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人権を守るための企業の責任

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 台風が過ぎればスカーッとした空が広がるもんですが、今回の台風はかなり影響が大きいようで、今朝の大阪はまだどんよりとした空です。

 昨日は各地の台風に関するニュースがたくさん流れていました。その中でも一番印象に残ったのは、ネット上に流れていたバイクデリバリーの人の映像でした。

 強風にあおられて飛ばされそうになるのを必死に堪え、結局バイクもろとも吹き飛ばされていました。

 昨日は、台風の接近に備えて、多くの店舗が臨時休業したり早めの閉店をしていました。

 買い物客が少ないのもあるでしょうが、やはりそこで働く人達が安全に帰宅できるようにするためにそのような選択をしているはずです。

 かたや、件のバイクデリバリーの会社は、暴風雨の中を配達させるという大変危険な行為をさせています。これは、配達員に対する人権侵害になる可能性が高いと考えられます。

人権リスク

 会社は、自社の事業活動によって人権侵害を引き起こしていないかどうかを常に意識しておくことが求められます。

 本来、「ビジネスと人権」というテーマで語られる「人権リスク」は、人権侵害を受ける弱者の側にとってのリスクという意味で、会社側のリスクのことではありません。

 しかし、人権リスクをおかすことは、会社にとっても大きなビジネス上のリスクに晒されることになります。

 まず、先ほどの暴風雨の中のバイクデリバリーのように、目撃者がすぐに映像を録画してネット上で拡散させてしまい、会社の社会的評価がダウンするリスクがあります。
 実際、その映像のバイクには、遠くから見てもどこの会社のバイクかがすぐにわかるロゴがついていましたので、会社の特定は容易でした。

 社会的な評価に対する悪影響に止まらず、その配達員が風に飛ばされてケガをしたなら、会社は損害賠償を請求されることになるでしょう。
 また、そのような時に配達をさせているなら、労働時間や安全衛衛生等の管理が不十分である可能性もありますから、全般的に労務トラブル発生のリスクが高い状態にあるかもしれません。

 さらに、最近では、ビジネスと人権に配慮する企業が増えている中、人権に配慮できない会社は取引を停止され、または不利益な条件を課されるかもしれません。

人権デューデリジェンスの勧め

 このようなリスクを回避するには、まず、自社にどのような人権リスクがあるかを知らなくてはなりません。

 バイクで配達をさせていた会社も、台風の中、外出のできない顧客へのサービスを使命と感じていたのかもしれません。人々が外出できないとなると、宅配業者としては願ってもないチャンスでしょうし。

 このように、会社が意識していないような人権リスクについても、洗い出しをしておかなければ、上記のようなトラブルに巻きこまれる危険性が高まります。

 そのための手法として、人権デューデリジェンスがあります。

 指導原則で言われている人権デューデリジェンスのプロセスは、「実際のまたは潜在的な人権への影響を考量評価すること、その結論を取り入れ実行すること、それに対する反応を追跡検証すること、及びどのようにこの影響に対処するかについて知らせること」とされています。

 その第一歩として、自社に関わる人権のリスクを潜在的なものまで掘り出してみることが必要です。

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