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デービッド・スノーディ『投資家をファンに変える「株主ケア」』(2023年、アスコム)感想

日本の上場企業の半数が「PBR1倍割れ=価値破壊会社」!
その根本的原因は「株主ケア」の欠如だった。

投資家を増やし、企業価値を高める「株主ケア」の具体策を解説。

・なぜ日本の株式市場は海外投資家から軽視されるのか?
・株価の「ボラティリティが高い」という大問題
・無配政策の大きなデメリット
・データが示す株主優待のすごい付加価値
・「自社株買い」のベストなタイミングとは
など

株式会社アスコム https://www.ascom-inc.jp/books/detail/978-4-7762-1309-3.html

本書は、経営者などに向けて「株主ケア」を行い、投資家を増やし、企業価値を高めていきましょうという内容でした。外国人投資家が日本株投資について書籍を著すというのは珍しい気がしますね。

著者は具体的に「株主ケア」とは何かを探るため、ROEとボラティリティに注目して分析していきます。まず、指摘されているのが東日本大震災が起きた2011年ごろを境に、日本企業がROEを意識した経営に積極的に取り組み始めたのではないかという点です。
ROEを意識した経営をしようというスローガンだと思い出すのが経産省がまとめて伊藤レポート。伊藤レポートの最終報告書が出たのは2014年になりますが、モデルとなったイギリスのKey Reiviewは2012年であり、この時期にはこうした経営指標について具体的に目的意識を取り組み、IR等を通じて、株主に発信してきましょうという時代の雰囲気があったのだろうと想像することは難しくないかと感じます。

高いROEの企業ということは、およそ企業価値を高める努力をしていると考えられますが、株主として株を購入しようと思ったとき、ボラティリティが高いと買いづらいし、買ってもらえたとしても長期的な観点からではなく、キャピタルゲインを狙った短期的な売買になってしまう可能性がある。日本の高いROEの企業は、ボラティリティも高い企業が多いということに著者は気づきます。これでは、長く株を持ってくれるファンになりづらい。ただ、もちろん高いROEの中には比較的ボラティリティが低い企業がある。では、そこにはどのような差があるのかということを著者はさらに分析していきます。

そうした結果、最低投資金額(1単元)、配当、株主優待、自社株買いこれらをあげながら、最低投資金額や配当性向が一定の枠内に収まっており、株主優待制度を取り入れており、自社株買いを行っている企業は、相対的にみてボラティリティが低くなる傾向にあることを発見します。つまり、これらが「株主ケア」に結びつく可能性が高い企業が取れる選択肢である。このように結論されていると私は感じました。

この本を読み終わったときに感じたこととしては、東証の市場区分としては、プライムを想定していて、バリュー株には一定の成果がありそうではあるものの、グロースのような大きく成長していこうとしている企業としては必ずしもこのようなことを想定しながらIR活動などを行う必要はないのかなと感じました。紹介文に「PBR1倍割れ解消」の処方箋、といった文言が記載されているのを思うと、そりゃグロース企業を想定はしてないよなという感じではありますが……。自分では間違いなく調べない具体的な数値がいろいろあって、興味深く読ませてもらいました。

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では、ごきげんよう。

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