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貧しさが豊かさに不意に転換するとき:斉藤幸平氏のコモン論によせて

先日Eテレスイッチインタビューで、新書売り上げ一位で話題の経済学者斉藤幸平氏が、女優で社長の柴崎コウ氏と対談していた。柴崎さんは環境に配慮した製品を次々開発されている。

斉藤氏はマルクスを読みながら、気候変動と資本主義の複雑な関係を考察して今話題の人だ。人が稼ごうとして、資源は浪費され、気温は上昇してゆく。

その彼が新しい可能性として提唱するのが、「コモン」(共有するもの)という考え方だ。何もかも自己所有、稼ぎで買う循環を変え、共有物を増やすことで、社会を変える。いま流行りのシェアに近い。

すぐ思いつくのが図書館だが、基本的にはお金のない人が借りに行く。お金があれば通販でクリックですぐ買える時代、他人も触った本を借りるのは、貧しいと思う人もいるだろう。

だが、これは考え方によっては、豊かさに逆転する。他人と何かを分かち合うのは、よろこびであり、豊かさだと考える人もいる。お祭りが良いのは活気や時間を共有するからだろう。図書館でいっしょに本を読むのは、豊かなことかもしれない。

同じことが、銭湯にも言える。昔は貧しく家に風呂がなくて、人が通った。そこで出会いが生まれ、思わぬ笑顔があって、人は豊かに暮らしていた。今、狭いマンションの家風呂がいやで、わざわざ銭湯に通う人もいる。これも、貧しいとも思えるものが、豊かさにも転ずる一例だろう。

このように、斉藤氏が唱える「コモン」とは、とても豊かで可能性のあるものだ。うんざりするような、広告と既製品の社会の中で、ふと明るい気持ちになれるものだ。

柴崎氏も、まったく別の道をたどりながら、同じような感じを得て、北海道の農業コミューンを含む、今のような活動にたどり着いた。なかなか素晴らしい出会いだと思う。

共有することで、無駄も省け、資源とエネルギーの節約になり、コミュニティも復活し、良い循環が生まれる。いろんなバリエーションが考えられる。みなさんも、挑戦してもらいたい。

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