「ねこ、かく語りき」と「いなば」

『ああ、おはようさん。よく眠れたかい。それは良かった。まずは顔を洗って歯を磨いて来るんだね。あんた口がちょっとにおうよ。ん？ああ。ワタシはあんたみたいに手当たり次第にいろいろ食べたりしないから、あんまり歯が汚れないのさ。お酒も飲まない。

しかし、あいかわらず美味しそうに飲むね。あんた。そんなに美味しいなら、と思ってあんたが寝てる間にペロッといってみたけどね。とても飲めたもんじゃなかったよ。ワタシの舌には合わないね。やっぱりいつものカリカリ、それと水が一番さね。

ワタシが生まれる前、ご先祖さま達はネズミを捕まえたりしていたみたいだよ、でも、もうそんな時代じゃないんだろうね。ん？そう、ネズミさ。あんたも知ってるだろ？サザヱさん。あの有名な「どらねこ」様がフグ田家のお魚を盗んだ事件。あれがきっかけでシーフード派だと思われている節があるんだけどね。ワタシらは先祖代々の肉食さ。海の向こうの「サバンニャ」ってところでは今でも狩りをして生のお肉をガブついてる立派な「ねこ」がいるってウワサだよ。今度、あいさつに行かないとね。

ああ、でもアレだ、あの「ちゅーる」というやつは食べてみたいよ。とんでもなく美味いってウワサだからね。直接ぺろぺろして舌が痛くなりやしないか、ちょっと心配だけどね。あ、そうだよ、今日の買い出しリストに入れときなよ。たまにはワタシにご馳走してくれてもバチは当たらないよ。日頃の感謝のつもりでさ。

そういえば、あんたも好きだったね。ツナ缶。あの「いなば」って会社はニンゲン用の缶詰も作っているんだよ。ねこもニンゲンも分け隔てをしない立派な会社さ。だから、あんたの分も一緒に買ってくればいい。今夜は「いなば」パーティと洒落込もうじゃないか。いい考えだと思うんだけどね。

ファアア。しかし眠いね。今日は特段の用事もないし、もう一眠りカマしとこうかね。ああ、その前に厠にいっとかな。そうそう言い忘れるとこだった。ボチボチ厠の砂を替えといとくれ。ちょっとにおうよ。それじゃあね。アディオス。」

と言い残して、ねこは部屋から出ていきました。
僕がリビングの床で寝落ちした翌朝のことです。

それでは、また明日。