マガジンのカバー画像

歌詞

44
歌詞、のような詩を書いています。
運営しているクリエイター

2022年7月の記事一覧

映画

映画

なんで泣いてたのって
優しく聞くから
なんでもないよって
笑って答えた
わたしのなかのあまいところ

映画館の清潔な空気と
指をさするあなたの温度が
こころのおくに入り込んで
涙の栓をこじ開ける

わかるよ
いろんなことがあったねこれまで
これはあなたの物語
出会って別れてまた泣いて
笑って生きてゆく
例えば違う国の違う時代でも
同じ物語が流れてる

なんで愛したのって
小さく泣くから
大丈夫だよ

もっとみる
涙の跡

涙の跡

 確かにかわいい。丸い瞳がくりっとして、りすみたいにぷっくりした頬が震える。控えめな声でくすりと笑った。

「どうしたんですか?」

 桂木さんは華奢な体をふっと浮かせて首に抱きつく。俺がベッドに背中をつけると上に乗ってきた。前後に揺れる動きに声が漏れる。

 確かにかわいい。でも、恵那じゃない、と思う。

 というより、思うより先に感じている。

「桂木さん」

 そう言って掴んだ手の大きさも指

もっとみる