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女性の活躍する社会

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 女性が社会で活躍することを推進させるための法律は、「女性活躍推進法」と呼ばれる法律で、正式名称は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」です。

 この法律には、一般事業主に行動計画の策定や情報公表の義務を課していますが、本年4月1日から、その義務を負う一般事業主の範囲が変わりますので、その点について確認しておこうと思います。

一般事業主が行うべきこと

常時雇用する労働者が301人以上の事業主

 常時雇用する労働者の数か301人以上いる事業主は、以下の取組みをすることが義務づけられています。

(1)自社の⼥性の活躍に関する状況把握、 課題分析
(2)1つ以上の数値目標を定めた⾏動計 画の策定、社内周知、公表
(3)⾏動計画を策定した旨の都道府県労 働局への届出
(4)⼥性の活躍に関する1項目以上の 情報公表

※(2)については、以下の①と②からそれぞれ1項目以上を選んで数値目標を定めなければなりません(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律8条、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令2条の2)

 ① 女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供
◆ 採用 ・採用した労働者に占める⼥性労働者の割合
・男⼥別の採用における競争倍率
・労働者に占める⼥性労働者の割合
◆ 配置・育成・教育訓練 ・男⼥別の配置の状況
・男⼥別の将来の育成を目的とした教育訓練の 受講の状況
・管理職及び男⼥の労働者の配置・育成・評価・昇進・性別役割分担意識その他の職場風⼟等に関する意識
◆ 評価・登用 ・管理職に占める⼥性労働者の割合
・各職階の労働者に占める⼥性労働者の割合及び役員に占める⼥性の割合
・男⼥別の1つ上位の職階へ昇進した労働者の割合
・男⼥の⼈事評価の結果における差異
◆ 職場風⼟・性別役割分担意識
・セクシュアルハラスメント等に関する各種相談窓⼝への相談状況
◆ 再チャレンジ(多様なキャリアコース)
・男⼥別の職種又は雇用形態の転換の実績
・男⼥別の再雇用又は中途採用の実績
・男⼥別の職種若しくは雇用形態の転換者、再雇用者又は中途採用者を管理職へ登用した実績
・非正社員の男⼥別のキャリアアップに向けた研修 の受講の状況
◆ 取組の結果を図るための指標
・男⼥の賃⾦の差異

② 職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備
◆ 継続就業・働き⽅改革
・男⼥の平均継続勤務年数の差異
・10事業年度前及びその前後の事業年度に採用された労働者の男⼥別の継続雇用割合
・男⼥別の育児休業取得率及び平均取得期間
・男⼥別の職業⽣活と家庭⽣活との両⽴を支援するための制度(育児休業を除く)の利用実績
・男⼥別のフレックスタイム制、在宅勤務、テレワーク等の柔軟な働き方に資する制度の利用実績
・労働者の各⽉ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況 ・労働者の各⽉ごとの平均残業時間数等の労働時間(健康管理時間)の状況
・有給休暇取得率

 
※(4)については、以下の①と②からそれぞれ1項目以上を選んで、2項目以上の情報を公開しなければなりません(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律20条、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律に基づく一般事業主行動計画等に関する省令19条)。

① ⼥性労働者に対する職業⽣活に関する機会の提供の実績
 イ 採用した労働者に占める女性労働者の割合
 ロ 男女別の採用における競争倍率
 ハ その雇用する労働者及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者に占める女性労働者の割合
 ニ 係長級にある者に占める女性労働者の割合
 ホ 管理職に占める女性労働者の割合
 ヘ 役員に占める女性の割合
 ト その雇用する労働者の男女別の職種の転換又はその雇用する労働者の男女別の雇用形態の転換及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者の男女別の雇入れの実績
 チ 男女別の再雇用(通常の労働者として雇い入れる場合に限る。)又は中途採用(おおむね30歳以上の者を通常の労働者として雇い入れる場合に限る。)の実績

② 職業⽣活と家庭⽣活との両⽴に資する雇用環境の整備の実績
 イ その雇用する労働者(期間の定めのない労働契約を締結している労働者に限る。)の男女の平均継続勤務年数の差異
 ロ 男女別の継続雇用割合
 ハ 男女別の育児休業取得率
 ニ その雇用する労働者1人当たりの時間外労働及び休日労働の一月当たりの合計時間数
 ホ 雇用管理区分ごとのその雇用する労働者及びその指揮命令の下に労働させる派遣労働者一人当たりの時間外労働及び休日労働の一月当たりの合計時間数
 ヘ 有給休暇取得率
 ト 雇用管理区分ごとの有給休暇取得率

常時雇用する労働者が101人以上300人以下の事業主(法改正のポイント!)

 現行法上、労働者が101人以上300人以下の事業主は、301人以上の労働者を抱える事業主が負うような上記の義務は、努力義務にすぎません。

 しかし、今年の4月1日からは、101人以上300人以下の事業主もこれらの義務が法的な義務に変わります。

 つまり、厚生労働大臣から報告を求められ、又は助言・指導・勧告を受けることがあります(女性活躍推進法30条)。この求められた報告をせず、または虚偽の報告をした時には、20万円以下の過料に処せられます(同法39条)。
 また、法律で定められた情報公表をしないと、厚生労働大臣から勧告を受け、その勧告にも従わないとその旨を公表されてしまいます(同法31条)。

常時雇用する労働者が100人以下の事業主

 常時雇用する労働者が100人以下の事業主については、これらは努力義務です。
 つまり、行動計画を策定したり情報を公表しなくても、厚生労働大臣から報告を求められたり助言・指導・勧告を受けたりするようなことはありません。
 できる範囲で取り組めば良いことになっています。

厚生労働省の説明

  一般事業主行動計画については、厚生労働省が、「女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画を策定しましょう!」というリーフレットで詳しい解説をしていますので、是非ご覧ください。

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