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どこで暮らすか、それが問題だ ~自治体による住環境整備給付の違い


我が社、実は基本的に遠出はしない。

湘南改造家という名前にこだわっているからというわけではなく、単に遠くなると仕事がペイしないというだけである。現場に行くだけじゃなくて、各種の申請のために役所に通わないとならない仕事だからね。

だいたい神奈川県の相模川より西と、北東方向は海老名市大和市横浜市葉山町は行かない、それより遠いところも区域外、といったところだ。
そして、それより内側すべての自治体で、給付関連の制度はほぼ一緒となっている。介護保険の住宅改修(20万円)と、県と市町村の障害者施策による住宅設備改造費の助成(40万円~ ※自治体により上限額が違う)である。なので申請書式は違うものの、あまり混乱せずに仕事ができてはいる。

ところが、政令指定都市になると、神奈川県でも給付の内容に違いが出てくる。例えば、障害者メニューにおいて、階段昇降機の設置は県内の一般自治体では対応していないが(なぜか天井走行リフトは対象になっている)、横浜市だと吊り上げ型の移動リフト全般、階段昇降機、段差解消機が対象になる。以下参考。


住宅設備改造費の助成(鎌倉市)

住宅設備改造費の助成(横浜市)


また、高齢者に対する住環境助成も、横浜市では100万円まで助成する制度があった。残念ながら昨年度末までは、ですが。

高齢者等住環境整備事業(横浜市)


あと、介護保険から抜け落ちがちな(管理組合の承諾があれば出来なくはないんだけど、金額的に難しい)マンション共用部の手すり等の工事については、上限30万円までの別途の補助金がある。

マンションの共用部等のバリアフリー化補助(横浜市)

ま、障害者施策が大きく違うだけで、高齢者関連は神奈川県内ほぼ一緒になったといったところだろうか。

ところがどっこい。

高齢者住宅改造費助成事業(川崎市)

川崎市はまだ高齢者向けの追加メニューが残ってました。上限100万円まで、こちらの制度で階段昇降機も付けられますね。


こんな感じである。不公平だなー、と思うかも知れないが、自治体のサービス競争がこういうところでは繰り広げられており、それが人口集中の理由にもなっているのだろうなあ、とは思う。


でも、上には上がある。東京都の区部である。

自分がこの仕事をやる前に研修に通っていたのが、足立区柳原にある病院だったのだが(当時、補助器具センターがあったのだ)、その講座を修了したのち、所長のK田さんに頼み込んで(愛媛県でご活躍の様子、大変ご無沙汰しております)、住宅改修の実務を行っている関連企業で、現場で働かせていただいたのだった。期間にして2ヶ月くらいだったか。

その時、足立区で使える制度についても申請業務を行ったのだが、これがとても充実しているのだ。

そもそも、介護保険に住宅改修というメニューが加えられたのは何も気まぐれではなく、当然エビデンスがある。その研修の際に教わった内容だったか、たしか江戸川区の独自の住宅改修助成制度(40万円まで)があり、それを行った場合は施設入所率や施設入所に至るまでの在宅期間が伸びるなど、在宅生活を伸ばす効果が認められたとのこと。
施設入所になると税や保険での負担も多額になることから、在宅でいられる時間を伸ばすことは介護保険の趣旨に沿う、ということになったようだ。上限額は半分にカットされたが。

つまり東京都では、各区で微妙に違ってはいるが、介護保険以前からそういった住環境整備への補助事業があったのだ。

というわけで、自分に馴染みのある足立区の、介護保険以外の住環境関連メニューをご紹介しよう。ワケがわからなくなるくらい、たくさんあります。


住宅改良助成制度(足立区)

こちら、基本的に高齢、要支援・介護認定者以外の方向けのメニューです。

1,助成上限額30万円
2,助成対象工事費(消費税抜)の20%(千円未満切捨て)
3,工事種類ごとの上限額(下記表を参照)​​​​​​

を比較して一番安価な額を助成します。


メニューも多様なのでご確認されたし
  


そしてこちらが高齢者向け。

高齢者住宅改修給付(足立区)

予防給付
内容:手すりの取り付け、床段差の解消、和式から洋式便器への取替えなど(介護保険の住宅改修サービスに準じます)。助成は1世帯1回限りです。また、分割して使用することはできません。

対象者:65歳以上で在宅の、加齢に伴い心身機能の低下が認められるものの、介護保険の認定の結果「非該当(自立)」と認定(1年以内の認定に限る)された方

助成上限額:200,000円

こちらは65歳以上で介護保険非該当の方向け

設備改修(階段昇降機以外)
内容:1.またぎが10cm以上低くなる、または深さが10cm以上浅くなる浴槽への取替工事、2.和式から洋式便器への取替工事、3.家屋内で車椅子を利用している方(ご自身が調理を行う方)用の流しまたは洗面台への取替工事。助成は1.2.3.とも1世帯1回限りにつき、複数人で分割して申請することはできません。
なお、助成額の中から、原則1割(所得により2割・3割又は免除)の利用者負担があります。また、助成額を超過した額も、利用者負担となります。

対象者:65歳以上で在宅の、介護認定の結果「要支援・要介護」の認定がされた方で、かつ1.2.は介護保険の住宅改修サービスを一定の額以上使用している方

助成上限額:1. 200,000円 2. 106,000円 3. 156,000円

こちらは介護保険使い切った人向け

設備改修(階段昇降機設置費用助成)(令和4年4月開始)
内容:個人用住宅に、いす式階段昇降機を設置する際の費用の一部を助成します。

対象者:65歳以上の要介護4・5の方で住民登録地にお住まいの下記のすべての条件を満たすとともに、区の調査で昇降機の設置が必要と認められた方
 
助成上限額:1,332,000円(機器及び付属機器費用、設置費用)

こちら階段昇降機関連

手厚い。
ただし、階段昇降機関連は厳しくなってもいて、必ず建築基準法上の確認申請を通せとのお達しがあります。これ、4号建築物(小さめの住宅など)では免除という解釈でやれていた区域が多いのですが、実は4号建築物の規定が令和7年4月の建築基準法改正でなくなるので、もしかすると今は確認申請についてあまりうるさくない地域では、階段昇降機の取付は今年度がおすすめってことになるかも知れませんね。今度メーカーさんに聞いてみよう。

お次は障害者メニュー。

住宅設備改善費の給付(足立区)

小規模住宅改修
対象者:学齢児以上65歳未満で、下肢または体幹の障がいの程度が身体障害者手帳3級以上の者および補装具として車いすを交付された内部障がい者(ただし、特殊便器への取替えは上肢障がい2級以上)。
障害者総合支援法の対象となる難病患者で、下肢または体幹機能に障がいのある方。
※介護保険に該当する方は、介護保険の住宅改修制度が優先になるため、本制度はご利用になれません。

助成額:200,000円

中規模住宅改修

対象者:学齢児以上65歳未満で、下肢または体幹の障がいの程度が身体障害者手帳2級以上および補装具として車いすを交付された内部障がい者。
※介護保険に該当する65歳未満の方は、本制度の対象になります。

助成額:641,000円

屋内移動設備
対象者:学齢児以上の身体障がい者で、歩行ができない状態で、上肢・下肢または体幹に係る障がいの程度が1級の者および補装具として車いすの交付を受けた内部障がい者。
※65歳以上でも対象になります。

助成額 機器本体・付属機器:979,000円
          設備費:353,000円

階段昇降機等
対象者:学齢児以上の身体障がい者で、歩行ができない状態で、上肢障がい1級の者、下肢または体幹に係る障がいの程度が3級以上の者および補装具として車いすの交付を受けた内部障がい者。
※65歳以上でも対象になります。
※階段昇降機の設置は建築基準法への適合が必要です。詳しくはお住まいの地域の障がい福祉課援護係へお問い合せください。

助成額 機器本体・付属機器:979,000円
          設備費:353,000円

 

というわけでざっと駆け足でみてきましたが、足立区では介護保険以外のサービスがこれだけあるんですよね。
こうなると、住環境整備の仕事も公的資源を探る、ソーシャルワークの色が濃くなってきます。知っていると知らないとで大違い。

自分メモを兼ねて再履修してみましたが、本当に地域格差って大きいんですね。そりゃ東京に人口が集中するわね、という気持ちです。



※追記

このネタを思いつくに至った、yumiさんの外部手すりの記事です。
足立区の状況が良くわかります。いろいろ使えて羨ましい。

皆様の記事を読んで、次のアイデアを思いつくことがだんだん増えてきました。note書きの皆さまと、ピックアップAIのおかげです。深謝。



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