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人権デューディリジェンス

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 「人権デューディリジェンス」という言葉を聞いたことがありますか?

 「デューディリジェンス(Due Diligence)」は、辞書で調べると、「投資用不動産の取引、企業買収などで行われる資産の適正評価。資産や買収対象企業の価値、収益力、リスクなどを詳細かつ多角的に調査し評価すること。」と定義されています。

 結婚する時に、お相手の職業や家柄、家族構成などを調べるような感じですね(最近はもうそういう結婚は減っているのかな?)。

 企業買収でいうと、買収した会社が実は凄い借金を抱えていたとか、訴訟トラブルを抱えていて後日敗訴して莫大な支払いを求められたなんてことになると、せっかく良い値段を出して会社を買っても大損、ということになってしまいます。

 そういうことのないように、デューディリジェンスを行い、買収対象会社の価値、収益力、リスクなどを知った上で適正な値付けをして買うか、いっそ買うことを止めるか、という判断につなげるのです。

 この「デューディリジェンス」の定義とは少しずれるのですが、「人権デューディリジェンス」は、企業活動の中で生じうる人権に関するリスクを把握し、そのリスクが企業活動に及ぼす影響を評価し、必要に応じて改善につなげる、という一連のプロセスのことをいいます。

 企業活動の中で「人権」というと、自社内で起きる人権侵害、例えば、男女間格差、正規社員と非正規社員の格差、パワハラなどのいじめなどが思い浮かび易いと思います。

 しかし、今や、ビジネス活動の中の人権と言えば、自社の従業員の問題だけにとどまらず、取引先や、取引先の取引先、そして取引関係にはない社会全体や、NGO・NPOなども対象に含めて広く配慮することか求められる時代になっています。

 もちろん、自社内の人権問題だけで手一杯の会社は、なんで社外の人権問題にまで気を配らないといけないのか・・・なんて思ってしまうかもしれません。

 しかし、会社の経済活動は社会に大きな影響を与えていますし、社外のあらゆるステークホルダーと関わっていますから、自社内の人権問題にとどまらず、社会全体の問題に目を向ける必要があると言われているのです(「ビジネスと人権に関する指導原則(2011))。

 この人権デューデリジェンスの取組みは、今、大きな会社がどんどん着手し始めています。
 そうすると、その会社の取引先である規模の小さな会社も、人権に配慮した経営を求められるようになります。
 今や、どんな規模の会社であっても、人権尊重の取組みは避けて通れない重要課題となりつつあるのです。


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