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人権デューディリジェンスの第一歩~「人権方針」

 おはようございます。弁護士の檜山洋子です。

 会社が人権デューディリジェンスを始めようと思った時、まずは、自社が人権デューディリジェンスに取り組むことを社内外に発表することから始めます。

 それが「人権方針」と一般的に言われるもので、人権を尊重する責任を果たすという方針を明確にしてコミットメントするものです。

 といっても、「人権方針」にどんなことを書けばいいか分からないでしょうから、まずはいろんな会社が出している「人権方針」を見てみましょう。

 インターネットで、「人権方針」と入力して検索するといっぱい出てきます。

 人権方針を公表している会社は大会社が多いのですが、大変参考になります。

 これらの人権方針は、ビジネスと人権に関する指導原則に従って策定されたものが多いと思われます。

 ビジネスと人権に関する指導原則では、「人権を尊重する責任を定着させるための基礎として、企業は、以下の要件を備える方針の声明を通して、その責任を果たすというコミットメントを明らかにすべきである。」とされています。

a 企業の最上級レベルで承認されている。
b 社内及び/または社外から関連する専門的助言を得ている。
c 社員、取引先、及び企業の事業、製品またはサービスに直接関わる他の関係者に対して企業が持つ人権についての期待を明記している。
d 一般に公開されており、全ての社員、取引先、他の関係者にむけて社内外にわたり知らされている。
e 企業全体にこれを定着させるために必要な事業方針及び手続のなかに反映されている。

 専門的助言を得るのは、会社の方針が必要な情報を適切に取り入れたものといえるようにするためですが、どの程度の専門性が必要かについては、「事業の複雑性の度合いによって異なる」は言われています。
 専門的助言は、「信頼できるオンラインまたは文書資料から広く認知された専門家との協議まで、様々な情報源から取り出す」ことができます。

 人権方針で明確にされるコミットメント声明は、「企業が契約関係にある組織、国家治安部隊を含む事業に直接関係するその他の組織、投資家、重大な人権リスクを伴う事業の場合は影響を受ける可能性のあるステークホルダー」に積極的に伝えられるべきであるとされています。

 人権方針を社内に通知するには、責任に関する管理系統や制度に織り込んだり、関連する業務に従事する従業員に研修を実施したりする方法がありますが、そのような方法についても言及しましょう。

 指導原則では、人権を尊重する責任とその広範な企業活動や取引関係を管理する方針及び手続に一貫性を持たせることも大切であることが指摘されています。

 また、適切な手段を通じて、方針声明が企業トップから全ての部門にいたるまで定着するようにすべきであることも求められています。各部門が人権に対する意識や考慮なしに行動することがないようにしなければなりません。

 人権方針は、作っただけではダメで社内に浸透させなければ意味がありませんが、そうはいってもまずは作ってみることから始めましょう。

 意外な発見や気付きがあるはずです。

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