大学生、22歳、春生まれ。 コーヒー、ラジオ、音楽。 好きな音楽にある余白をもとに…

大学生、22歳、春生まれ。 コーヒー、ラジオ、音楽。 好きな音楽にある余白をもとに 文章を書いています。

最近の記事

あの頃

「八木、あと10分で着くって」 左腕の腕時計をちらりと見ながら戸田は言う。 「高嶋さん、まじで美人だったよな、後にも先にもあれを越える美人はいない。」 「早弁して昼に購買まで走るとか、今じゃ考えられないな」 僕らには今の話はない。 話題に上るのは、どうしようもないほど輝いていた、同じ時間軸にいた日々のこと。 「八木はまだバンド続けてるんだっけ?」 本人には、なんとなく聞けないから代わりに戸田に聞く。 「おまたせーー!」 タイミング良く、八木が喫茶店のドアを開いた

    • 最寄り駅

      「次は、祐天寺〜、」 瞼が反射で開く。 大丈夫、今日は乗り過ごしていない。 ホームに到着する数分で、前髪を整え、口紅を塗り直す。 まつげがすこし下向き。 午前中は大学の講義を受けて、午後イチのゼミでのプレゼンも問題なく終了。夕方からは塾のアルバイト。 アイシャドウのラメもだいぶ落ちてる。 「右側のドアが開きます」 すこし背筋を伸ばして、ホームに足をつける。 この後の予定は、無い。 まっすぐ家に帰るだけだ。 エスカレーターをくだる。 私の視線は改札のその先。

      • トウキョウ

        「トウキョウの空は狭いから嫌い」 3年前の4月、私は当時好きだった男の子にそう話した。 空は狭くて、街が人で溢れ返っていて、 それなのに、なんか冷たくて、 嫌だった。 そんなトウキョウにもすっかり慣れた頃、 また、別れはやってくる。 高校生活最後の寄り道。 隣にはいつもの2人、他愛の無い会話、大きな交差点、信号を待つ、空を見上げる、 「またね…、元気でいてね!」 3年目にして初めて口にする言葉を友達と交わして、ひとり、電車に乗る。 いつもと変わらない電車の発進音。

      あの頃