(連載:就活サバイバルNo.3)OB訪問でやってしまった、大失態
ついに本格化した就活。慶應3年の美希は、OB訪問に説明会に忙しい。漠然と大手企業に行きたいと考えており、手広くやっているが…。
果たして彼女は、内定を掴むことが出来るのか!?
<登場人物>
・美希:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、“大手企業”。総合商社、広告代理店、大手メーカー、メガバンクなど、手広くやっている。
出身は、仙台。地元の進学校を卒業後、上京。父親は、地元で弁護士をしている。
・麻子:慶應義塾大学経済学部3年。志望は、商社の一般職か、損保のエリア総合職。小学校から田園調布雙葉学園に通う。父親は、大手不動産会社の副社長。
・勇人:幼稚舎出身のおぼっちゃま。父親は造船会社のオーナー社長。総合商社志望。
3人とも同じゼミに所属している。
★
「疲れたぁ」
この頃の美希は、「疲れた」を発することが多くなった。それに、大きなため息も。
毎日、丸の内や大手町を歩き回っている。この2週間で、随分あの辺りに詳しくなったと思う。コンビニの弁当で食事を済ませた美希は、再びパソコンに向かい始めた。
説明会の予約をして、OB訪問の依頼とお礼メールを書く。本当はwebテストやテストセンターの勉強をしなくてはいけないのに、OB訪問で聞いたことをノートにまとめたりするだけで1日が過ぎていってしまう。
毎日毎日、消耗していく日々。正直けっこうしんどい。しかし、ここで耐え忍ばなくては内定を掴むことはできないと自分に言い聞かせる。
明日も頑張ろう。23時過ぎ。ベッドに入った美希は、フェイスブックやインスタグラムを少しだけ見る。
が、そこには衝撃的な投稿が飛び込んできた。
「家族で沖縄旅行」というタイトルの投稿をしているのは、麻子だ。
高級ホテルのエントランスで微笑んでいる彼女を見た美希は、心のなかで毒づく。
「こんなことしてたら失敗するわよ」
自分は毎日こんなに苦しんでいるというのに、同じ就活生であるはずの麻子は、沖縄で遊んでいる。
どうしてあんなに暇そうなのか分からない。もともと労働意欲の低い彼女は、家事手伝いにでもなるのかもしれないと、ふと思う。
「最後に報われるのは私。3ヶ月後、結果が出てるはずだわ」
苛立ってしまった美希は、スマホの電源をすぐに落として眠りについた。
翌日のOB訪問。
美希は、大手化粧品会社の広報部で働く女性のもとを訪れていた。
さすがは化粧品会社で働いているだけある。グレーのパンツスーツがよく似合う、とても美しい女性だった。由美さん、32歳。
最初は優しい笑顔で美希の話を聞いていた由美だが、次第に首をかしげる回数が増えて行った。
その度、美希は何か変なことを言ってしまったのではないかという不安に襲われる。
食後のコーヒーが出て来たタイミングで、由美は少々ぶっきらぼうにこう言った。
「どうしてうちの会社に興味を持ったの?」
美希は、「女性が沢山活躍しているイメージですし、グローバルにも展開しているのでチャンスが世界にあると思って…」
唐突な質問にしどろもどろになる。
「それって他の会社でも良いよね。あと、うちの会社の設立年とか、売上高、あとは企業理念とかわかる?」
「…」
何ひとつ分からなかった。
美希はこの時初めて、 “焦り”というものを覚えた。
→続く。
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