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アルファ世代に愛を込めて -コトラー5.0-

皆さんは「地球グミ」をご存知でしょうか!
過日「有吉のお金発見  突撃カネオくん(NHK)」の番組で"歯で開ける地球をモチーフにした「地球グミ」(550円5個入り)が小学生の間で大人気"と紹介され、今や手に入らないことを放送していました。見た目は地球儀で中にマグマをイメージした真っ赤なベリーソースが入っています。

韓国YouTuberからの配信された後にS N Sで拡散し、大事な友達にプレゼントするプレミアムグッズとのこと。そして、このお菓子をアルファ世代(2010〜2024年の間に生まれた世代)を持つミレニアル世代の親(1980年から1995年の間に生まれた世代)はほとんど知っているという事実。しかも共に食べている上、購入に対して親は寛大な様子です。

アルファ世代の両親

ここで私が注目したのはこの「地球グミ」が大人気だということではなく、小学生や中学生の子供を持つミレニアル世代の親が、"よき父親であり母親である"ように振る舞っている、もしくは演じていることです。そして母親たちに好意的に見られる代表として番組に出演している杉浦太陽氏、小木博明氏などが、自分の番組発言に非常に気をつけたいと発言をしているという事実。

「いかによい親であるかを子供に知ってほしい。さらに言えば、自分の子供の友達にも好感度を得たい」

 私世代の親とは全く異なる価値観を持つ親が、アルファ世代を育てているということでしょうか。

さらに番組では、小学校4年生の質問である「恋の落ち方を知りたい」という内容に続きます。ここでも出演しているゲストたち親世代は、"ベストfather賞"を得られるような回答をする例を紹介していました。聞いていて少し私の中で違和感を感じます。率直に言ってこれって、まるで擬似家族ゲームのようなのではないか、と。

「地球グミ」から「恋の落ち方」という文脈

重ねて申し上げますが、私が気になっているのは「地球グミ」と「恋の落ち方」が、小学生の"知りたい"というコンテキストで同一だということです。回答の内容がどうだということではありません。

そしてここに、私はこの層の55%が「自分達のソーシャル・インフルエンサーが使っているものを買いたい」という表層の行動パターンではなくて、その背後にある動機、価値観、暗黙知を知りたいのではないか、と考えました。

改めて、この世代について整理してみましょう。
■アルファ世代の特性:
・オンラインとオフラインの境がないこと。常時接続。アバター違和感なし。メタバース違和感なし。
・ペースが早い都市環境生活で育てられる(ミレニアル世代の親である故に、今までより高い年齢で出産。子供養育や教育に比較的お金をかけてもらったでしょう)
・お金や金融に関しては、親(ミレニアル世代)から徹底した教育を受ける。
・プランティド・コンテンツ(企業やブランドのイメージを高めるストーリー性あるコンテンツ)を好む。
・ハイテク玩具、スマート機器、ウェアラブル端末でくつろいで遊ぶ。
・AIなどテクノロジー進化と共に、自分独自の存在価値を知り、自分の幸福を求めること。

 「ミレニアル世代が自分自身をブランディングしたのに対して、アルファ世代は、自分のありのままの姿を求める」
「ミレニアル世代の子供で、デジタルネイティブであるだけではなく、兄姉のZ世代(1990年半ばから2010年代生まれた世代)と親の影響を受けている」

 弊社のリサーチによっても、アルファ世代は親に対しても考え方の面で、かなりの影響を及ぼしています。家族全体に影響して、態度変容を促している。つまり、家庭環境の中での影響力があるといえるでしょう。

「コトラーのマーケティング5.0」

最新刊で話題になっている「コトラーのマーケティング5.0」(日本版:2022年4月30日、朝日新聞出版)の中から、"第2章 世代間ギャップ ベビーブーマー世代とX、Y、Zおよびアルファの各世代に対するマーケティング」から少し参照してみましょう。

「25歳のアシスタント・マーケティング・マネージャーが、ミレニアル世代向けた新製品の印刷物広告のデザインを担当することになった。彼女は見込み客に対するサンプル調査を行ったのち、人目を引くグラフィックと一行のコピーの美しい高校を制作し、行動喚起としてwebサイトのリンクを載せた。
彼女にとって予測外だったのは、上司である50歳のマーケティング・マネージャーが、その印刷広告に、製品の機能や強みや利点に関する説明書が入っていないと文句をつけたことだった。
ミレニアル世代に対するミニマリズム的マーケティング・アプローチを理解していない上司だと判断して、彼女は会社を辞めた。」

コトラーは、多くの組織でのこの様な世代間のズレが、企業の中でさまざま課題を引き起こしているのではないと考えていると記していました。私自身、クライアントとのプロジェクトを遂行している中でこのギャップというか意識のズレを実感することが多々あります。

ただしこれはどちらが正しいということではありません。日々進化するITテクノロジーや環境によって、考え方や捉え方そのものが変化してきているだけ。もう一度言いますが単にあなたの経験が「古臭くなった」というのではありません。企業としての強みとか弱みとか、それを推奨してほしいというフォーマットを埋めるというステップ自体が今は毎日、いや毎時間、毎秒で変化しているってことなのです。前述した「ミレニアル世代が自分自身をブランディングしたのに対して、「アルファ世代は、自分のありのままの姿を求める」 ということに尽きるのだと思います。

世代間のズレへの対応

私はこれまで多数のクライアントと共に「ビジョン思考(センスメイキング理論)」やDX対応のプロジェクトを行いながら、まず最初に3つ目的についてプロジェクトメンバー全員に書いていただきながら、皆さんと共有し対話してきました。これがとても重要なのです。

1:自分自身が本当にやりたいこと(小目的)
2:社会的価値を考慮しながら、未来のためにこうありたいと考えること(大目的)
3:1と2の間で、この2、3年にやるべき目的(中目的)

「あれ?なんでこの順番?」という方もいるかもしれないので、補足です。

まず小目的から出発するのは、自分の人生でやりたいこと、実現したいことを考えるからです。次に、未来の社会がどうなってほしいかを考えます。
3番目の中目的は、小目的と大目的とどちらにも引きずられないものを設定するからとなります。小目的に引きずられると、できることから考えられなくなることも指摘しておきましょう。大目的に引きずられると、実現へのロードマップを具体的に描くことができにくくなり、お題目になってしまうから故のこの流れとなっています。

結果として...。この3つを組織内で徹底的に対話することによって、世代間のずれを認識しながら、相互主観を創出することではないかと考えます。そこで相互に共感し得た時のみ、世代間のずれを理解しながら組織が新しい知を生み出されるのではないでしょうか。

数多くの企業と切磋琢磨して、真摯に対話することから新しい戦略ペースが作られると実感してきた私としての経験値からのコメントです。

まとめの代わりに

先月邦訳として久しぶりに出版された「コトラーのマーケティング - 5.0デジタル・テクノロジー時代の革新戦略-」は話題の書籍です。現段階までのマーケティング整理には、大変役に立つし整理にはなると思います。

しかしながら残念ながら"書籍"です。どのように新しいものを創造するか、人間視点に何を考えるかのようなものはありません。さらに言えば、出版までの時間はかかっています。リアルに彼に聞いてみたら「すでに変化はしているよ」なんていうかもしれません。だってマーケットは常に動いている(ing)のですから。

これは誇大解釈と言われるのは覚悟しながら、一言。
「それは自分で考えなさい」
コトラーの愛ある教えだと思います。

(完)