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なんちゃって留学 よもやま話19    ~Short trip ロワールお城巡り1

ブルゴーニュ大学夏季学校主催の、1泊2日 お城巡りバス旅行に参加してみた。2日間で5つのお城をめぐる、結構なハードスケジュール。
こんな予定で、お城巡りに行ってみよう。

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初日の朝・昼食は別料金だが、それ以外の食事費と宿泊費込みで900フランスフラン(約18,000円/1994年当時)。個人的にまわるとしたら2日で5つのお城を回るのはかなりきついと思うので、ツアーならでは。

朝、私が滞在している大学寮にもバスが迎えに来てくれることになっていたが、出発時間はなんと5:30am! 実はこの日、5時前に起きるつもりが「おーい、起きてる~?」という廊下からの友人の叫びによって目覚めた時には、すでに5:15amをまわっていた。

でも、荷物は用意してあったし、メイクなどはせずすっぴん(いい時代だ)なので、着替えて5分程度で準備完了。まだ日も昇らぬうち、ロワールお城巡りツアーのバスに飛び乗った。

1:le Chateau de Sully-sur-Loire シュリー・シュル・ロワール城

朝食と休憩以外はノンストップで5時間近く走り続け、10:30am頃、バスは最初のお城、シュリー・シュル・ロワール城に到着した。(フランス語で発音すると、とてもきれいな名前のお城です)

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※ポストカードになりそうな、お気に入りのベストショット!

重厚さと美を併せ持つ要塞城
この城は14世紀(1360年以前)に建てられたもので、15世紀の英仏100年戦争の時に活躍したらしい。この時代の城は、城主が自らの栄華を誇るためというよりも、戦闘のための城だから、周りは広い堀に囲まれており重厚だ。

というのも、当時は建築技術が発達しておらず、建物の重さに耐えるため、石でできた壁の厚さがなんと2メートルくらいある。必然的に窓が小さくて天井も低い。中に入った時のひんやりとした空気、暗さが印象的だ。17世紀初めの改築で今の姿になったそうだが、中世の面影を残していた。

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1階部分はこの写真のように壁が分厚い(基礎が石)が、3階部分の広間は木組みで覆われていた。このような様式はこの城だけなのだそうだ。

フランスのお城、というと、真っ先にヴェルサイユ宮殿のような豪華絢爛なものを思い浮かべるが、それとは全然違い、どこまでも美しく続く庭園というのはなく、石の壁に囲まれた何もない庭があるのみ。

城の入口には、侵入者を攻撃するための「石落とし口」もある。入口は外壁から数メートル入り込んだところにあり、上を見上げるとぽっかりと真っ暗な空洞が口を開けている。日本の城でもこういうのあったはず、要塞なので、やはり同じことを考えるのね。

きらびやかさとは無縁ながら、お堀の深く蒼い水に映る白いお城は美しく、木々の緑にも映えて、どっしりとした静かなたたずまいを見せていた。

作家のヴォルテールも滞在していたことがあるという。この静かな環境の中で、創作意欲を掻き立てていたのだろうか。

2:le Chateau de Chambord シャンボール城

次に向かったのは、シャンボール城。
16世紀にフランソワ1世が40年近くかけて造営させた城で、中世とルネサンスの、ちょうど中間にあるようなお城だ。

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写真のとおり、広い敷地の中にどーんとそびえたっている。その敷地の総面積は延べ5,500ヘクタールもあるそうで、そのほとんどは森林という。城のまわりは芝生に囲まれてひらけているから、遠くからも「これぞ城!」という豪壮な姿を私たちに見せつけてくる。

お城の近くまではバスが入れないので、途中からは道を歩いてゆく。観光客でいっぱいだ。空には飛行機雲が数本筋を延ばし、お城をひきたてる。

尖塔とらせん階段
近づくにつれ、その大きさが眼前に迫ってくる。なんといっても目に付くのは、尖塔の多さ。いくつも連なっている尖塔は、大小合わせて365もあるらしい。

城内はやはり薄暗いが、先ほどのシュリー・シュル・ロワール城とは違って天井が高い(入ってすぐの広間は吹き抜けになっている)。
圧巻なのは、有名な螺旋階段。
二重のらせん構造になっていて、登る人と降りる人がすれ違わなくて済む。階段の幅はかなり広くてしっかりした階段だ。

この階段は観光客も上り下りできるので、ここから上階に上がり、たくさんある部屋を見学したり、中庭に面しているベランダに出たりする。ベランダからだと、たくさん突き出している尖塔が間近に見えて、なんだか痛そう・・・(避雷針のようなとがったものがたくさん出ているのだ)。

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一階か地下には巨大な厨房があった。フライパンなど道具も置かれていて(当時のものかどうかはわからないが)、ああ、昔はここでせわしなく準備する料理人たちがいたのかな、などと想像力を掻き立てられる。

ダ・ヴィンチ作?
このお城の設計者ははっきりわからないそうだが、素案をレオナルド・ダ・ヴィンチが作ったという説がある。
こういう歴史的建造物を訪れると、今までは世界史の教科書の中にだけあったものが、現実として身近に感じられて嬉しくなる。
歴史の背景を知っていればもっと面白いのに、といつも思う。歴史の勉強したいなあ、と勤勉な気持ちになったりするのは、こんな時だ。

さて、シャンボール城の見学も終わり。今日はあともう1つ、お城をまわるのだ。

3:le Chateau de Cheverny シュヴェルニー城

ツアー1日目の最後は、シュヴェルニー城へ。
ここは「お城」というよりも城館、貴族の大邸宅、というたたずまいを見せている。

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※ここで撮ってもらった写真がほとんどピンボケのため、Christian B.によるPixabayからの画像を拝借。

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イングランド的狩猟館
城館の前にはきれいに整備された庭園があり、建物は左右対称の均整の取れた構造をしている。あくまでもイメージとしては、フランスというよりイギリスの城館みたいだ。
ここは、名前にもなっているシュヴェルニー公爵が建てたもので、かつての王侯貴族の、伝統的な狩猟館の姿なのだそうだ。でもそれ、イメージ通り。

このお城には今も貴族のご夫妻がお住まいらしい(ネット情報で、シュヴェルニー公爵の末裔かどうかは不明)。私の大好きなドラマ「ダウントン・アビー」に出てくる、イギリスのハイクレア城と同じで、観光地として私たちの目を楽しませながらも、住居としての役割もいまだに全うしているのだ。

さらに、ベルギー漫画のタンタンシリーズに出てくる「ムーランサール城」は、ここシュヴェルニー城がモデルになっているそうだ!まったく知らなかった。

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お城の庭には昔の衣装を着た男女4名がいて、一緒に記念写真を撮ることができた。観光地ですね、ほんと。
私たちもせっかくだから、と、偽おじ様貴族と写真を撮ってもらったのだが、どれもこんな感じでピンボケ・・・。

フランスに貴族はいるのか?
お城の中は窓が大きくてとても明るい。ピンクとペールグリーンを基調にしたかわいいお部屋なんかは、ホテルのティールームのよう。ここだったら泊まってみたいが、残念ながらそのようなサービスは今もしていないようだ。

それにしても、このようなお城を維持するのは、大変なのではないだろうかと思う。イギリスには貴族が存在するけれど、あれ、フランスにはもう、貴族はいないのではなかっただろうか?このお城の現在の持ち主は、貴族なのだろうか?

イギリスでは産業革命、2回の世界大戦を経て斜陽の時代を迎え、城のような大邸宅を手放したりしながらも、貴族制度自体は残っている。
そういえば、フランス映画の中で、現代の描写でもフランス貴族が出てきたことをを思い出したので少し調べてみたら、フランスには「事実上」貴族が存在しているらしい(法的根拠はない)。

もちろん、貴族の末裔たちは多数いるだろうし、貴族の世界には興味があるので、今後色々調べてみようと思った。

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1日目のバスツアーでは、3つの違うタイプのお城を見ることができた。
一口に「お城」といっても、色々な種類があるものだ。時代、目的、城主の志向にもよるだろう。お城を見て、かつてここにいた人々に思いをはせるのも、なかなか楽しい。

さて、明日もまだ続くお城巡り。どんなお城に会えるだろうと思いつつ、眠りにつく。
Short trip ロワールお城巡り2へ続く・・・









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