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外国人労働者と労働法

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 数年前までは、アジアからの観光客で溢れかえっていた大阪ですが、最近は商店街も日本人ばかりになってしまいました。

 時々見かける外国人は、おそらく日本で勉強をしている学生か、日本で働き生活する人たちだけのようです。大きなスーツケースを持っていませんもんね。

 日本で日本人に囲まれて日本語を使って働く外国人は、シンプルにすごいと思います。

 最近では、コンビニでも店員のほとんどが外国人ですが、テキパキとすごいスピードで仕事をしています。

 私なら、日本語の通じない国で、その国の人に囲まれて働くなんて無理だな、といつも感じます。

 時々、日本で働く外国人から職場のトラブルの相談を受けますが、そんな時ですら、よくぞここまで日本の文化に溶けこめているな!と感心します。

 “ヨソ者”にとって、日本のような閉鎖的な社会で生活することは、よほどの覚悟や事情がないと難しい気がしますが、それをしている外国人のなんと多いこと。

 ちなみに、最近は、宝塚歌劇にもたくさんの外国人が観劇に来ています。日本語や日本文化に対する理解力の高さに驚かされます。私がブロードウェイミュージカルに通いまくるのとはちょっとレベルが違うように思います。

 さて今日は、我々の日常に欠かせない労働力となっている外国人労働者を雇用するに当たって留意すべき点について簡単に書こうと思っています。

在留資格(ビザ)

 日本国籍を持たない人が日本で働くには、「在留資格」が必要です。

 在留資格は、出入国管理及び難民認定法で定められています。

 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者などは、その身分・地位に基づいた在留資格で、どんな仕事にも就くことができます。

 しかし、その身分を失えば在留資格はなくなるので、就労もできなくなります。つまり、日本人と結婚してその資格で仕事に就いていたのに離婚してしまったら、もはや日本人の配偶者ではなくなるので、就労する資格はなくなります。

 身分・地位に基づく資格の他に、活動に伴う資格(出入国管理及び難民認定法に定める別表一に列挙)もあります。

 これは、特定の資格ごとに活動内容が決められていて、それ以外の活動(仕事)はできない種類の資格です。

 外国人を雇用する際には、当該外国人がどのような種類の在留資格を持っているのかを在留カード等で確認しておかなければなりません。

 在留資格がないのに就労させている使用者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(またはその両方)を科せられる危険性があります。

労働法の適用

 以上のように、雇用する労働者に在留資格があるかどうかは、十分に事前に確認しておく必要がありますが、万が一在留資格がないとしても、使用者は労働基準法、労働契約法、労働安全衛生法、最低賃金法等の労働法を、その外国人労働者に対しても守る義務があります。

 労災保険や雇用保険も同様に、適法な在留資格に基づいた就労かどうかに関係なく、適用されます。

 国民年金・厚生年金、健康保険も同じです。

 ただし、国民健康保険は、1年以上の在留資格のある外国人にのみ適用されるのが原則です。

均等待遇原則

 労働基準法には、外国人についての均等待遇原則が定められています(3条)。

(均等待遇)
第3条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。

 この規定に反して差別的取扱をした場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられる可能性があります(労働基準法119条1号)。

外国人と共生

 20年以上弁護士として依頼者の日本人同士の離婚問題に触れ、また、10年以上自分自身がアメリカ人の夫と生活して思ったことは、人間関係の善し悪しは日本人か外国人かという国籍には関係がないということです。

 労働関係でも同じことで、外国人労働者だからうまくいかないのではなく、その人自身との関係構築ができていないからうまくいかないのだと思います。

 日本で人を雇用する以上、労働法は平等に適用されることだし、差別的な感情を全てなくして楽しく仕事をしてもらえる環境を整えていきましょう。

 

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