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私なりの英語勉強法(赤点スレスレから大学受験、MBA、アメリカで就職するまで)

今でこそちゃっかり海外で働いてます、新卒外資系です、みたいな顔をしているが、高校二年生まで、私は絶望的に英語が出来なかった。赤点スレスレだった。というか、たぶん一回か二回は赤点を取っていると思う。

正直に言えば、英語だけではない。端的に言って、成績が悪かった。確率論の勉強をしたり(麻雀とも呼ばれる)、他校の生徒と交流を深めたり、家でコンピュータの先生になるべく勉強したり(Age of EmpiresとDiablo IIという科目)、とにかく時間がなかったのだ。だから、成績は当たり前だが後ろから数えたほうが早かった。通りすがりに体育の先生から身体的な接触を含む教育的指導を受けるなど、生活態度も余り好ましいものでは無かった。

私の通っていた中高は、東大に進学する生徒が多かった。5月の母の日に開催される運動会が終わると、皆が目の色を変えて勉強しだす。私もまぁ東大でも受けるか、という軽い気持ちで模試を受け、当然ながらE判定をくらった。底辺にいた私は、上にいるライバル達よりもよりも効率よく成績を上げる必要がある。幸い、私が幼稚な夢のような青春時代の前半を終え、大学受験に向き合い出した2000年代前半は、インターネット上の情報が爆発的に増えた時代である。私はインターネットの情報と、通っていた塾と、そして優秀なクラスメイトからの情報をもとに、受験戦略を立てた。当時は、将来英語を使って仕事をするなどという発想もなかったが、単純に東大の入試における配点の高さから、英語に関する受験戦略もそれなりの重要度をもって立案をされた。

私が当時立てた戦略とその執行は極めてシンプルなものであったが、その後、TOEFLやGMATを受ける際に、ほぼ追加の準備が必要ないくらいの基礎的な英語力をつけてくれるものでもあった(因みに、私の提出スコアはTOEFL 109点、GMAT 720点、と当時では平均的なスコアだったと思うが、仕事が忙しく、Officialの模試とManhattan GMATを二冊やる以外にほぼ勉強しないで受けたわりには健闘したと思う)。

今回のNoteは、そんな私の今までの英語の勉強法について簡単に書いてみたいと思う。MBA受験に焦点をあてた形での英語勉強法について書いたブログは沢山あり、質の高いものも多いと思いのだが、そもそも、基礎的な英語力がない状態からどう勉強を始めるのか、という点について書いている記事は余りないな、と思ったのがきっかけだ。万人に有効なものではないと思うが、少しでも参考になれば幸いです。

1.単語、単語、そして単語

まず第一に、何かsilver bullet solutionを期待されていた方には極めて申し訳ないのだが、英語は地道に努力するしかない。ただ、地道な努力をするにしても、その効率を上げることは出来ると私は思っている。では、効率よく勉強を進めるために、一番最初にやるべきことは何か?それはある程度の水準まで単語をとにかく覚えることであると私は思う。

単語?という声が聞こえてくる気もするが、私の経験上、単語力がない状態で他の勉強をしても無駄が多い。海外ドラマを頑張って見て英語力を上げる前に、単語帳を一冊、徹底的にやることを強くお勧めする。単語力がないと、他の勉強の効率が著しく落ちる。何故なら、本当に基礎的な単語を除けば、同じ単語が英文や英会話で出てくる頻度はそこまで高くないので、意味が記憶に定着するまで一々単語の意味を調べる羽目になるからだ ― Repetitiveな作業は避けるべきだと私は思う。

単語帳はとりあえず3,000語くらいをまずは目安にするとよいと思う。迷っている時間がもったいないので、DUOでもシス単でも、ある程度のボリュームがあるものを繰り返しやろう。ざざっと2周くらいして、8割以上が頭に入ってくると、模試などで、"あれ、この単語、こないだ単語帳でやったやつだ!"、という進研ゼミ的な感覚を味わえるはずである。

尚、私はというと、かなり英単語レベルがひどかったので、私の隣の席に座っていた、現在は某上場企業で役員を務める友人に勧めてもらった英単語ピーナッツという単語帳から始めた。持つべきものは友である。この本、とてもとっつきやすくて、単語帳をやったことのない人にはお勧めしたい。

2.英文法は大事だが余りよい参考書がない

私の受験当時、英文法についての教材は、無茶苦茶難しいか、全くの初心者向けかしかなく、参考書選びに苦慮した記憶がある。入試で明確に、英文法、という形で聞かれる問題がほぼないため、配点の問題から若干軽視されている(教育者が、というよりは、受験生が軽視していて参考書が余り売れないという意味で)分野なのでは、と当時の私は疑っていた。ただ、文法がある程度頭に入っていないと読む速度が上がらず、結果として勉強の効率が落ちるため、私は単語の次にやるべきものだと考え、実際にそうした。

私が受験時に使ったのは(もう20年近く前なので若干記憶があやふやだが)、英文法標準問題精講だったと思う。かなり難解で最初泣きそうになった記憶があるのだが、めげずにこの本を結構きっちりやったおかげで、文法自体に悩むことは殆どなくなり、英文を読むスピードがかなり上がった。余談だが、質のよい、しかしながらそれほど難解ではない英文法の本が発売されたら売れるのではないかと本気で一時期思っていたことがある。(私が受験したのはもう20年近くの話なのでもし現在そういったものが市場にあれば素晴らしいなと思う)

繰り返すが、単語と文法が頭に入っていないと、とにかく英語を読むスピードが上がらない。なので、この二つを同時進行で、とにかく徹底的にやる。私は受験勉強を始めて最初の二か月くらいはひたすらこればかりやっていた。そうして7~8割くらい頭に入ってきたら、今度は次項で紹介する英語を英語のまま理解する、という練習をしはじめる時期だ。この練習には多読が必要だと私は思っているので、英文読解に時間がかかるような単語と文法レベルで次のステップに進んでしまっても非効率だからである。

3.英語を英語のまま理解できるようになるために、良質の英文を英語の語順でとにかく読む

日本語と英語は言語としての違いが大きいとよく言われる。斯様な意見を耳や目にする度、私は首がもげそうなほどに頷く。語順が違う(SVO vs. SOV)、使っている文字が違う(ひらがな、カタカナ、漢字 vs. 英語アルファベット)、漢字は表意文字 vs. アルファベットは表音文字、単語もほぼ重複なし、話すときのピッチの強弱、もう数えられないくらい違いはある。

結果として、日本の英語教育(少なくとも私が学生だった頃)は、英語->日本語にまず翻訳し、日本語を通じて英文を理解する、というプロセスをとっていた。これは一見とてもReasonableに見えて、私は日本の英語教育の最もよくない点だと思っている。英文を英文として理解しない限り、英文をプロセスするスピードは日本語に翻訳する1ステップ分遅れる。これは致命的である。例えば、GMATのVのReadingはただでさえ時間が足りないのに、この不必要なステップを入れるた場合、時間通り終えられる可能性は殆どないだろう。

ということで、基本的な単語と文法を押さえたら、日本語に翻訳するという方法に別れを告げるべく、英語を英語として理解する練習を始めることをお勧めしたい。私が採用した方法は、多読である。しかも良質の英文を繰り返し読む、という方法だ。そして、良質、という点について少し掘り下げてみると、私が良質、と考えるのは、スタンダードな英文法に基づいており、比較的容易な単語で、文章外の暗黙知なしで理解できるように書かれているものだ。この条件を満たすものはいくつかあるのだと思うが、私は具体的には、The Universe of English(東大出版会)と慶応SFC(総合政策など)の長文英語問題を中心に繰り返し読んだ。学術系の記事などがよいのだと思う。余談だが、The Universe of Englishは高校時代に読みすぎたため、この本がテキストとして使用される駒場時代の英語Iは、何も勉強せずともずっと優であった。

気になる読み方だが、一番最初は、英語から日本語に訳して読むしかない。というのもこの時点では英語を英語として理解することはできないからだ。ただ、二回目以降からはなるべくこの翻訳プロセスを加えずに頭から英語の語順で読んでいく。これをすんなり読めるようになるまで何回も繰り返す(同じものを読み続けているとおそらく飽きるので数種類でやるのがよいと思う)。これをやり続けると、英語から日本語に訳すというステップが段々と不必要になってくるはずだ。ここまできて初めて、英語をそれなりのスピードでプロセスする脳みそができたことになる(と私は思う)。Readingからその他の領域に勉強の対象を広げる時、大航海時代の幕開けである。

4.試験用のリスニングはTOEFL Listeningでよい。それ以上を目指すならPodcastがよい

実は私はリスニングで苦労したことが余りない。少なくともペーパーテスト上は。大学受験中はTOEFL Listeningのための(確か)Official問題集を購入し、それをひたすらやった。当時は当然CDプレイヤーで、確か最終的に1.5倍速くらいでやった記憶がある。当然であるが、上記の英語を英語のまま理解できる状況を作った後にリスニングはやるべきだ。英語をいちいち日本語に戻して理解しようとしていたら、おそらくリスニングで要求されるスピードについていけないと思う。

さて、ここまでは受験までの話である。私はTOEFLで対策をしなくても確かLは28点が出たので、そこそこリスニングができると思い込んでいたのだが、実際には留学して辛い現実に直面した。海外の案件などをやって薄々気づいていたのだが、誰もCNNのニュースのような英語をゆっくりと話してはくれない。日本語に方言がある如く、英語も沢山のアクセントがあるのだ。薄ら笑いを浮かべながら、クラスメイトから逃げる日々が続いた。

キラキラ留学生活を取り戻すために色々と試した結果、私が落ち着いたのはPodcastだ。結構内容が面白いものもあって、通学中に聞いていれば話のネタにもなるし、実際の英語話者のアクセントにも慣れるしで丁度いい。他の英語コンテンツとの差は、コンテンツ作成者が、消費者が音のみでコンテンツを消費することを認識しているため、音声以外の余分なコンテクストがない点だ。これは映像で見せる海外ドラマや、ボディランゲージやたまにプレゼン的なものが入ってくるTEDと比べると大きなメリットである。即ち、英語が聞き取れていれば理解できるし、そうでなければ理解できない、という非常に単純明快なコンテンツなのである。慣れてきたら、1.25x~1.5xくらいで聞き取ることをお勧めする。色々なアクセントに慣れることができるはずだ。尚、キラキラ留学生活はその後も特にやってこなかったことをここに記しておきたい。

5.On Writing Well

私が学生の頃は、東大の入試英語のWritingというと短文を作るものだけだった気がする。従って、私は高校時代にWritingの練習は殆どしなかった。非常に残念ながら、大学時代も英語でAcademicな文章を書く機会にも恵まれなかった。TOEFLでもWritingのお題はあるが、あれは落ちているテンプレを暗記して当てはめればよいので特に何の意味もないと私は思っている。

ということで、残念ながらパラグラフライティングの経験がないままMBAに来てしまった私だが、幸か不幸か、授業の課題などは、ネイティブスピーカーのクラスメイト達が美しい英文を書いてくれたので、自分は殆どこの能力を磨かないまま卒業を迎えた。MBAは修士論文がいらないのだ(!)。

さて、こうしてMBAを卒業し、意気揚々とアマゾンに入社した私は、入社してすぐにとあるプロジェクトのドキュメントを書くことになった。アマゾンはよく知られている通り、パワーポイントを使わず、全てワードでドキュメントを作る。そしてこのドキュメントを書くということに、皆、並々ならぬこだわりを持って臨む。私が入社して最初に書いた文章は、原型をとどめないほど(ワードのマークアップ機能で)まっかっかになって帰ってきた。容赦なく添削してくれた私の最初のボスは、Yale->投資銀行->M7 MBAのアメリカ人で、とても文章が上手だったので、とにかく頑張って真似て書いた。書いては直され、の繰り返しで本当に大変だったが、根気よく付き合ってくれた当時のチームメイトやボスには本当に感謝している。Writingに関しては質のよいとされる文章をとにかく真似て書き、そしてひたすら添削してもらうしかないと私は思っている。(アマゾンは望まなくても色々な人、時には複数人に添削してもらえるので、真っ赤っかなマークアップにショックを受けないような精神性の方であればとてもよい環境だと思う)

当初は余りにも上達しなかったので、本も数冊読んだ。以下の三冊は特に参考になったものである。
The Elements of Style
On Writing Well(読み物としても面白いのでお勧め)
The art of explanation

6.スピーキングはまだ解決策がない

スピーキングについては、未だに余り解決策がよくわかっていないことを正直に告白したい。ミーティングを進行したり、関係部署と交渉したり、時には自分のチームのメンバーと評価や報酬のコミュニケーションをしたり、ということを日常的にしている一方で、話している文法は相変わらず滅茶苦茶なことも多い。

ただそれにしても、ミーティング中に貝のように黙っていたアマゾン入社時から比べれば大きく進歩したとは思う。特に何か方法論をもって臨んだわけではないのだが、唯一心がけたのは、徹底的に人のマネをすることだ。ただ、ネイティブスピーカーのマネをするのはハードルが高いので、私と同じく外国から来てアメリカで活躍している人たちの英語を真似ることにした。私は、発音の仕方からイントネーションの付け方、使う単語まで、全て真似した。ネイティブスピーカーでない以上、みな工夫をして聞き取りやすい英語を話している。アメリカに生活するノンネイティブスピーカーの英語は、そういった努力と工夫の結晶だと私は思う。それを身近で学べる機会があるのだから、いっそのことまるまる自分のものにしてしまえ、という発想だった。実際、ミーティングで聞き返される回数は劇的に減っている(ゼロではないのが悲しいところだが)ので、効果は結構あったと思う。

尚、スピーキングと余り関係はないが、分かりやすく簡潔に論点を纏めた資料を用意しておく、というのはミーティングを進める際のコツの一つだと思う。自分がうまく話せない分、資料に話してもらうという発想だ。私が以前一緒に働いた中国人の上司は、このミーティング用の資料作りが滅茶苦茶上手だった。彼は英語はそこまで得意ではないと自分で言っていたけれど、ミーティングはいつも効果的で、その裏にはこうした努力があるのだな、と感心した記憶がある。

余談だが、MBAでは、西海岸の大物に対してパブリックスピーキングのコーチングをしている人の授業を取った。なかなか愉快な人だったので個別に面談を申し込んで色々と話してみたのだが、彼は、ネイティブスピーカーでない日本人が目指すべき、英語のパブリックスピーキングの最高形は(当時の)Sony CEOの平井さんだと言っていた。従って、私は一時期YouTubeなどで平井さんの動画を沢山観て真似をした。ついこの間、即ち平井さんの動画を見始めて5年以上たってから、平井さんが帰国子女であることに気づいた。そして、いくら練習しても平井さんみたいにならない理由が氷解した。幼少期に海外在住経験がない人間にとって、発音はやはり鬼門である。無理をしてそれっぽくするより、ゆっくり明瞭に話す方がよいと私は思う。

7.終わりに

まだまだ自分も発展途上な中、こういった文章を纏めるのも若干憚られるものの、英語を(特に学生時代から)どういうステップで実際に勉強したか、という点について書いているものが余りなかったので、少しでも誰かの参考になれば幸いです。ここに書いた方法がすべての人にとって最善かはわからないが、少なくとも私はこの方法で勉強を続けてきて今に至っている。

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