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カーテンの向こうで揺れる光

季節が変わる。季節が変わった。
その境目はいつだって曖昧で、グラデーションのように緩やかで、少しずつ氷を溶かすように染み渡っていく。夜が朝になるように、人が大人になるように、誰にも定義できない概念がある。

冬が春になることを僕は昔から何故だか嬉しく思う。夜が終わり朝になる、カーテンから光が溢れてくる瞬間をあれほどに憎んでいたはずなのに。皮膚に差す陽の光の暖かさを感じるたびに心が軽くなるような、深い呼吸ができるような"歓び"と表したくなるような感覚を僕はどこまでも愛おしく感じている。


新しく花が咲き、生命のサイクルが巡りだす。同じ地に住む生き物たちが新しく呼吸をし始める。そんな匂いを春の空気から感じる。暖かくエネルギーに満ちた春の空気を胸いっぱい吸い込むと生きていると実感する。そんな時に僕は人間である以前にどこまでも生命体で、この地球に生まれてきた意味を感じるのだ。

僕は世界中の人に教えてあげたい。人が作り上げたクリスマスというものではなく、季節の愛おしさを。植物の匂い、花の匂い、陽の柔らかさ、春を運んでくる風の肌触り、空の青さ、深く呼吸をした時の胸の和らぎ。この僕が感じた歓びをどうにか世界中の人、隅々まで手渡しで届けることはできないものか。今日はそんなことをずっと考えていた。

僕を含めた彼や彼女のこと、明日の夜のこと、今年の夏のこと、ワクワクしながら話せるように。
自分の無力さに打ち拉がれないように愛しさを重ね合って、明日のカーテンを開こう。

春が来た。

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