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コロナ禍で急増する身勝手な労務トラブル


労務相談は世相を表します。

私どもの顧問先企業様からのご相談もコロナ禍前後ではその内容や質が大きく変わってきており、特に非正規労働者でそれが顕著です。

一例をお示しさせて頂きます。
(※会社や個人の特定に繋がらないよう内容を一部調整しています)


非正規労働者Aさんは2箇月の有期労働契約の更新制(契約更新の可能性有)にて就労されていました。

雇用期間は2020年2月1日から3月末日迄だったのですが2月末にAさんから会社に次のような連絡がありました。

「今日、家族が事故で大怪我を負いました。当面は私が看護しなければならなくなり明日から働けなくなりました。申し訳ないです。」(※Aさんは介護休業等の要件を満たさない労働者)

法律上、退職の申し入れは退職日の14日前までに行う必要があり突然の申し出に代替要員も確保できず会社は困惑したのですが事情が事情なので特別に申出日での自己都合退職として取扱い、雇用保険、社会保険等の手続きを行うこととしました。
Aさんは気が動転されている様子だったので配慮し退職届も取得しませんでした。

そのまま何事もなかったのですが6月に入りAさんから次のように連絡がありました。

「私は2月末日付で貴社に辞めさせられました。労働基準監督署に相談したところ即時解雇の場合は平均賃金30日分の解雇予告手当の支払いが必要と説明されました。雇用保険や社会保険の資格喪失日の証拠もあります。支払って頂けない場合には法的措置をとります。」

会社はこう答えました。

「当時、明日からご家族の看護のために働けなくなったとご連絡頂いたじゃないですか?」

Aさんはこう返しました。

「確かに当面は働けないとは連絡しましたが私は辞めるとはひとことも言っていません。日付も特定していません。私の意思に反して会社の判断で退職として取扱うと解雇にあたると労基署に確認しました。」

対応に困った顧問先企業様からご相談があり次の要旨を記した書面にて回答を行うこととしました。

貴方のご意思に反し錯誤によって当社が手続きを行ってしまったという事であれば退職日の変更には応じさせて頂きます。「明日から働けない」と申出があった日から14日経過日での自己都合退職か、雇用契約期間の満了日である3月末日のいずれかご希望の日付をご選択ください。
雇用契約期間満了日まで貴殿に就労の事実はなく、出勤の意思すら示されなかった訳ですからご退職日までは私事欠勤扱いになります。(契約満了日までの出勤予定表は明示済。有期契約労働者に適用される休職制度はない)
退職日のご変更に伴い生ずる社会保険料本人負担額はご請求させて頂きます。

その後、会社が主張する退職日変更には応じられずあくまで解雇であるとしてAさんより紛争調整委員会へのあっせん申立がなされました。(※解雇予告手当に精神的苦痛による慰謝料を含め要求額は100万円)

顧問先様は一切金銭を支払う意思はないとの事であっせんでは折り合わないと判断。
会社は当時、Aさんの雇用の継続を前提とした対応をされていたので、万一、民事裁判に発展したとしても労働者側が使用者側の解雇の動機を説明する事が困難である等、その経緯を鑑みれば有利に争えるであろうと考えあっせん不参加としました。

以上になります。

5月から6月にかけてコロナ禍による経済苦が原因と思われる労務トラブルのご相談が明らかに増加しています。

特に雇用関係の解消の場面では丁寧且つ慎重な対応が求められるでしょう。


y.miura

© 2020 Yodogawa Labor Management Society

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