゃんが可愛い、オーロラちゃんが可愛い」と夫がそういえば以前から連呼していた。あまり気にしていなかったのだが、「なんだ、このめちゃんこ可愛い娘は!」と夜通し彼女のinstgramやHP、MVなどをディグってしまった。もう、生き物として、可愛いとしか言いようがない。ジュディマリ時代のYUKIちゃんとか、シュガーキューブス時代のビョークとか……そんな感じ? 

『アナ雪』していたパフォーマンス時の衣装より、断然レッドカーペットの衣装が可愛かった。


追悼・京マチ子

ビリー・アイリッシュ『Yesterday』のパフォーマンスで今年亡くなられた方々の追悼。映像トップはNBAのコービー・ブライアント。途中、京マチ子さん。『羅生門』(黒澤明監督)ではヴェネチア国際映画祭グランプリ、『雨月物語』(溝口健二監督)ではヴェネチア国際映画祭準グランプリ、『地獄門』(衣笠貞之助監督)ではカンヌ国際映画祭グランプリ……世界的に認められる圧巻のキャリア。

個人的には『雨月物語』を観た時に、自分と同じ人間とは思えぬ妖しさにおののいた。

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Twitterでは、着物姿が話題に。世界の場で、こんな風に着物を堂々と着られるなんて本当にすごい。改めてご冥福をお祈りしたい。


ベスト・ヘアメイクはシアーシャ!

とにかくこの日カメラに抜かれた回数がいちばん多かったんじゃないかと言う程、列席者の中で私の印象に残ったのが、シアーシャ・ローナン。

グレタ・ガーウィグ監督の青春映画『レディ・バード』でこじらせ女子を演じていた時の印象が強かったため、昨日まで特別に意識していなかったが……(私のノーマークにも程があるが)いきなり洗練されていてビックリ。フレッシュなヘアメイクで存在感が群を抜いていた。

そういえばエド・シーランのMVでは、シアーシャとのデート気分が味わえるのでおすすめ!


問答無用のITガールによる『Yesterday』!

いや〜、追悼での『Yesterday』もすごかった。初めて本家超えの『Yesterday』を聴いたかも!?  宇多田ヒカルの尾崎豊『I Love You』的な。それにしても、アメリカのエンタメ界は、10代のビリーに背負わせ過ぎなところもあるような気がする。日本のエンタメが米津玄師に背負わせ過ぎなように。きちんと仕事を分散して、負荷をかけすぎないであげてほしい、とビリーの『Yesterday』を聞いて母心のようなものが湧いてしまった。

レッドカーペットはシャネル。ジュエリーもブローチも、グローブも、こんな風にシャネルを着ても許されるなんて強い。

ステージではグッチにお着替え。


スタイルのある女はラルフを着る‼︎

授賞式で目についたドレス、ひとりはジャネール。

もう一人はプレゼンターとして出席した、ダイアン・キートン。

どちらも、「私は私ですから」。対極にあるようなこの2ルックが、どちらもラルフ・ローレンだったのも興味深い。

ベスト・ドレッサーは黒レースな2ルック!

レッドカーペットで好きなドレスは、ガル・ガドットのジバンシイのドレス。

もうひとりは、ルーニー・マーラのアレキサンダー・マックィーン。

そうなのだ、私、黒レースに弱い(笑)。

ルーニーは、ホアキンが主演男優賞を受賞することがほぼ決だったと予想していたと思われ……。昨年の主演男優賞ラミ・マレックのパートナー、ルーシー・ボイトンといい、この役で列席する女優のセンスの良さは本当に大切。

レオ、聞いてる?


今年のドレスコードはサステナブル!

正直、ティモシー・シャラメのプラダのセットアップにはピンとこなかったが、なるほど。

プラダが2019年に発表したRe-Nylonというプロジェクトのもので、再生ナイロン繊維ECONYLが使用されている。

今年の授賞式のドレスコードはサステナブル。そういう意味では、松たか子さんのレッドカーペットの着物もパーフェクト。再生素材を駆使することも大切だろうが、「良いものを長く大切に着る」。結局はこれに尽きる様な気もする。

ハリウッドを代表するベスト・カップル!

なんでだろう、ルーニー・マーラと一緒にいるホアキンを見ていると本当に落ち着く。「このまま永遠に仲良くいてくれ!」と願うカップルNo.1かもしれない。それにしても、ルーニー、足元がコンバースだなんて、いかす!

もうひと組みは、ノア・バームバック&グレタ・ガーウィッグのカップル。助演女優賞にノアが監督する『マリッジストーリー』のローラ・ダーンのスピーチ中に、2人同時に涙を浮かべていて、もらい泣き。クリエイターカップルの理想形。ちなみに、ふたりはディオールで。


ホアキン&ブラピの名スピーチ!

ゴールデングローブの布石があったので、絶対に素晴らしいスピーチをすると確信していたのが(受賞することも確信!)、ホアキンとブラピ。

【ホアキン・フェニックス】

ホアキンは、「演技が僕とこの場にいる僕らの多くにもたらしてくれた最大の贈り物は、自分たちの声を声なきものたちへと使う機会だと思っている」というわけで、スピーチでは自分の信念を伝えることに徹している。この夜も「権利の侵害」について熱く語った。

そして、最後を、「僕が17の時、兄がこの歌詞を書いた。“愛をもって救済へ向かえ。そうすれば平和がその後を追うだろう”と」と故リバー・フェニックスの言葉で締めくくるだなんて……泣くに決まっているではないか! 世代泣き‼︎

【ナタリー・ポートマン】

権利のメッセージとしては、ナタリー・ポートマンのガウンも話題に。

注目されやすい自身の装いを通じてノミネートから外れた女性監督たちにこっそりと賛辞を贈ることに。 その方法というのが、ケープの襟部分に8名の女性監督の名前を刺繍で入れるというもの。


【ブラッド・ピット】

ブラピは政治面で揺れるアメリカに言及。

「タランティーノは、(アメリカのトランプ政権についての)映画をやるんじゃないかって考えてるんだよ。最後には、大人たちは正しいことをするよな」

しかし、こんなにもスマートないい男に変貌するとは当時はまったく予測できなかった。ちなみに、共演者のレオは今回も若いキレイどころ(23歳 モデルのカミラ。交際3年目と長続き中)を隣に据えていた。結婚間近とも噂が出ているが、レオにはこのまま突っ走って欲しい気も⁉︎

そして、スピーチの最後は茶目っ気たっぷりに舌を出すシーンも。こんなの許されているの、キムタクとブラピくらいですよね? 知らんけど(笑)。

映画愛炸裂のベスト・スピーチ!

間違いなく、今年はポン・ジュノ監督。今年は幾度となく壇上に上がったが、とりわけ監督賞受賞時のスピーチに胸が熱くなる。

「本当にありがとうございます。私が映画の勉強をしていた時に、本で読んだ言葉で、今も大切にしている言葉があります。『最も個人的なことは、最もクリエイティブなことだ』という言葉です。これは、マーティン・スコセッシの言葉でした。私は、彼の映画を見て勉強したんです。一緒に監督賞にノミネートされただけで嬉しい」

会場ではスタンディング・オベーションが。エミネムではあんなに眠そうだった(笑)、スコセッシ監督もご満悦。無名時代に評価してくれたタランティーノにも感謝を述べた。私たちは、映画を愛し続けた(文化人ブラックリストなどの噂もあった。韓国の歴史を考えると想像を超える苦労があったはず)映画少年の奇跡を目撃したのだ。

大好きワイティティ♡

かなりおまけネタ。通路を挟んで隣に座っていたブリー・ラーソンに、オスカー像(脚色賞)をぞんざいに扱っているところを撮影されてしまったもよう(笑)。スピーチでは「オスカー像、もっと重いと聞いていたけど、けっこう軽いね?」と軽口を叩いて会場の笑いを誘いつつ、涙を目ににじませながら「このオスカーは先住民の子供たちに。ダンスを踊りたい、物語を書きたいという子供たちに捧げます」とメッセージ。

高低差がありすぎて、耳がキーン、ではなく鼻の奥がツーンとする。

一転、授賞式後のインタビューでは、「脚本家がプロデューサーとの話し合いで伝えるべきこととは?」という質問に、「Appleはキーボード直すべき(どうやら監督のPCの調子が悪いらしい笑)」と語ってる。

とにかく笑いにもっていかないと落ち着かない性分……ちょっと、いや、かなり分かる(笑)。

そして、仲良しポン・ジュノ監督とともに評価され、さぞや楽しい夜だったことだろう。

最後に

『パラサイト』作品賞受賞時、タイムアップでスピーチを打ち切るためステージが暗転したが、トム・ハンクスを始めとするセレブたちの「アップ! アップ!」のジェスチャーにより、ライトは再びステージを照らす。「とにかく韓国の観客たち、映画ファンに感謝したい。彼らは率直な意見をくれる。彼らが監督や製作者たちをここまで押し上げてくれた」とスピーチ。授賞式は大団円を迎えた。

ともに韓国映画界を築いてきた仲間である観客に対し、アカデミー賞の壇上で敬意を払う、こちらもまた名スピーチであった。

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