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言葉の宝箱 0347【卑怯にも逃げ出してしまった愛を見つめた】

『桜さがし』柴田よしき(集英社文庫2003/3/25)


柴田よしきという作家には
とてもシビアな作品とほんのり温かい作品がある。食に触れ味わう。
愛、情、に優しくくるまれたお話でほんのり温まります。
『一夜だけ』『桜さがし』『夏の鬼』『片想いの猫』『梅香の記憶』
『翔べない鳥』『思い出の時効』『金色の花びら』表題作を含め
八篇のミステリ連作短編集。

・「おまえの人生は、誰にも決められはせんで」(略)
「何を言われても、決めるのはおまえや。
後になって誰のせいでこんなになった、てぼやくのは筋が違う。
おまえが決めたんや、最後はな、それを忘れたらあかん」(略)
この人と決めた相手と心を結び合って
人生を歩く夫婦の光景が歌義の心に痛かった P39

・「わからんよ・・・・人を殺したいほど憎んだことも・・・・
愛したことも、わしにはない」(略)
繋ぎ合った手と手。
その愛が、三人の人間を不幸にした。
それほどまでに、殺したいほどに憎むこと、そして愛すること(略)
自分が卑怯にも逃げ出してしまった愛を見つめた。
今は、抱き合いたいと思った。抱きしめたいと、心から思った。
そんな身勝手が赦されるものなのか。赦されはしないだろう。
でも・・・・今夜一晩だけでも、赦されるのなら・・・・
もう一度、まり恵との新しい朝を探したい(略)
歌義はそのまま、まり恵の前にいた。
たぶん、今はじめて、この愛の真正面に P51

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