盲亀浮木



学生時代、部活動内の人間関係で揉めて、よくある〇〇派と〇〇派で分かれた時期があった。

馬が合わない相手のメンバーをやり辛いから辞めさせたい、みたいな類だったと記憶している。
数週間の殺伐とした空気を経て、顧問だった先生が「盲亀浮木」の話をしてくれた。

内容は
「人との出会い=目の見えなくなった老海亀が100年に一度水面に浮き上がってきた時に、大海に漂っている穴の空いた流木に偶然首を突っ込む確率と同じ。あなたたちはそうやってひとつの部になった」

とゆうものだった。
普段クールで厳しい先生が泣きながら伝えていたのが印象的だった。今なら先生の気持ちが分かる気がする。

馬が合わないとか、自分勝手な理由で他人を陥れようとする行動が哀しかったんだとおもう。そんな部活の空気をつくりたい訳でなくて、自分にも非があると不甲斐なく悔しかったんだともおもう。


そのまま部員全員強制退部させられた。

「これから、本気で再会したい人だけ入部届けを持ってきてください」
最後にぴしゃりとそう言って、先生は自分の部屋に籠った。

その後姿を見て酷く後悔し、絶望した感覚をおぼえている。泣きながら入部届けを提出した。これを機に辞めた人は誰も居なかった。

おとなになってから断片的に、学生時代の記憶が蘇り、後から分かることがある。

集団行動とか、誰かと一緒に何かを成し遂げるとか、未だに難しいし正解もよく分かってない。
ただその時「本気で何かをしたい」かどうかについて学ぶ機会をもらったとはおもう。

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