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≪コラム≫ 在職1日で文通費100万円満額支給問題

さきごろ10月31日投開票の衆院選で当選された新人議員に対し、10月分として100万円の文書通信交通滞在費(文通費)が満額振り込まれた事が社会問題化しています。

同日20:00の当選からの僅か4時間の任期に対する支給で、領収書等も不要、非課税扱いとのことです。

我々が顧問先様から賃金制度の設計・運用業務を受託させて頂いた場合には、最終的に1つ1つの賃金項目を文書(賃金規程)にて定義付けする必要がありますが、算定対象期間中に不就労日・不就労時間が発生した際の取扱いについては、各賃金項目の支払いの趣旨・目的等に基づいて顧問先様との十分な議論を経て以下のように予め明確に定めておきます。

1) 満額支給すべきか
2) 日割り計算すべきか(月平均労働日数分の実出勤日数 等)
3) 他に基準を設けるか(実出勤日数が10日以上であれば満額支給、そうで無い場合は日割り計算や不支給 等)
4) 不支給とすべきか

例えば定額残業代(時間外手当の●時間分相当)の支給を受けている者が、育児のための所定時間外労働の免除や制限を希望し適用を受ける場合には、定額残業代の適用を一時解除して、残業1分からの実残業支給方式に切り替えるよう予めルール化しておきます。(定額残業代の場合には●時間を超えてから追加支給)

役職手当が支給されている場合には、所定時間外労働の免除の適用を受けたとしても役職者としての職責を果たせるものと判断できればそのまま満額支給とすることもありますし、業務の性質上明らかに困難という事であれば、一時的な役割や職責の軽減を講じた上で一時解除(もしくは一時解除した上で、激変緩和措置として一部を調整給として支給)することもあります。

途中入社や途中退社、給与計算期間途中の長期休職の開始・復帰の場合は基本的には全ての賃金項目を日割り対象とします。

これらの判断基準は、「第三者に対して合理的に説明できるか?」であり、もっと言えば「常識」です。

賃金とは別に出張等の経費精算の場合は、「出張旅費規程」にその手続きを定めますが、支給の可否は、当然、根拠となる証憑が附されているかどうか・・・です。

証憑なき支給であれば税務上、見做し賃金とされる事もありますし、その場合は当然に課税対象とされます。
即ち、証憑の提出がなければ原則不支給となります。

今回の国会議員の文通費支給基準は、常識に照らし合わせれば2重に首を傾げざるを得ません。

当たり前の話ですが、立法府が議員に一律に適用されるルールを策定・変更する場合には国民に合理的に説明できるかを基準とすべきですし、今回のように野党のチェック機能が上手く働くとは限らないので、メディアや国民はこれを継続的に監視していく必要があるのではないでしょうか。

〔三浦 裕樹〕

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


≪社会保険労務士法人 淀川労務協会≫ 



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