見出し画像

2023年読書評26 シュロック(シャーロックではない)とウールリッチ

「シュロックホームズの迷推理」
ロバートLフィッシュ
再読
私は実はシュロックホームズのファンで、・・・間違えないでいただきたいのは「シャーロック」ではなく「シュロック」です。(シャーロックの方も大ファンだ。映画やドラマではなく小説の)
シュロックはホームズのパロディで昭和時代に、「冒険」「回想」が出ています。作者は映画「ブリット」の原作者で日本では無名です。
でも私は「冒険」が出た時に早速買い、ファンになったというわけです。
内容はバカバカしいコメディで、シュロックがとんでもない推理をしてとんでもない騒動を起こすというもの。
「冒険」12篇「回想」11篇で終わりかと思ったら、フィッシュは多少書いていたようで残り9篇あり、計32のシュロックものがあるわけです。
「迷推理」はずっと後に出たもので、一応その頃読んだのですが、久々に再読です。

本は9篇以外にも余計なものを足して、本を厚くして値段を上げ、売上を上げようという光文社のいつもの手ですが、私はこういうおざなりな編集が大嫌いで、
できるならすっきりとシュロックだけでまとめてもらいたかったです。
本書はシュロックものの既出を2つ加えてあります。

表紙も絵なのか写真なのか分らない魅力のないもので(よくよく見ると手描きのようですごいのですが)、早川のマンガチックなものは大好きなのですが、もっと表紙を魅力的なものにして欲しかったというのもあります。

出版不況なのに、(この本はちょっと前だけれど)編集者にセンスが無さすぎます。
本はアートです。
詰め込めばいいというものでもなく、適当な表紙でいいわけでもありません。

タイトルも「迷推理」ではなく、「シュロックホームズの復活」あたりでよかったのではと思いますが。

冒頭の二編が既出のもので、後の「ハーメルンの笛吹き」までの九篇が新作。
この作品、なんとなくユーモラスな書き方で、ついにんまりしてしまいますが、英語のギャグなので意味が分からないことも多く、丁寧に読まなければならないので、気楽に読めるものでもありません。


「金田一幸助の帰還」
横溝正史の初期短編集。
私は以前、「夜の黒豹」の原型となっている「青蜥蜴」を読みたいために「新冒険」を読んだのだけれど、横溝はしばしば自らの短編を長編に書き直したりしている。私は冗漫になってしまった長編より、ものにもよるだろうが短編の方がすっきりしていて良いと思うのです。
本書収録では解説によると「渦の中の女」は「白と黒」の原型だという。
私は「白と黒」は面白くなくて途中挫折しました。そこで短編を読んでみようというわけです。
結果、やはりあまり面白くない。長編に伸ばすような話ではないなという感じです。


「恐怖の冥路」
コーネルウールリッチ
再読
ブラックシリーズ。原題はBlack path of fear で直訳すると「恐怖の黒い小道」。
やはり翻訳題に「黒」とついていないのがいただけない。邦題を尊重するなら
「恐怖の黒い迷路」辺りがいいのではないか。
物語はこれまでのブラックシリーズにあるように淡々と復讐をするものではなく
:ギャングの情婦と恋仲になった男、キューバまで逃れてくる。しかしほどなく恋人は殺され男が容疑者にされる。それを助けたのは地元の落ちぶれた女。容疑を晴らすために行動する男。
というもの。

物語が一貫しており、主人公も定まっているので読みやすいといえば読みやすい。しかし、男が逃げ、自分の容疑を晴らすために町で観光客相手に写真を撮っていた写真屋がいたことなどを思い出すまでに小説の半分。
かなり冗漫でスピーディーではないということです。
ウールリッチの長編の多くはこんな感じなのです。やはり彼は短編に優れた作家といえそうです。
でも長編も雰囲気があって、味はあります。
彼は元々フィッツジェラルドなどの作家を目指していたので、意図してかどうかわかりませんが長編は文学的になっているのです。

本作は数十年前に一回読んだきりですが、なんとなく覚えている場面もあります。
暗闇の中にたたずむキューバ女性とか、サルのナイフとか。
全く忘れている小説もある中では印象的な作品なのかも知れません。


ココナラ
姓名判断とタロットを組み合わせて3500円

ホームページからのご応募 姓名判断3000円


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?