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貧しさと豊かさ[病める時、健やかなる時、ってなに?]

キスを拒否されてからも、表面上は夫婦関係に大きな変化はなかった。
元からそっけない、味気ない関係だったし、それがまだ延長して続いているだけの事だった。

ただ、見えない所で僕の心はズタズタだった。
もう夫婦関係には希望が見えなくなって、妻との間に男女の関係は2度と訪れないんだろうなと思うと、ひどく気が落ち込んだ。


妻はどう思っているのか、、

女の人はあんな事があった後、
受け入れられない異性が同居する家の中で、

一体どんな気持ちになるんだろう。

気持ち悪い、って思っているんだろうか。


※以下の内容は特定の誰かを見下したり、差別するものでは一切ありません。
自分とは違う価値観や環境で生きる人に、自分の人生を照らし合わせて感じた事を書き連ねました。
何か引っ掛かる事がありましたらコメントください。

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今日の仕事帰り、大量の空き缶を目一杯積んで走る2台の自転車を見かけた。

点滅する歩行者信号を急いで渡ろうとして、後続の自転車がバランスを崩して転んでしまった。


遠目で見ていただけだけど、それが年配の女性である事は分かった。

彼女は白髪混じりの髪の毛を荒く一つに縛り、橙色のカーディガンを羽織っていた。
肌は浅黒くて、顔立ちから日本人じゃない雰囲気を感じた。


夜で交通量は少なかったが、彼女が転んだのはちょうど赤信号を待つ車の目の前。

歩行者信号は赤に変わったが、彼女は山盛りに積んでいた空き缶のせいで、自転車をすぐに起こせずにいた。

催促するようにじわりじわりと動く車に彼女は明らかに焦っていて、
なんならクラクションさえ鳴らされかねない状況だった。


すると、先行していた自転車が戻ってきた。
彼女の横を通り過ぎ、元いた歩道に自転車を停めると彼女に駆け寄って、代わりに自転車を起こしてあげていた。

その人は女性よりもさらに年配の男性で、ボロボロのキャップからは白髪がもじゃもじゃとはみ出していた。
女性と同じくらいの背丈に見えたが、腰が曲がっていただけかもしれない。


2人で頭を下げながら元の歩道に戻ると、男性が女性の肩に手を当てながら、体を上から下に確認するように見回していた。
その後自転車を確認して、青になった横断歩道を並んで走っていった。


自転車の2人は、おそらく、なんとなく夫婦のようだった。


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通りすがりに目撃した出来事だったけど、僕にはあの2人が愛を体現しているように見えた。

妄想かもしれないが、彼らは貧しくも、お互いに人生を預けた本当のパートナーなんだ、と感じた。


もし僕が仕事を失い、なんともならなくなった時、

「一緒に缶を拾ってくれないか?」

なんて妻に言えば、即座に離婚届と絶縁の覚書を突きつけられるだろう。
そもそもそんな相談をしなければならない状況になったら、僕の方から別れを切り出すかもしれない。


病める時も、健やかなる時も、ともに生きる事を誓ったはずなのに。

僕らはプライドや世間体を乗り越えられるほど、強靭な夫婦関係を育てられなかった。


金を稼ぐ以外に、旦那である事を認めさせる理由が見つからない。


あの空き缶拾いの2人を、一体なにが繋ぎ止めているんだろう。


あの2人が愛し合っていたとして、彼らは幸せだろうか?


幸せってなんなんだろう。


愛する人の心が遠く離れていく事を感じながら、家庭の中で役割を演じていく事は、それでも家族がいる分、幸せだろうか。


セックスがなくても、お金がなくても、幸せを感じる事はできるだろうか。



僕はどうだろう?

妻はどうなんだろう?


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