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≪コラム≫ 減給の制裁は人権侵害?

少し驚いた相談事例がありましたのでご紹介させて頂きます。

RBA(Responsible Business Alliance)行動規範とは、電子機器業界中心に、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷に対する責任を促進するために示した基準であり、2004年にHP, IBM, DELLなどが中心となって作成したEICC (Electronics Industry Code of Conduct)が業界の枠を広げるために改称し制定されたものです。

近年、サプライヤーに対してRBA行動規範を遵守することを求める企業が増えており、この度、顧問先様が、RBAに加盟するメーカーからこの監査を受け、懲戒処分における「減給の制裁」は人権侵害であるからこれを削除しない限り取引は継続できないと指摘されたとの事でした。

1.譴責/戒告/訓戒
2.減給
3.出勤停止
4.降職/降格
5.諭旨退職/諭旨解雇
6.懲戒解雇

上記は、我が国一般的な懲戒処分の程度であり、1.が一番軽く、6.が一番厳しい処分になります。
2.の減給の制裁は、懲戒処分としては二番目に軽いものであるにも関わらず、なぜこれが人権侵害として取り上げられたのでしょうか。

おそらく・・・

1.注意、指導の範囲
3.ノーワークノーペイ(現に働いていないのであれば賃金を支払わない)には合理性がある)
4.職位や職階を引き下げたのであれば、それに合わせた賃金に変える事に合理性はある
5.雇用関係が解消され現に働いていないのであれば、「3」と同様に賃金を支払わない事には合理性がある。
6.「5」と同じ

である一方・・・

2.現に働いたにも関わらず、罰としてその対価である賃金を減らす事は人間の尊厳に基づく固有の権利を侵害するものだ。

という事なのでしょうか。

(制裁規定の制限)
就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。

労働基準法第91条

ご承知の通り、減給の制裁制度は、我が国では労働基準法第91条により認められています。

一方、ILO(国際労働機関)では次のように示されています。

Q 懲戒処分としての賃金控除に関する国際労働基準はありますか?
A ありません。ただ、多くの国で賃金控除による懲戒処分が公式に禁止されているとの指摘があります。また、そのような減給方式の懲戒処分が許されている国の中でも、労働者保護のために制限が設けられている国があります。

ILOヘルプデスク「賃金、給付に関するQ&A」 Q7


経済がグローバル化する中で国際的な影響を受ける事はある程度やむを得ない事なのかもしれませんが、メーカーがサプライヤーに対し、労働契約法第一条に基づく労使自治の原則を軽んじて、労働基準法に基づく合法的な制裁システム(人事権)に実態として過剰介入するのは、行き過ぎではないかと思料します。

三浦 裕樹/MIURA,Yūki

Ⓒ Yodogawa Labor Management Society


社会保険労務士法人 淀川労務協会



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