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(連載:就活サバイバルvol.9)優秀な学生は不要。企業が最も欲しがる、学生の特徴

ついに本格化した就活。慶應3年の美希は、OB訪問に説明会に忙しい。漠然と大手企業に行きたいと考えており、手広くやっている。が、彼女はことごとくエントリーシートで落ちてしまう。悩む彼女は、内定を掴むことが出来るのか!?

・学歴:仙台の進学校出身。慶應大学経済学部。成績は普通。英語は、受験勉強レベル。

・コネ:親、なし。自分、なし。

・ルックス:中の中。

・頭の良さ:慶應に入れるレベル。高校時代の偏差値は、65。

改めて自分を見つめ直した美希は、その結果に愕然とした。自分はこんなにも“普通”の人間だったのだと。

仙台では、“優秀な美希”だったが、東京では、“普通の学生”に過ぎないことを痛感したのだ。

それに、東京には、麻子のように親が絶大な権力を持ち、強力なコネを持っているような人物もいる。

仙台ではそれなりに有名な街弁をしている父も、東京では何のコネも持っていない。

成績だって、悪くはないが良いわけでもない。単位を落とすことはないが、AとBが半分ずつといったところ。

受験勉強では頑張ってきたが、帰国子女でもなく、英語は最低限しか話せない。

話す、聞くよりも、読む、書くが得意な、典型的な日本人なのだ。

総合商社に受かった先輩を思い出してみると、

・アメリカ出身の父親と日本人の母の間に生まれた超美人

・TOEIC 990点(つまり、満点)

・10年以上を海外で過ごした帰国子女で、ドイツ語も堪能。

こんな人がいた。

何一つ勝っていないくせに、同じフィールドで戦おうとしていたのだから恥ずかしい。

自分は、ごくごく“普通”な、どこにでもいる大学生なのだ。

この事実を知った時はひどくショックを受けた。

落ち込んだ美希が図書館から出ると、勇人が声をかけてきた。

「よ、美希。相変わらず暗い顔してんねー。ケーキでも食べに行こうよ」

「いい」

商事に内定して余裕綽々の彼とは違う。美希がさっさと帰ろうとすると、勇人が「ほらいくぞ」と、無理やり腕を掴んで歩き始めた。

これくらい失礼な男になら、プライドなど気にせず話しても良いだろう。

そう思った美希が、自分がいかに普通な人間で、ありふれているかを話すと、勇人がニヤリと笑った。

「ようやく気付いたんだ」

「うるさいな。あなたには分からないのよ」

そう言って美希がケーキに乗ったいちごにフォークをぶっ刺すと、勇人が「普通が一番だよ」と、言ってきた。

「なに、バカにしてんの!?」

「違う」と言った後、勇人は続ける。

「総合商社とか広告代理店とか外資系の金融とかは別だけどさ、いわゆる大手日系企業が重視するものって、何だと思う?」

「・・・」

美希が首を傾げていると、勇人が「ちゃんと新聞読んでる?」と、さらに茶々を入れてきた。

「内定辞退率の話とか問題になってるだろ。あれを見て、何も思わなかったの?

あれが何で売れたか分かる?多くの企業は、“うちに本当に来てくれるか”っていうのが一番大事なんだ。

場合によっては、優秀な人間よりも、“うちに来てくれる人間”を優先する。

総合商社でも広告代理店でもバンバン内定をもらうような人は逆に不合格になることもあるんだよ」

そして勇人は、「美希って本当に真面目だよな。ずる賢さが足りない」

「美希みたいな、普通の学生がやるべきことは、いかに、“うちに来てくれる”って思わせるか。それだけなんだよ」

そう言った。

→続く。

●次回予告

普通な学生の代表格・美希。勇人のズバリの指摘を受けて動き出す!


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