見出し画像

FSC認証紙と再生紙の次。エシカルペーパーの誕生で企業の選択は?

先日、日本自然保護協会様へ訪問した際にいただいたこちらの冊子。

画像2

画像1

画像3

なにこの用紙?!「豊かな里山環境の生物多様性を保全する農家の稲わらを原材料に作られています」とな。印刷業界から数年離れている間に、知らない用紙が印刷物として存在していることに驚いたので、元印刷会社目線で、企業の用紙選びについて整理してみました。

企業のカレンダー・名刺・CSR報告書といえばの『FSC認証紙]』。官公庁といえばの『再生紙』。

環境に良いということで、企業がよく印刷物に使う用紙に『FSC認証紙』と『再生紙』があります。『再生紙』はその名の通り、使用し終わった古紙を「再生」して作られる紙です。用紙メーカーで、古紙とバージンパルプを配合して作ります。一般的に、古紙の配合率が高いほど茶色っぽくなったり、小さな汚れが生じたりします。

『FSC認証紙』のFSCは『Forest Management Certification』の略で、バージンパルプを利用しているのですが、環境・人権など様々な面で適切に管理された認証を取得している森林から伐採・利用している紙です。『FSC認証紙』はトレースアビリティが非常に厳しく、使用するツールごとに、それぞれ番号が振られるとともに、FSC認証工場の指定を受けた印刷工場でしか印刷することが出来ません。事前の利用申請がいるので、「明日急いで印刷して!」ということが出来ない用紙です。

キャプチャ

もはや、大手企業でCSR報告書やカレンダーにFSC認証紙を活用していない企業は少ないのでは?と思われるほど、環境配慮を発信したい企業での活用が一般的となっている用紙です。コピー用紙もFSC認証紙が多いですね。最近だと、食品のパッケージもFSC認証紙ミックスのものがずいぶん増えています。

一方再生紙。Rをうねっとさせたあのマーク。古紙の配合%数字で表記されています。古紙70%なら「R70 」。

キャプチャ

最近あまり見ないなあ、と思いませんか?以前勤めていた印刷会社では、コピー用紙に再生紙とFSC認証紙を用意していたのですが、やはりお客様に提出するような書類だと再生紙は選びません。だって、まさに「ザラ紙」でざらざらしてるし、薄汚れて見える・・・ということもあってか、FSC認証紙のコピー用紙のみになりました。多くの企業がそうだと思います。

一方、官公庁の入札では「古紙70%以上」を指定することも多く、官公庁発行の冊子では再生紙が多く用いられています。

需要が集中する時期は品薄に。

企業のCSR報告書やカレンダーの製造は10月~2月頃に集中します。なので、「早めに手配をしないと、得意先のFSC認証紙が手配できなくなってしまう」と印刷会社は慌てることがあります。再生紙も時期によって「古紙が足りなくて再生紙が作れない」ということが起こり、古紙70%以上で納品しないといけないのに、古紙が足りないから配合率を下げてもいいかと製紙メーカーさんから言われて困ったことがありました。

環境保全のための用紙なのに、企業の姿勢のために無理やり確保するというのもおかしな話ですが、実際そういうことが起こります。

第三の波。これから広がるだろう『エシカルペーパー』

エシカルペーパーの代名詞と言ってもいいのが、one planet cafe 様バナナペーパー

キャプチャ

日本の和紙技術とアフリカの村でとれる有機バナナ繊維のコラボで生まれた、質が高く、環境と社会に価値をうみだす紙です。アフリカ ザンビアの人々に雇用も生み出す、フェアトレード認証も受けています。いままで廃棄されていた、バナナの繊維を活用することで新しい価値を生み出しています。驚いたのですが、バナナは木と比べて、成長が10倍以上早いそうです。発展途上国の多くの場所で栽培されているバナナ。これからの時代の「紙」はバナナが一般的になるかもしれませんね。(↓画像は、one planet cafe 様サイトからお借りしました。LUSHの包装紙、タグで活用されているバナナペーパー)

キャプチャ

そして、冒頭にご紹介した「稲わら原料の用紙」。日本自然保護協会様が携わる里山保全の活動の中で連携している農家さんの稲わらを活用した用紙だそうです。バナナの繊維と同様、今まで廃棄していたものを活用した新しい紙。木を伐採することを避ける選択肢として、色々なものが原料となって用紙を作ることができるのは素晴らしいことだと思います。

企業は用途に合わせて、色々な選択を。

バナナペーパーも、稲わら原料の用紙も、輪転機(大量の印刷物を刷る際に使う機械)で印刷をすると、超高速で機械が回るので、用紙の繊維がひっかっかって破れてしまったり、印刷が汚れてしまったりするのかもしれません。また、用紙自体が色味のあるものになるので、色調が命の化粧品のカタログ等には向かないと思います。でも、そんなに印刷部数が多くなく、企業の環境保全の姿勢を示すにはもってこいのもの。まだ多少普通紙よりも値段は高いかもしれませんが、ブランディングとしても、社会的意義としても価値のある選択だと思います。

先述したように、FCS認証紙も再生紙も、時期によって品薄な時があります。第三の波としてエシカルペーパーの選択肢が多数生まれ、現状使っているものに固執せず、企業が用途に合わせて色々な選択することが出来るように近い将来なると良いなと思いますし、きっとなると信じています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?