本当の活躍とは⁇ 人生面白がる事
自殺?自ら命を絶った?
朝のヨガが終わり、片付けをしていたら、入ってきたこのニュース。まさかっ!と思わず耳を疑った。
芸能人ではここ最近もあったはずなのに…。活躍中の方が何故、自ら命を絶ったのか。容姿端麗で演技力があり、みんなから好かれ人気がある人。仕事もプライベートも充実そのもののように思えた人たちだったのに。私たちが見る画面越しでは、到底わかることのない、死にたいぐらいの世界を生きていたのだろうか。そのことを想像してみると、悲しく暗い気持ちになった。
辛くて長い、最後の夜をどうしても越えられなかったのだと思う。
生きていると辛いことも増えていく。抱えきれない出来事がどこからともなく襲い掛かってきては、もう自分ではどうすることも出来ないところに追い込まれてしまう。
1週間前のこと、夜ヨガクラスが終わって、帰る準備をしていてら、外のベンチに人影がある。「ウワッびっくり」と私は思わず声をあげてしまった。すると、「すみません、突然。実はちょと聞きたいことがありまして」とそのマスクの女性は言った。1〜2回、私のヨガを受けたことがあると言ったが、マスクをしていたので、私はよく思い出せなかった。教室の中へ入ってもらい話をしたら、温熱療法のことを教えてほしい、と言った。8年も前のことになるが、私は右乳房にがんが見つかり、ガンに効く効果的な療法だということで、温熱療法を受けていた。体温の低いことはガンにとって良くないと聞いたからだった。
「もしかして、癌?乳癌なの?」と思い切って聞いてみた。「私ではないんですが…」といい、マスクの向こうの顔がひくひくと動いた。「ごめんなさい」と彼女は溢れ出た涙を拭った。「仕事場の上司なんです。10年の間毎日顔を合わせお世話になってる方なんです。どうにかしてあげたいんです。見る見る痩せ細っているんですが、明るく前向きで元気なんです。でも、その明るさが私は辛いんです」
上司の方から、癌(レベル4)だと聞かされたのが、1ヶ月前だという。寝ても覚めても、その事だけを考えていて、今夜も気になり眠れなくて、こちらへ来てしまいました。ということだ。今、彼女は自分ではどうすることもできない出来事の中にいる。かけがえのない大切な人との別れ(死)が迫ってきていることに怯えているのだ。死や別れを思うとき、人間は孤独という奈落の底に追い詰められる。少なくとも、私自身も身をもって経験した。しかし、私には正しい答えも、気の利いた言葉も持っていなかった…。
でも、自分自身が体験した事実があった。それは、孤独という辛い精神状態に、うっすらと光が差しかかった程度の、それぐらいの自らの体験なのだけど、私の心はだいぶ楽になったのだった。温熱療法が正しいとか効果があったとか、今でもわからないのだけれど、私は、マスクの彼女が、今夜、ただぐっすりと眠れることだけを祈って、自分の話を続けたのだ。
巷で活躍してる人もそうでない人にも、生きていると想定外のことが起こりうる。その事だけは、皆平等なのだと思った。そして、いつか死を迎えることも…。
10年の間、癌の闘病生活と作品作りの両輪をこなしてきた、樹木希林のスピーチは、いまでも心に残っている。言葉には、その人の魂が宿っているのだろうか?そう思わずにはいられない心を打つ言葉たち。
『がんっていうのはある意味素晴らしいもので、死ぬことに向き合わされるんです。大事な大事な命をいただいたということをしみじみと感じ、自分のことを自分でよく見極める、考え直すチャンスにしていただければ…』
『すごい病気になると、すごく面白いことが日常にあります。ですから、楽しんで面白がって。それで自分をよく見て、笑えるような私たちになっていきたいと思います』
自然体で自分らしくのびのび生きた人は、美しい。これが本当の活躍というものだと思った。
そして、不意に現れたマスクの彼女。私には彼女のピュアな心がとても素敵だと思った。自分や家族以外の大切な人を想って、眠れない夜を過ごしていたという、まっさらな彼女の心に惹かれてしまった。
面白がって、平気に生きることなど、出来ない夜がある。しかし、どうにかこうにかその夜を越えてほしい。するとそこに違う日常が顔を出すだろうから。
温熱療法を受けていた頃、たっぷり汗をかいた施術後に出された酵素ドリンクの味が今でも忘れられない。渇いた喉を潤すようにゴクゴク飲んだ。そして、酵素菌が癌を退治してくれてるようなイメージと同時に心の栄養にもなった。それからもう一つの心の栄養は、施術をしてくれた知念さんの豪快な笑い声だった。旦那の悪口を言っているのだけど面白い。けっして無理して笑わせているわけでもない。あの人もまた、自分の人生を面白がっていたのだ。
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