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言葉の宝箱 0460【誰かを泣かせなければ成り立たない。不都合な現実に目を瞑っているのがこの社会】

『バルス』楡周平(講談社2018/4/24)


ネット通販会社の物流センターでバイトを始めた大学生の百瀬陽一は派遣労働者の過酷な職場環境と運送業務に忙殺される総合物流企業の苛烈な現場を目の当たりにする。広がる格差への不満を背景に非正規労働者の待遇改善を訴えて『バルス』と名乗る人物がテロを仕掛けた。世界最大ネット通販会社《スロット》は極限に達した物流システムに支えられ、生命線の宅配便トラックがテロの標的になった時、日本中が機能不全に陥る。犯行声明がマスコミに届き、次の犯行予告が伝えられた。宅配会社は荷物の受け付けを中止するとそれに伴いネット通販会社の出荷も停止、あらゆる産業で事業が滞り始め、更にバルスは予想外の要求を突きつける。国内の物流が滞り、様々な産業が打撃を受け始める。「ネット通販」「宅配便」「非正規労働者」への過剰依存に警鐘を鳴らすビジネス小説。


・自分を買ってくれる会社かどうか。
一緒に成長していけるかどうか。
企業の価値は、そこにある P102

・体力が弱い順番から死に絶えていく。
強き者が最後まで残る P143

・誰かを泣かせなければ成り立たない。
それを承知していながら不都合な現実に目を瞑っているのがこの社会 P279

・日々の変化というのは小さなものだ。
大抵の人間は、今日の暮らしは、明日も続くと考えている。
でも、それは間違いなんだ。
小さな変化も積み重ねれば、気がついた時には大きな変化になっている。
その時に慌てても遅いんだ。
富める者はますます富み、貧しい者はますます貧しくなる。
そんな世の中になったら、社会は崩壊してしまうよ。
それを防ぐための方法はひとつしかない。
格差是正の必要性を訴え、真剣に議論することだ P364

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