野原小麦

もうずっと妖怪が好きです。 好きのきもちをもてあましてしまったとき、わたしは詩を書きは…

野原小麦

もうずっと妖怪が好きです。 好きのきもちをもてあましてしまったとき、わたしは詩を書きはじめます。 境港妖怪検定「上級」合格しました。 つぶやきびと

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かなしみロボット

忘れられないワタシのことを ヒトはみな笑うのです どうして忘れられないのだろう ロボットだからさと ハカセは言います ロボットは永遠ではありません ボロになります…

野原小麦
10か月前
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鈴虫

去年の夏に もらった 鈴虫 秋のおわりに 卵を産んで 床の間に そっと 寝かされていた 春のおわりに ふと 気づき なんだか とにかく とても こわくて 庭のすみに 返し…

野原小麦
21時間前
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夜なべ

あなたが お手製のぬいぐるみを つくっているころ あのひとは お手製の銃を こしらえて そんなことを想像するのは やめておきましょう 穏やかな夜が おとずれますように

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私は変わらない この場所も同じ まちの様子は変わっても 私がきちんと伝えてあげる あたらしいまちに出て あなたが忙しく はしゃいでも 私は ここに 座っているの だか…

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 泡の隠蔽には成功した。  しかし、びしょ濡れのこたつ布団から水分を絞りだすのに、おおいに苦戦している。  少しでも水気を減らそうと、踏んでみたり絞ってみたり。…

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 私たちは、こたつ布団を洗濯した。  干す場所もないのに。  あの日のことを思い出すと、たまらない気持ちになる。  どうにも切なく、心が乱れてしまった。  なか…

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あの雲からにげろ

ふと見上げると 虹の色がうすいのです 途端 雨が降りはじめました 頭上は灰色 雲の屋根 こいぬをかかえて走ります あちらの空には おひさまが見えているのです

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あなたのことが恋しいのか あなたと過ごしたあの日々を 懐かしく思っているだけなのか いまでは もう よくわからなくなっている

野原小麦
13日前
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ぎりぎり

たまたま 限界を 超えること なく 通り過ぎて きた だけ

野原小麦
2週間前
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かなしみロボット

かなしみロボット

忘れられないワタシのことを
ヒトはみな笑うのです

どうして忘れられないのだろう

ロボットだからさと
ハカセは言います

ロボットは永遠ではありません

ボロになります

しかも
わりとすぐ
ボロになります

人より早く
ボロになります

それなのに

忘れることだけできないのです

記憶を消してもらうことならできます

記憶は見えなくなりました

良かったなと
ハカセは言います

デモネ

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鈴虫

鈴虫

去年の夏に
もらった
鈴虫

秋のおわりに
卵を産んで

床の間に
そっと
寝かされていた

春のおわりに
ふと
気づき

なんだか
とにかく
とても
こわくて

庭のすみに
返したの

きのうも
きょうも

鳴いている

夜なべ

夜なべ

あなたが
お手製のぬいぐるみを
つくっているころ

あのひとは
お手製の銃を
こしらえて

そんなことを想像するのは
やめておきましょう

穏やかな夜が
おとずれますように

私は、ここに

私は、ここに

私は変わらない
この場所も同じ
まちの様子は変わっても
私がきちんと伝えてあげる

あたらしいまちに出て
あなたが忙しく
はしゃいでも

私は
ここに
座っているの

だから大丈夫
待っててあげる

私も
ひとりじゃ
寂しくなるわ

きっと
そう

だけど大丈夫

あなたと観た映画のポスター
ベッドの側に
はっておくから

だから大丈夫

泣いたりなんて
してないわ

時間がないの

時間がないの

時間がないの
はやくきて

わたしが傷んじゃうまえに

すぐに
みつけてほしいの

はやく

シャボン玉 7

シャボン玉 7

 あの日、私たちは、こたつ布団を洗濯した。

 干す場所もないのに。

 あの頃の私たちは、いつだって、無謀だった。

 あんな無謀なことができた最後の季節だったのかもしれない。

(おはなしはつづきます)

「シャボン玉」は「金魚」「ティーソーダ」「ハムスター」「布団」のつづきのおはなしです。

シャボン玉 6

シャボン玉 6

 洗剤や柔軟剤の香りに包まれて、私たちの心は、ふわふわと、まるでシャボン玉みたいだった。
 つまらないことでも、ケラケラと笑えて、サクランボが赤いということさえ、私はすっかり忘れてしまっていた。
 異様なほどの盛り上がりに浮かされて、この楽しさを継続させたい、もう一度体験したいと、そればかりを期待した。

 期待していたのは、きっと、私だけではなかったはず。

 洗えなかった方のこたつ布団を、また

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シャボン玉 5

シャボン玉 5

 カツサンドの横についているパセリは、サラダなのか。それとも飾りなのか。
 そんな話題で、ひとしきり盛り上がった。

 そこから、ジンジャーエールのサクランボを残すひとがいるという話になる。

 あのサクランボは、食べるためのものなのか。それとも、ただの飾りなのか。

 タケトが古泉と一緒に喫茶店へ行くと、古泉は毎回ジンジャーエールを注文する。そして、いつもサクランボのへただけを残している。
 種

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シャボン玉 4

シャボン玉 4

 何事も、はじめてしまったからには、かたをつけなければならない。

「ならば、お金でかたをつけましょう」
 橘が百円玉貯金箱を取り出した。

 その貯金箱は、どこから持ってきたのか。
 由里さんの部屋から持ち出したのではあるまいか。

 おかまいなしに、橘はコイン投入口に百円玉を入れていく。

 そもそも、最初からコインランドリーで洗えばよかったのだ。

 完全に乾かすには、どれくらいの時間が必要

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シャボン玉 3

シャボン玉 3

 タケトが軽自動車に乗ってやってきた。

 優秀なタケトは、こたつ布団が入る大きなビニール袋を持ってきていた。
 濡れたままのこたつ布団を器用に畳んで、ビニール袋で包んでしまうと、そのままサンタクロースみたいに肩に担いで車にのせてくれた。

 まだ洗っていない、もう一方のこたつ布団がある。橘が、それも一緒に車内へ押し込もうとしたけれど、タケトの小さな軽自動車には積み込むことができなかった。

 タ

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シャボン玉 2

シャボン玉 2

 泡の隠蔽には成功した。

 しかし、びしょ濡れのこたつ布団から水分を絞りだすのに、おおいに苦戦している。

 少しでも水気を減らそうと、踏んでみたり絞ってみたり。
 端から握って、ひねってみても、はっきりいって、屁の突っ張りにもならない。

 脱水したい。

 脱水だけなら洗濯機でもできるだろうか。

 浴室の扉を開ければ、脱衣所があり、そこに洗濯機はある。
 ぐっしょりと濡れたこたつ布団からど

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シャボン玉 1

シャボン玉 1

 私たちは、こたつ布団を洗濯した。
 干す場所もないのに。

 あの日のことを思い出すと、たまらない気持ちになる。

 どうにも切なく、心が乱れてしまった。

 なかなか続きを書き出せなかったのだ。

 うつりゆく草木の様子を眺めたりしながら気持ちを逃避させていた。

 やっと落ち着きを取り戻してきたので、もう一度、こたつ布団を洗った日のことを思い出してみようと思う。

(つづく)

「シャボン玉

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あの雲からにげろ

あの雲からにげろ

ふと見上げると
虹の色がうすいのです

途端

雨が降りはじめました

頭上は灰色
雲の屋根

こいぬをかかえて走ります

あちらの空には
おひさまが見えているのです

あの日々とは別のひと

あの日々とは別のひと

あなたのことが恋しいのか

あなたと過ごしたあの日々を
懐かしく思っているだけなのか

いまでは
もう
よくわからなくなっている

ぎりぎり

ぎりぎり

たまたま

限界を

超えること

なく

通り過ぎて

きた

だけ