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言葉の宝箱 1200【失ってみてはじめて、失われたものの価値を人は知る】

『鞆の浦殺人事件』内田康夫(徳間文庫1991/7/15)



・理想はしばしば、現実の前にはかなく散るものである P14

・カネを価値判断の尺度にする以外、
正直なところ、われわれビジネスマンには方法がないのですよ(略)
正義ですらも、カネの高でランクづけしてしまう。
なんとも味けないといえば味けないが、現実です。
正義だってカネで買えるし、戦争だって買える世界です。
それが経済社会の論理というものだと、割り切っているのですよ P117

・失ってみてはじめて、失われたものの価値を人は知る P137

・この世の中から事件が無くなったら、警察はいらない。
戦争が無くなったら軍隊も、軍需産業もいらなくなるのと同じだ P175

・人間誰しも、勢いのあるときは暴走しがちなものです。
いや、人間にかぎらず、企業だって社会だって、
勢いがつくと、歯止めがきかなくなってしまう(略)
結果のいい悪いは歴史が決めることですが、
しかし、傷を受けた人の痛みは、生涯消えることはないのです P188

・よく出来た推理小説には、じつに多くの人間が登場する。
その中の誰が犯人であるかを推理するためには、
いい人間と悪い人間を色分けすることから始める。
読者にしてみれば、それが唯一の正しい方法であるはずなのである。
ところが、意地悪な作家は、わざとひねくれて、
悪そうな人間がじつはいい人間だったり、またその逆だったりと、
設定をいろいろ複雑にして登場させる。
中には「そんなのインチキだよ」としか思えないような、
詐欺同然の「ひっかけ」もあったりして、
読者のほうもそれを逆手に取って――と、
楽しみ方もさまざまなのだろう P216

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