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言葉の宝箱 0944【なんでもいいから、なにかをやってみて、なにかを始めてみることから、全部がはじまるんだよ】

『ハレルヤ!』重松清(新潮文庫2021/7/1)


アカネたち五人は学生時代のバンド仲間。
社会人になって解散した後はそれぞれ子育てや仕事、恋愛に奮闘を続け、
気がつくと、もう四十六歳になった。
音楽さえあればゴキゲンだった青春時代とは違う「人生の後半戦」に
鬱々としていたある日、あのキヨシローが遠くへ旅立った。
伝説の男の啓示に導かれ、五人は再会を果たすのだが。

・野心はなかったが、夢はあった P14

・風景がモノトーンになると、気持ちが落ち着く。
色が消えただけで、世界のすべてが過去になるような気がする P18

・もう四十代の半ばを過ぎている。
タフにもなったし、鈍感にもなったはずなのだ P19

・目先のことにとらわれすぎて(略)
とても大切なものを手放してしまったんじゃないか P35

・楽器って『やりたい』と『できる』の差って大きいじゃないですか P83

・自信と楽しさだよな、大事なのは P85

・前借りって、していいよね(略)
手元にないんだったら借りてくればいいじゃん(略)
自信の前借りって、要するにハッタリってことでしょ(略)
ハッタリがうまくいって、自信がついたら楽しくなるわけだから、
楽しさも前借りできるわけ P89

・オトナにならなきゃわからないことって、いろいろあるんだね P140

・昔と変わらないところもある。
変わってしまったところも、もちろん、ある。
まあ、そういものだよな、人生って P142

・昔の思い出って(略)
懐かしいことは懐かしいんだけど、
真正面からはちょっと向き合うのがキツいっていうか……
ぜんぶ忘れるのは嫌だけど、
記憶がきっちりありすぎるのも困るっていうか P143

・変わってしまったところと変わらないところとの境界線は、
きれいにまっすぐ引かれているわけではない。
まるで海岸に打ち寄せる波のように揺れ動く P146

・沈黙には二種類あるんだな(略)
満たされた沈黙と空っぽの沈黙(略)
昔の沈黙は、二人でいられる幸せに満ちていた。
言葉が邪魔になる。音楽も要らない。
よけいなものが入り込むとひび割れてしまいそうにもろくても、
そこには確かに幸せがあった P172

・お説教とは、おせっかいなのだろう。
ちょっとわずらわしい親切や、
空回り気味の優しさでもあるのかもしれない P195

・宝石がある。
しかし、その宝石のどこに目をつけて、どこを読者に伝えるかは、
担当する「面」によってまったく違う。文化面は宝石の美しさを伝える。
鉱物としての組成や硬度を調べれば科学面の記事になるし、
宝石に価格をつければ経済面の記事になる。
それが権力の象徴になっていれば
記事が載るページは政治面に移るはずだし、
産出地や流通をめぐって国と国とが争えば国際面にも移る。
一方、家庭面では、宝石のメンテナンスや
その宝石をアクセサリーにしたときのファッションが語られるし、
栄光のイコンとして扱われているなら
スポーツ面や芸能綿とも決して無縁ではない。
そして、宝石をめぐる殺人事件や窃盗事件は、
社会面をにぎわすことになるだろう P210

・強い――。強がるのがうまい――。
その違いが、いまは、身にしてわかる P267

・昔の自分からいまの自分が目をそらしてしまう日が、
いつか訪れることを予感していた P286

・「失敗を次に活かせばいい」
「ミスが改善のポイントを教えてくれる」(略)
そんなのは嘘だ。
人生にやり直しはきかない。
「次」のチャンスは、歳をとるごとに狭まって、痩せていくだけだ P287

・自分の気持ち、いろんな気持ち、
うまく言えたことなんて一度もないんだよね P300

・踏み込まない。手を差し伸べない。見守るわけでもない P322

・なんでもいいから、なにかをやってみて、
なにかを始めてみることから、全部がはじまるんだよ P352

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