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子どもをつぶすのは「劣等感」でなく「劣等コンプレックス」阻止する3つの方法とは?

本日は、東京学芸大学教育学部教授、松尾直博教授のインタビュー記事 「子どもをつぶすのは「劣等感」でなく「劣等コンプレックス」阻止する3つの方法とは?」について解説していきたいと思います。

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今回は子どもの発達心理のプロである松尾直博教授が低学年の子どもの劣等感にはどう対処すればいいのかご説明して下さっています。

松尾直博教授は 筑波大学大学院博士課程心理学研究科修了。2018年より東京学芸大学教育学部教授。 自治体の発達相談心理判定員や母子保健センターの心理判定員、 公立小中学校スクールカウンセラーなどを務め、同大学付属学校のスクールカウンセラーもご担当。 公認心理師、臨床心理士、学校心理士、特別支援教育士スーパーバイザーでもいらっしゃいます。 著書に『新時代のスクールカウンセラー入門』(時事通信社)、『絵でよくわかる こころのなぜ』(学研プラス)などがおありになられる方で 子供の発達心理に非常のお詳しいプロでいらっしゃるので今回の記事も非常に勉強になりますね。

皆さんは 子供から、「〇〇ちゃんは勉強が得意だけど、自分は苦手だし」「〇〇ちゃんは絵が上手だけど、自分は下手だから」などと、 劣等感から来る言葉を耳にすることはないでしょうか?誰しも生きている以上、劣等感を持つことは当然ともいえますが、あまりにも度が過ぎるとなると危険信号のようで、 今回の放送のご視聴後は、低学年の子どもの劣等感にはどう対処すべきか、子供の発達心理について知っておくべきエッセンスが詰まってますので、よかったら最後までお付き合い頂けたら嬉しいです。

子供が能力の優劣を感じ始める時期と、劣等感が与える影響とは??

まず、子供が能力の優劣を感じ始める時期と、劣等感が与える影響この2点について解説していきます。

1点目、「能力の優劣」が気になり始める時期についてですが、

子どもが自分と誰かを比べる社会的比較は、幼児期から起こるようで、 「カバンに描かれているキャラクターが〇〇ちゃんと違う、好きな食べ物が〇〇ちゃんと同じ、などと、他人と自分の同じところや違うところに目を向けるようになるようです。 これは純粋な比較であり、集団の中で生活する上で、『みんなが〇〇しているから、自分もちゃんと〇〇しないと』といった社会性を獲得するために必要なことで、大きな問題は無いとの事。 発達の自然な過程ともいえるようです。 しかし、小学校低学年くらいになると「純粋な比較」ではなくなってくるようで、 「優劣の比較ができる知的能力が身に付いてくるため、『〇〇ちゃんのほうが走るのが速い(速いほうが偉い)』 『〇〇ちゃんのほうがテストの点が高い(点が高いほうがすごい)』などと感じるようになるとの事。 また、日本の小学校は『テストで何点を取った』『徒競走で何着だった』と、優劣に関して分かりやすい環境であることも影響しているようです。

2点目、そうした優劣を感じることで、子どもにどんな影響があるのでしょうか。

「子どもが『自分のほうができている』と思えたら、自信が持てるようになるようで、 自分と自分よりできない他人を比べることを下方比較と呼ぶのだそうですが、下方比較によって優越感を持つことは、自尊感情や自己肯定感につながるんだそうです。 ただ、当然のことながら全ての面で秀でることは不可能なので、優越感を持ち続けるためには、常に下方比較できる相手を探さなくてはならなく、 また、逆に『周囲に比べて自分はできない』と思うことは、自信をなくしたり、自己肯定感が下がったりする一因になるそうです。

警戒すべき「劣等感」ではなく、「劣等コンプレックス」。劣等感と劣等コンプレックスの違いとは?

子供が能力の優劣を感じ始める時期と、劣等感が与える影響についてお話ししましたが、 松尾教授は気をつけるべきは劣等感ではなく「劣等コンプレックス」と言うものであると解説下さっているので、 詳しくお話ししていきたいと思います。

まずは劣等感についてです。

「劣等感を持つのはマイナスの面ばかりではない」んだそうで、 「例えば、『自分は〇〇ちゃんほど勉強ができない』という劣等感がプラスに転じると『自分も〇〇ちゃんみたいになりたい』という憧れになり、 勉強を頑張るモチベーションとなるでしょう。いろいろな人のサクセスストーリーにも『みんなより下手だから、人一倍の努力をした』 『スポーツができなかったのでアートに転向したら、才能が花開いた』などという例がありますよね。 劣等感は自分を成長させる原動力になるのです」

一方で、劣等コンプレックスとは何か?

「劣等コンプレックスとは、劣等感の程度が強すぎ、精神的な不調を起こしたり、暴力や犯罪を引き起こしたりするレベルのもののことです。 劣等感が劣等コンプレックスに発展し、全人格に広がる前に阻止しなければなら無いんだそうでう。

「劣等コンプレックス」を阻止する方法とは?劣等コンプレックスに至らない為の3つの方法とは何か?

1つ目は「親の声かけ」 例えば、算数の九九が苦手だとしたら、『九九は苦手かもしれないけど、絵や図工はすごく得意だと思うよ』 『いつもお手伝いをしてくれて優しいね。本当に助かるよ』などと、思い切り褒めてあげてください。 特定分野の劣等感が、全体的な自己肯定感や自尊心の低下につながらないようにするのが大事だそうで、 その際の子どもへの声かけは「他人と比べないこと」が最も大事な事だそうです。 「苦手な九九を頑張っているとしたら、『前より速く言えるようになったね』と、必ず過去のわが子と比較して褒めてあげてください。 ほかの子と比べると『まだまだ追いつけていない』と親子ともモヤモヤするかもしれませんが、過去のわが子と比べてなら、成長が分かるはず。 あくまで比較するのは他人ではなく、本人なのです」

2つ目は「苦手な事ばかり克服させようとしない」 親としては、子どもができないことをできるようになるよう、努力を強いることで劣等感を克服させたくなりますが、それにも注意が必要です。 「親はつい、苦手を克服させようとしがちですが、優越感を得る経験が少ないまま、苦手なことばかりに取り組ませると、劣等コンプレックスを抱く原因となります。 特に低学年のうちは、自分と友達、自分ときょうだい、と、まだ人間関係が狭く、その中で『自分はできない』と劣等コンプレックスを抱いてしまうと、なかなか自信を取り戻しにくくなります。 そうなると何か新しいことを始めるときにも『自分はダメに違いない』『失敗するに違いない』と躊躇(ちゅうちょ)してしまう、といった悪循環に陥ってしまいます。 まずは無理強いするよりも、その子のできるところに目を向けましょう。 もし、親から見て「〇〇が苦手だから、劣等感を抱いているのでは」と思うことがあっても、子ども自身が楽しそうにしていれば心配はいりません。 「『サッカーがみんなより下手なのは分かっているけど、ボールを蹴るのがただただ楽しい』という子どももいますし、人より得意でなかったことが、大人になってからも楽しみや生きがいになるケースもあります。 親としてはつい先回りして、「早いうちに劣等感を克服させたい」「自信を付けさせたい」と思いがちですが、 劣等感をすぐさま解消しようとするのではなく、ある程度、長い目で見ることも必要なんだそうです。

3つ目は「親の愛情」 低学年くらいの時期に劣等感を抱いていたとしても、克服することはできます。そのためには親の愛情が不可欠なんだそです。 「やはり、子どもにとっては『親に愛されている』と感じることが一番大切です。勉強やスポーツができても、『親に愛されていない』と感じる子は劣等感が劣等コンプレックスに発展しやすく、孤独に陥りがちです。 反対に勉強も苦手、スポーツもそんなに得意じゃないけれど、親に愛されている自信がある子は、いつもニコニコ楽しそうで、劣等感も克服しやすい。 そういう子は強いですよね。子供に愛情を注ぎ、劣等感を成長の糧とできる環境を整える事が必要不可欠なんだそうです。

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