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2022年読書評16 都筑道夫とフロスト

「都筑道夫名探偵全集2」

都筑道夫のシリーズキャラクターから抜粋した短編集。
私はもちろん彼の本のほとんどを(全てではない)を読んでいますから、この本も読んでいますが、違うエディションだと違う印象では、と思い読んでみました。

登場人物たちは

近藤庸三
コミカルアクション小説のキャラクター。日本人を娯楽小説の主人公にできるのは都筑道夫くらいだろう。

片岡直次郎
私は彼は好きなキャラ。単独の主人公であり、物部太郎ものではアシスタントになっている。

クォートギャロン
エドマクベインの小説を公的に引き継いだ主人公。
どちらかというとあまり好みではないかな。

仁礼達也
この人は短編が3つくらいしかない。私も忘れていた。解説では都筑さんも忘れていたそう。
酒を飲むとやたらと強くなるという探偵。

雪崩連太郎
このキャラは好きだ。しかし作者も言っているが、名前が時代的で、仰々しい。もっとすっきりした名にした方がよかった。

鶴木六輔
この人は探偵事務所のアシスタントだが、私は主人公だと思う。探偵が解かずに彼が解くという設定であるし、都筑先生の分身のようだからだ。

星野刑事
小説として面白いが、殺人癖があるというとんでもない設定。
殺人が好きというとんでもない設定をないものとするなら、アクション小説として出来が良いと言える。

闇を食う男
都筑小説を通して、嫌いなキャラ。この本を書店で見つけた時、いつもは新刊は平積みになっているのに棚にひっそりと置かれているなと思って、帰って読むと、
・・・一定数の人を殺さないと自分が死ねない呪いを受けた男の話で、やたらと罪のない人を殺すので、全く馴染めない、好きになれないキャラであり、唯一と言っていいこの作家の中では嫌いな本。

西蓮寺剛
ハードボイルド私立探偵もの。シリーズが5冊くらいあるが、私はこのシリーズ、読みにくくてあまり評価していません。

久米五郎
これも私立探偵もの。西蓮寺より年寄り。やはり淡々とした探偵もので、読みにくく感じます。

田辺素直
ホテル内に限って事件を操作するホテルに雇われた探偵。
この作品はホテルという狭い設定がさらに読みにくさを感じさせる。しかしシリーズは4,5冊でている。
これ、ドラマ化されており、田辺誠一が演じていました。ある年の1月1日に放送していて驚きました。ドラマ化されていることを知らなかったから。
ドラマの出来は今一。というか原作からしてドラマ化するような話ではない。
他にあるはずですが、現代人は原作を探すのが下手ですね。総体的に本を読まなくなったからマンガばかりを題材にするのでしょう。

さて、このアンソロジーですが
一応、楽しめる本ではあると思います。
しかし後半の地味な探偵たちは、私の好みではなく、ユーモアがあり、明るい探偵の方が好みです。


「フロスト気質」上下

ウイングフィールド作。シリーズ4作目。
今回はでだしからあまり面白くありません。ちょっと真面目な感じで、フロストのダメさ、ジョークがあまり登場しません。事件も猟奇的なもので、あまり読んでいて快いものではありません。
ただ、フロストがちょっとやさしくなっているのが良い感じです。

物語は:
休暇中のフロスト、署長の煙草を留守中にせしめようと署に立ち寄ったところ、休暇中なのに援助を頼まれる。そのまま捜査に加わることに。
少年の無残な死体、行方不明の少年、署内の人間模様。全裸で保護される少女、しかし親が仕組んだ保険目的の芝居か、などなど事件が交錯する。

今回はどうも、ユーモア小説ではなくて普通の警察小説に成り下がっているような気がします。
上巻は平凡であまり面白くない印象。後半は犯人が分かって行くので面白みはあります。

物語は1980年から90年頃の話で、登場人物はやたらと煙草を吸います。そして舞台がイギリスなのでアメリカなどでは重大事件として扱わないような事件も解決しようとします。
そしてイギリス警察の特徴か、警官が銃を携帯しない。
そのような舞台背景も興味深く読めますが。

この小説は文体やフロストのキャラクターが面白いので読書に耐えますが、ドラマ化したら平凡な警察ドラマになってしまいます。つまり、筋は平凡ということです。

警部のキャラクターは特徴的で、コロンボのようにきたないレインコートを着て、臙脂のマフラーをいつもしている。フロストが創造されたのが1972年といいますから、コロンボが創作された時期(1968)と似ています。作者はコロンボを意識していなかったと私は思います。
コロンボと違うのはコロンボは礼儀正しい。フロストの方は、コロンボより汚く、口も悪い。

しかし思ったのですが、私はこのフロスト、いやな上司ではないなと思いました。
この物語に出てくるサイドの人物たちは嫌な人間が多いですが、フロストはだらしないけれど、人間的には決して嫌味ではないのです。部下をこきつかうけれど、威圧的な態度を取らないし、責めたりしません。

きっとこのような人物が身近にいたら好きになるだろうという性格をしています。
読者諸氏もきっとそれを感じとっているのでしょう。だから人気ある作品になっているのだと思います。

全20章から成ります。1日1章読んで、20日で読了という感じ。
ひまつぶしにはお勧めします。




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