見出し画像

現金?キャッシュレス?地域循環とキャッシュレス活用の課題

都会ではキャッシュレスが進んでいますが、地域に行くと現金での支払いが多いと思います。

利用者からすると、便利で、ポイントも貯まるキャッシュレスが嬉しいですが、地域経済の視点、特に地域循環から見るとどのように考えるべきなのでしょうか?

個人的には、現金もしっかり活用した方が良いと思っています。その理由について解説してみたいと思います。



キャッシュレスの普及状況

まず、キャッシュレスがどれくらい普及しているか見てみましょう。以下から引用させていただきます。

https://www.meti.go.jp/press/2023/03/20240329006/20240329006.html

2023年には全体の40%がキャッシュレスでの決済になっているようです。クレジットカードが大半を占めています。2025年までに4割程度、という目標も達成されているのですね。

内訳を見てみると、クレジットカードが圧倒的に多く、しっかり年10%程度増加しています。

電子マネーは比較的横ばい。

コード決済は、額は少ないですが、年30%程度の伸び率です。


事業者の課題

こんな便利なキャッシュレスですが、なぜ地域ではあまり活用されないのでしょうか?経済産業省が出しているキャッシュレスの調査資料を見てみましょう。こちらから引用させていただきます。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/cashless_documents/index.html


事業者への訴求ポイント

レジ対応や現金管理(盗難含め)、データ利活用での訴求をされているようです。確かにそれぞれメリットはあると思います。

そもそも個人経営のお店では現金商売が中心で、帳簿がつけられていない=納税額が正しいかわからない、というのも国税庁の本音、という気はします。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/image_pdf_movie/leaflet_tenpo.pdf

キャッシュレス導入の成功事例

キャッシュレスを活用することで、データの分析、現金作業の手間の削減などさまざまなメリットがあります。

特に事業を伸ばしていきたい、という事業者にとっては、決済手数料や導入コストを払ってでも使いたい、と思うのでしょう。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/cashless_sub/cases_for_business.pdf

キャッシュレス導入はなぜ進まない?

そんな中でなぜキャッシュレス導入は進まないのでしょうか?
様々な課題があるようです。

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/cashless_sub/report1.pdf

主に事業者側の課題は2点で、

  • 手数料が高い(3%強)

  • 入金サイクルが遅い(キャッシュフローの問題)

があるようです。

以下の資料に詳しく書かれています

https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/cashless/cashless_sub/questionnaire_result.pdf


キャッシュレスの3%の手数料が経営に及ぼす影響

先ほどあったキャッシュレスの3%程度の手数料がどれくらい経営に影響を及ぼすか検討してみましょう。特に地域で身近な業種として飲食業を例に考えてみます。

飲食店の経営状況

まず小規模飲食店がどれくらいの経常利益(ほぼ営業利益と同じと考えて良い)を出しているか見てましょう。

TKC経営指標(BAST)を参照してみます。以下から引用させていただきます。

飲食業は経常利益率があまり高くないです。旅館・ホテルは少し違いますが、そば・うどん店で8.7%、ラーメン店は、4.9%です。

つまり、売上のうち、数%しか利益として残らないということです。

そば・うどん店の事例をもとに、もしこのお店が完全キャッシュレスで、売上の3%を手数料として支払っているとするとどうなるでしょうか?

完全キャッシュレスのそば・うどん店の損益計算書

もし、キャッシュレス手数料がなければ、12%の経常利益ですから、計上利益の1/4がキャッシュレス手数料ということになります。

これは店舗経営者としては見逃せない金額だと思います。もちろん、キャッシュレスによって業務効率化や集客ができる、という面もあるので一概には言えませんが。


地域のお店でキャッシュレスは必要か?

もし地域のお店で、どんどん成長したい、キャッシュレスによって、データを使って、顧客の利便性も上げて、というお店にはフィットすると思います。特に繁盛店であれば、現金管理コストも大変ですし、多店舗経営をしている飲食店では活用の余地があると思います。

一方、そこまで顧客も多くなく、地元で細々とやっている店ではあまりメリットはないと思います。

経営改善というより持続的に商売を続けたい、というスタンスの店舗では、3%の支払いをしてまで、キャッシュレスに変更する意味はないでしょう。


地域循環とキャッシュレスによる流出

もう一つの観点として、キャッシュレスによる、地域経済循環の悪化も懸念されます。以下から図表を引用させていただきます。

地域でお金を回す、というのが地域循環ですが、キャッシュレスを進めると、都心部の事業者にお金が循環してしまいます。3%の手数料はデジタル課税として地方から流出します。売上の3%ですので、インパクトは大きいです。


まとめ

地域から、人・モノ・カネが流出しないようにキャッシュレスの利便性やポイント還元にとらわれず現金を使う、というのも重要かもしれません。

3%の手数料は想像以上にインパクトのある数値です。

愛すべき店がそこまで忙しくなく、現金でも十分に業務が回るようならば、現金での支払いをしてみるのも、地域循環の観点から良いのではないかと思いました。