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言葉の宝箱 0549【女は笑って過去を捨てますよ】


『狐罠』北森鴻(講談社文庫2000/5/15)


店舗を持たず、自分の鑑定眼だけを頼りに骨董を商う「旗師」宇佐見陶子。彼女が同業の橘薫堂から仕入れた唐様切子紺碧碗は贋作だった。
プロを騙す「目利き殺し」に陶子も意趣返しの罠を仕掛けようとするが、
橘薫堂の外商・田倉俊子が殺されて、殺人事件に巻き込まれてしまう。
古美術ミステリ長編。

・プライドは大切だよ。
そうしたものを持ちえない悲劇なら、
私は一晩かかっても語り尽くせないほど知っている P16

・芸術とは己の心の有り様を映す鏡である。
美しいものを美しいといえる心を諸君は誇りに思わねばならない。
逆に美しいとも思われぬものを、
周囲の言葉の流れに負けて、美しいと述べたときは、
諸君の美意識は地に落ちたと考えるべきなのだ P29

・背伸びした、自分の指先がいったいどこまで届くのか P49

・皮肉をさわやかに言い放つことができるのは、ある種の才能である P151

・女は笑って過去を捨てますよ。
どれほど美しい思い出も、
過ぎてしまえば本棚の奥にしまいこんだ童話と同じです。
いつでも取り出せるけど、結局は取り出すことはない P162

・もしも、この世に完全な悪が存在するとしたら、
それはすでに悪ではない(略)
しょせん善悪は、
互いの比較と評価によって貼り分けられるラベルにすぎない P253

・小心な人間は、時として鉄壁の守りを固めるのである P272

・離婚することで身に付けた器用さ、賢らしさと思うと、気持ちが沈んだ。男性に優しくされることが嫌いなほど、性格はねじ曲がっていない。
だが、自分が女であることを正面きっての商売の武器にするほど、
図々しくもない P352

・人は誰も自分の好奇心と夢とを縛る鎖を持つべきではない P400

・胸のうちから溢れる言葉を抑えきれなかった P443

・三十女は、これくらいじゃめげないって P470


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