「八木、あと10分で着くって」 左腕の腕時計をちらりと見ながら戸田は言う。 「高嶋さん、まじで美人だったよな、後にも先にもあれを越える美人はいない。」 「早弁して…
「次は、祐天寺〜、」 瞼が反射で開く。 大丈夫、今日は乗り過ごしていない。 ホームに到着する数分で、前髪を整え、口紅を塗り直す。 まつげがすこし下向き。 午前中…
「トウキョウの空は狭いから嫌い」 3年前の4月、私は当時好きだった男の子にそう話した。 空は狭くて、街が人で溢れ返っていて、 それなのに、なんか冷たくて、 嫌だった…
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2021年4月6日 01:12
「八木、あと10分で着くって」左腕の腕時計をちらりと見ながら戸田は言う。「高嶋さん、まじで美人だったよな、後にも先にもあれを越える美人はいない。」「早弁して昼に購買まで走るとか、今じゃ考えられないな」僕らには今の話はない。話題に上るのは、どうしようもないほど輝いていた、同じ時間軸にいた日々のこと。「八木はまだバンド続けてるんだっけ?」本人には、なんとなく聞けないから代わりに
2021年3月11日 23:30
「次は、祐天寺〜、」瞼が反射で開く。大丈夫、今日は乗り過ごしていない。ホームに到着する数分で、前髪を整え、口紅を塗り直す。まつげがすこし下向き。午前中は大学の講義を受けて、午後イチのゼミでのプレゼンも問題なく終了。夕方からは塾のアルバイト。アイシャドウのラメもだいぶ落ちてる。「右側のドアが開きます」すこし背筋を伸ばして、ホームに足をつける。この後の予定は、無い。
2021年3月1日 16:34
「トウキョウの空は狭いから嫌い」3年前の4月、私は当時好きだった男の子にそう話した。空は狭くて、街が人で溢れ返っていて、それなのに、なんか冷たくて、嫌だった。そんなトウキョウにもすっかり慣れた頃、また、別れはやってくる。高校生活最後の寄り道。隣にはいつもの2人、他愛の無い会話、大きな交差点、信号を待つ、空を見上げる、「またね…、元気でいてね!」3年目にして初めて口にす