デンマーク移住を考える方にお伝えしたい理想と現実:実践編
先日、日本から視察にこられた人たちをアテンドしていた時に、私の書いているものについて「7年住んでいる人のものとは思えない内容」と言われました。一瞬、ご批判をいただいたのかなとドキッとしたのですが、日本にいる読者の心情をよく汲み取れている、といういい意味だったそうで、ほっとしたところでした。
確かに、記事を書く時には、できるだけフラットな感覚を持つようにしています。よくある北欧のイメージをあまり意識せず、今起きていること、デンマーク人たちの感覚をできるだけ盛り込むようにして、北欧をあまり知らない人や、必ずしも北欧ファンというわけでもない読者にも「読んでみたい」と思ってもらえるような執筆を心がけています。
ただ、日本の人にとって何かしらの学びやインスピレーションになるような内容に、と考える以上、テーマを選ぶ時点で、日本よりもうまくいっている側面にフォーカスすることになるんですよね。結果的に、デンマーク社会を褒めることが多くなってしまいます。
実際、Business Insiderの連載を熱心に読んでいただいている読者の方からは「移住してみたい」という声もいただいて、伝わっているのがうれしい反面、たしかにうまく行っているとは思うけど、それはこの社会の中に入れればの話で、それまでに外国人が直面する現実は厳しいものがあるんだよな…と複雑な気分でもありました。
そんな思いで書いたのが、今月のBusiness Insiderの連載記事です。妊娠8ヶ月で 、40歳間際で言葉も知らない国に来て、食事をするテーブルもない状態から夫と少しずつ生活を立ち上げていったのですが、医療費が無料になるなど福祉の恩恵を受けるために必要な社会保障番号(CPR番号)をもらうのに1年近くかかったのを筆頭に、「なんか私、歓迎されてないよね…」という感じがしばらくつきまとっておりました。欧州難民危機のさなか、という時期にも重なり、働かずに税金を納めない外国人は福祉ただ乗り、という厳しい論調のニュースも多かったですね。
その後、子育てがやや落ち着いて、フリーランスでぼちぼち物書きの仕事を始めた経緯については、自己紹介のnoteや「人生再デザイン@北欧」の連載にも書いた通りです。去年からはBusiness Insiderの連載を始めて、本当にたくさんの人たちが快く取材に応じてくださり、そういうことか!と腑に落ちることも多いですし、連載以外のお仕事も含めて、デンマークでの仕事生活は居心地のいいものになっています。
「デンマークに来てよかったですか?」と聞かれた時には、たいてい、「小さな2人の子どもを育てつつ、仕事以外の時間も楽しめる場所としては、デンマークを選んだのは正解だった」と答えます。今のところ、子どもたちはのびのびと育ってくれてますし、夫も、趣味の自転車をはじめとして、自由な時間を謳歌する生活を送っています。
子育ての場所として日本を選んだ場合、私と夫の2人分の労働時間と、それに対する2人分の給料の金額、休暇を含めた自由時間の分量、子育てにまつわる費用とその不安、宿題をさせたり塾に行かせたりする日々のストレス、等々を総合してデンマークと比較すると、どう考えてもデンマークに軍配が上がります。
とはいえ、私のビザの面での不安がなくなったわけではありません。特に、デンマーク在住の先輩日本人に会った時に考えされられるのが、あんまり考えたくないんですが、離婚の話題。
日本人とデンマーク人という国際結婚カップルの場合、半数近くが離婚に終わっているようで、そうなると、私のようにデンマーク人の配偶者として滞在している日本人は困ったことになります。子どもがある程度の年齢になるまでは、養育者として滞在することはできますが、その期間中に永住ビザを取得できないと、いわゆる観光客としてデンマークに来ることしかできなくなってしまいます。特に、若いうちに結婚してデンマークに移住したため、日本では就職した経験がないような方は、ずいぶんと年月が経ってから日本に戻ることに難しさを感じるようです。
…といった状況を避けるためにも、結婚を機にデンマークに移住した多くの日本人は、永住ビザ(Permanent Residency)の取得を目指すわけですが、これまたハードルが高く、取得までの苦労話もよく話題に上ります。
デンマークの厳しい移民政策ができあがった背景については、今月のBusiness Insiderの連載で取り上げていますので、ぜひお読みいただければ。(追記:連載記事の全文は、こちらのnote記事で公開しております)
今回のnoteの記事では、小難しい話は抜きにして、就職や結婚を機にデンマークに移住したいと考える場合の"実践編"として、具体的な情報をお伝えしたいと思います。
デンマークでの就職を考える人へ:今がチャンスかも
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