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2023年読書評25 ウールリッチ、ブラックシリーズとオランダすてれん

「黒い天使」
コーネルウールリッチ
読みたい本がないので、古い本を引っ張り出すことに。
先に「黒衣の花嫁」を読みかえしたので、ウールリッチの読み直し。
これはかつて一回だけ読んだ作品。エッセーで都筑道夫が褒めていたので。
ウールリッチはブラックシリーズというのを書いていてタイトルに「黒」がつきます。これは彼の5作目。

夫が殺人容疑をかけられ、死刑までのタイムリミットがある。夫の容疑を晴らそうと動く妻の活躍を描く。
夫がこっそりつきあっていた踊り子の女に会いに行く妻。しかし女は殺されていた。夫に容疑がかかるとから証拠の手帳を無意識に盗んで行くが、案の定、夫は逮捕される。夫の無実を信じる妻は手帳の名簿を手掛かりに4人の男を探す。
一人目は踊り子の元夫、現在ホームレスになっている。
二人目は医師、どうやら裏稼業をやっているようで女はその罠に自らを投じる。
三人目は~どういう男か良く分からないが陽気な男。主人公に好意を寄せる。
ここで刑事からの発案で、彼の言動を録音することに。
四人目は娯楽場を経営するマフィアのような男。
女は各場面で危険に遭い、殺されそうになる。しかし、果たして踊り子を殺したのは本当は誰か。

という物語。

無実を晴らすという話は「幻の女」と酷似しているし、タイムリミットも。
一人一人、容疑者を当たるというのは「黒衣の花嫁」に似ています。
同じ作者は、作品が似てしまうということなのでしょう。
音楽も、作り手に癖がどうしても出てしまいます。
その他
「喪服のランデブー」も同じような趣向。

小説としては、~やはり彼は短編作家と言える人で、短編が優れている。長編は「幻の女」が評価されているくらいで、他はあまり評価されていない。私は「暁の死線」など長編も好きだが。
本作は、短編を長編に引き伸ばしたもので、そのためか冗漫な感じがしました。つまり、ちょっとダレるというか、サスペンス味に欠けるという感じです。

ラストでスピードが出てきますが、ずっとのらりくらり、そんな感じの小説です。
ただ、見方を変えるなら彼の作品は、雰囲気小説とも言えるもので、甘く暗い情景を楽しむという感じです。


「阿蘭陀すてれん」
都筑道夫
不思議短編小説集。というかショートショート。初期のもの。

すてれんというのはゲームの名前であまり意味はありません。
わたくし的には、古いということもあり、SF、ホラー、というのが中途半端な感じもします。
著者は「人形の家」とか「かくれんぼ」が気に入っていたようですが、私は他のノスタルジックなものの方が好みです。


「喪服のランデブー」
コーネルウールリッチ。
長編11作目。
原題は「ランデブー・イン・ブラック」。「黒のランデブー」といったところ。邦題の「喪服のランデブー」は個人的には好きではないなあ。

恋人が路上に落された瓶によって殺される。その時上空を飛行機が飛んでいた。男はその航空会社を調べその時搭乗していた者らを調べる。そしてその男ら、ではなく、妻らを殺すことで同じ目に遭わせてやろう、というもの。

どうやら不愉快な話だなと、途中断念、・・・と言っても数十年前に一回読んでいるのだが。
そして数か月後に再開。

これもブラックシリーズによくあるパターン。
復讐者が一人一人当たって行くというもの。

復讐の対象者は5人。それぞれが章になっており、それぞれが短編小説のようになっている。
言い換えるなら、各章、主観となる人が違うのです。つまり、長編小説として一貫して一人の目線で描かれるのではなく、章ごとに違う目線で描かれるわけです。
その点、私は煩わしくて好みではありません。
それゆえか、本作の評価もあまり高くないようです。
「幻の女」はその意外性もあるけれど、主人公の男性から途中で友人目線に変わるけれど、ほとんどその目線で描かれるためか、読みにくいということはないようです。
「黒衣の花嫁」も主人公の女性目線で常に描かれます。
しかし本作はバラバラでその点が読みにくい。

しかも復讐者は該当する5人を殺すのではなく、該当者の愛する者を殺すことで復讐とするのです。
一人目は、殺された女に関して捜査する刑事目線。
二人目は対象男性の妻ではなく、愛人を殺すことで、男を誤認逮捕させる。
三人目は徴兵される男。妻が殺されるのではなく、妻を誘惑することで徴兵先の男を兆発する。
四人目は対象者の娘? その女に接近し、親しくなり・・・。
五人目は・・・刑事が対象者をつきとめ、対象者の男性の最も愛する者を探す。妻とは限らない。
対象者はかつて愛した女性と理由あって一緒にならなかったが、その女性を今も愛していて犯人から逃れるべく逃避行する。


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