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偶然再会した『淡い恋の想い出』

誰しもが小説やドラマの様な淡い恋をしたことがあると思う。もしかして、今している人もいるかもしれない、いやたくさんいるだろう。そして、恋愛ってものはタイミングがとても大事だったりする。

『あの時告白していれば』
『もっと素直になっていれば』
『違う言い方をしていれば』

そんな後悔や懐かしさと共に浮かぶ想い出は、30代後半にさしかかってこじらせてしまっている僕にも当然あるのだ。

そして今日!!!そんな淡い恋の相手と偶然再会してしまったのだ。
もし今、胸が熱くなる淡い恋をしている人がいたら、読んでみて欲しい。ボタンの掛け違いでうまくいかなくなることもあるのだ。



蒸し暑い中歩き回った出張からの帰りの新幹線の中、汗をたくさんかいてしまったから、におっていたら嫌だなぁとシャツをパタパタしていると、

「あの、間違っていたらすいません。よーすさん、ですか?」

と声を掛けられたので、そちらに顔をむけると、申し訳なさそうにこちらを見る女性の姿。

「え?はい、そうですけど、、、」
「やっぱり。私です。さえ(仮名)です。高校の後輩の!」
「え!?さえちゃん?テニス部だった!!?」
「そうです。お久しぶりです」

彼女は高校の後輩だったけど、高校の時はあまり接点がなくて、僕が大学2年の時に、高校の友人主催の合コンで再開した。
とても可愛い子で、高校の中でも人気のあった子だったから、当然こっちは知っていたし、ちょっと気になっていたりもした。

そんな合コンから仲良くなって、毎日のように連絡を取るようになっていた。ある時、彼女の家の近くで、2日連続部活の試合があったから、何気なく、

「泊まりに行っていい?」

と聞くと、「いいですよ!」と簡単に返って来た。どういう感情だったのかハッキリとは思い出せないのだけれども、エロいことは全く考えてなく、遠くから通わなくていいし、なにより単純にたくさんの時間一緒にいられることが楽しみで仕方なかった。

きっと好きだったんだと思うけど、純粋だったんだろう。

そして、泊まりにいって2人で横に肩と肩を寄せあいながら、アルバムをみたり高校の時の話をしたりしていた。すぐ横に彼女の顔があったけどドキドキよりもなぜかとても穏やかで幸せな気持ちだった気がする。
そして、そろそろ寝ようかという話になり、2人で一緒のベットで寝たのだけれども、セックスどころかキスもしなかったし、手も繋がなかった。

その後も何度か遊んだりしたけど、一度も手すら繋がなかった。

そうしているうちに、お互い部活や学校が忙しくなって、疎遠になっていった。卒業してから、元気にしているかな?とふと思い、連絡を取ろうとしてみたが、メールアドレスも電話番号も変わっていて連絡を取ることができなかった。当時はラインなんかなく、メールと番号での連絡で、携帯を変える時に新規で変えることも多くあったので、その連絡ミスがあるとそれっきりになるのだ。

それからも、1年に数回はふと思い出して、mixiやフェイスブックとか名前ないかなと検索してみたりもしたけど、見つけることができなかった。

それが、今日奇跡的に出会ったのだ。

隣が空いていたから「ここ座れば?」と勧めて、「いいんですか?じゃあ荷物もってきます!」と、とても可愛い笑顔を振りまきながら颯爽とかけていく後姿を見ながら、あの時あの子はどう思っていたのかな?と、当時のことを想い出していた。

「お待たせしました!」

多分10秒くらいで戻ってきたから、同じ車両にいたんだな、とよく気が付いてくれたなーと思いながら、座るように勧めて話をし始めた。

久しぶりですね、元気でしたか?
今日はこういうことあってー!
実家帰ってますか?
こういう関係の仕事しててー

という他愛のない話で盛り上がってきたから、ちょっと踏み出して当時の話を聞いてみた。

「あぁ。。。私も気になっていたんですよ」

と話をしてくれた。

実は高校の時から俺が気になっていたこと。
モヤモヤした毎日が嫌でお願いして合コンに俺を呼んでもらったこと。
会って「好きだ」って確信したこと。

「えぇ!?そうだったの!?」
「じゃないと家に泊めませんよ」

笑いながらそう答えて、続けて

「なんで手出さなかったんですか?」

その質問にドキッとしたけど、正直に自分も多分好きだったこと、けどそれ以上に大切にしたくて一緒にいれることが幸せだって思っていたんだと思うと伝えた。

「そうですかぁ。じゃあ両想いだったんですね。」
「そうだね。俺実は卒業してから何回か連絡取ろうとしたんだけど、連絡先変わってて取れなかったんだよね。」
「え?」
「で、実はね。mixiとかさTwitterとかフェイスブックとかで名前検索しちゃたりしてたんだぁ。気持ち悪いよねぇぇぇ」
「いや、私も連絡取ろうとしたけど取れなかったですよ!変更教えてもらえなかったんだって傷ついていたの覚えてますもん!だし、実は私もSNSチェックしてました。。。けど連絡取りたくないのかなって出来なかったです」


ええぇぇ!!?そんなことあるぅぅう!!!?

って絶叫しそうなのをぐっと堪えて「こんなことあるんだねぇ」と気持ちの100分の1くらいの声量で伝えた。

そんな時、品川駅に着くアナウンスが流れて、ちょっと沈黙が流れてなんとも言えない雰囲気の時に

「私、品川で降りますけど、よーすさんは?」
「俺、東京だわ」
「そっか。タイミング合わないですね」
「だねぇ」

とお互い笑いながら「じゃあ。」と言って歩いていく後姿を見送りながら、両想いだったかぁと、当時のことを思い出していた。

お互い連絡先も今どのへんで働いているのかも、どこにいるのかも聞かなかったし、言わなかった。なんとなくそれが正解な気がした。

窓の外を歩く彼女は笑顔で軽く会釈をしてくれ、僕は軽く手を振った。

なんとなく「多分もう会わないんだろうな」と切ない気持ちになるかと思ったけど、彼女のボディークリームの良い香りが残っていて、俺汗臭くなかったかなぁ、、、なんてつまらないことを考えて東京駅につくのをまっていた。


一部もってるところあります!どこかはご想像に!

イラスト利用させてもらいました。
https://note.com/studio_hideka

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