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MBA後の身の振り方(私の場合)

筆不精な私にとっては珍しく続いているNote、書くたびに読んでくださる皆様のおかげです。本当に有り難い。イイねやTwitterでのリツイートしていただける事で、誰かが読んでくださっていることが分かるのは、製作意欲という点で大きな違いである。加えて、色々な人と知り合うことができた。LinkedInで連絡を頂いたり、TwitterでDMを頂いたり、アマゾン社内のチャット(AWSのChime)で連絡を頂いたり、人との繋がりが増えていくのは面白いなと思う。尚、自分で少しやってみて思うのだが、読者のリアクションがわからない中、多大なる時間を費やして執筆をなさっている文筆家の先生方は凄い。尊敬の念をますます大きくしている次第である。

さて、私はというと、先週から週末にかけて、Lake Wenatcheeというところに行ってきた。大自然を前にすると自分の存在のちっぽけさ具合が分かり、肩の力が抜けてとてもよい。私がMBAを取るために留学していたのはUC Berkeleyという学校で、SFの近くにあり、車で行ける距離に国立公園や州立公園が沢山あった。MBA中というのは中々迷いの多い時期でもあり、身の振り方をどうしようかなどと思い悩む日々だったが、自然に触れると気持ちが軽くなって思い切りよく決断できることも多かった。私にとって、自然が豊かであるというのは、住む場所を決める上で重要な要素であるらしい。

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今まで色々な人とキャリアについて話をしてきた中で、一番多かった質問は、"何故アメリカに残ることにしたのですか"、か、"何故アマゾンに入社することにしたのですか"、だと思う。就職した当時は余り上手に説明できなかった気がするのだが、5年もたてば流石に思考が整理されてきたので、(若干後出しじゃんけんのようで恐縮だが)MBA後のキャリアを決める時にどういう点について考慮したのか、ちょっとNoteに纏めてみようと思う。

成長している会社で働きたかった

私は25才でPrivate Equityに転職した。28歳でMBAに行くために退職したため、実質3年間の経験しかないのだが、短い中なりに幾つかの投資案件や投資先を見た中で、売上が伸びている会社で働くというのは素晴らしいなと思うようになった。

売上が伸びていない場合、どうしてもコスト削減による利益上昇を目指すような、”カタい”会社運営や事業計画になりがちである。一従業員の立場で考えると、これは社内でチャレンジできる機会が少ないことや、若いうちは大きなスコープの仕事に関われる機会が余りないことを意味する。逆に、売上高が急速に伸びているような会社では、人材獲得のリードタイムの長さから、新しいポジションや大きなスコープの仕事を、少しストレッチでも社内の人材で補おうというインセンティブが強く働くし、人材の配置も流動的であることが多い。私は常に新しいことをやりたい人なので、社内で色々なことにチャレンジできる環境にいるためにも、高成長企業に勤めたかった。

とは言え、MBAの学生ローンを抱え、家族がいる身として、私にとって、ベンチャーに飛び込むという選択肢は現実的ではなかった。従って、高成長な大企業、しかも福利厚生がよい、ということで、アメリカのテック企業には留学初期から注目していた。

自分で事業をドライブする力を身につけたかった

これもPrivate Equity時代に痛感したのだが、自分は事業をよくするための引き出しを持っていなかった。お客さんが離れていった時、業界が下降トレンドに入った時、生産性が上がってこない時、自分は事業を改善する力が無かった。それは、事業や経営をどう見るかという分析力の欠如であり、打ち手を考えつくという思考力の欠如であり、打ち手を実行するという執行能力の欠如であった。

投資という仕事は好きだったが、上記のような力を身につけた後の方がもっとよい投資が出来るのではないか、と私は思っていた。また、事業をよくするための引き出しをもっている、というのは、おそらくどの会社、業界に行っても必要なスキルだとも思っていた。そういった点で、アマゾンという会社は一本筋の通った、しかしとても変わった(我々はこれをPeculiar Wayと呼ぶ)事業運営のやり方をとっていることで有名であった。そういったベストプラクティスを学ぶことで、自分の引き出しを増やしていくことが、アマゾンを就職先として選んだ大きな理由の一つである。まだまだ学ぶことは沢山あると思うが、一方で、今もし過去に戻れたら当時とは全然違った観点で投資先のビジネスを見ていただろうな、と思うし、もう少し貢献できていたのでは、と思う。残念ながら、時間が巻き戻るなどということはないのだが。

一度アメリカで働いてみたかった

私は日本で生まれ日本で育ち、普通に日本の大学に通った。短期留学や起業などは頭にもなく、麻雀をしたり、飲みに行ったり、海や山で遊んだり、分かりやすい(当時の)日本の大学生であった。

新卒で外資系企業に入社した後は、英語でとても苦労した。英語が話せない、相手が言っていることがよくわからない、まともに英語で文章が書けない、伝えたいことが言えずに議論ができない。こうした無数の思い出を通じて、私の中に溜まっていった屈折した思いを解消するには、一度アメリカで働いてみる必要があった。こればっかりは理屈ではなかった。

(Calculated)リスクはとってもたぶん大丈夫

振り返って思うのだが、MBA後の就職先は、多少間違えても余り致命傷にはならないように思う。Jeff Bezosは毎年letter to shareholdersを書いているのだが、私のお気に入りは2016年のものである。この中にHigh-velocity decision makingというおそらくはアマゾンで働く人間であれば毎日口を酸っぱくして言われる話が書いてあり、その中にOne way door vs. Two way doorの話がある。

私は、キャリアは多くの場合、Two way door decisionだと思う。勿論、一部の日系企業においては出戻りが難しいカルチャーがあるらしいので、そういった場合に会社を離れるか否か、という決断は慎重に下す必要はあるかもしれない。それでも、多くの場合(特にMBA後の選択肢として外資系の企業を選ぶ場合)、貴方がMBAに行けるくらいのキャリアを持っていれば、ちょっとやそっと間違えても、早期にそれに気づくことで、挽回は可能なのではないかと思う。

終わりに

"アメリカで就職するのは大変だと聞いたのですが"、という話もよく出るのだが、私は一概にそうとは思わない。貴方が米系のある程度著名なプロフェッショナルファーム出身で、少なくともUS NewsでTop 10近辺に入るような学校でMBAを取れば、アメリカで就職するということは、(相当な不況下でない限り)そこまで難しくないはずだ。勿論、足元の流動的なVisaの状況のように、外国人の雇用を著しく削減する、という制度的な変更が加えられてしまえば話は別だが、そうでなければ、日本人以外で米国のMBAに来た外国人の多くは、そのまま米国で就職するわけだから、日本人にできないことはない。敢えて米国に残る必要がない(裏を返せば、それだけ日本に魅力的な就職オプションがあるということだと思う)、そして、ノウハウが体系化された形できちんと蓄積されていない、という二点が、日本人のMBA生の中で、アメリカに残るという選択をとる人が極めて少ない理由だと思う。

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