椅子

目的の椅子があるという
そのフロアまで階段で昇り
いざ向かっていくと
突然
その椅子を見かける

身体を向け合い対面すると
わずかな緊迫が浮かび上がる

突き出た両袖がこちらを指差し
私を受け入れる格好をとる
それでも座ることはできないのは
社会がそれを阻むためだろうか

行為としては難しくはない
ただ座ること

機会を持たない私に向かうことなく
消耗し
錆の生えた椅子の姿
読み取ることのできない表情の全て


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