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私の豊橋ビジョン-鍵は独身女性の社会増

さて、豊橋市ではこの11月に市長選が行われます。自分の一票をしっかり考えて、政策を吟味し、未来のために投票したいと思っています。

ついて、せっかくなので、政策を吟味する為に、自分なりに理想とする豊橋の今後のあり方、実現して欲しい政策を書いてみることにします。

もちろん、実際の行政はなかなかそうは上手くいかないことばかりと思いますが、私自身の人生の後半を住むまちとして、そして、未来に子供たちが住むまちとして、どんなまちを残していきたいか、そんな想いを書いてみようと思います。

市政の全分野にまたがるので、長いエントリーです。見出しと画像だけ見て、興味のあるところだけでも読んでもらえたら嬉しいです。

主要指標は独身女性の20~30代での社会増

今後の豊橋市が成長するために、もっとも重要な指標は『20代~30代独身女性の社会増』だと思っています。

その理由は、これまでも私のnoteに書いたりしてきました。

結局、「20-30代独身女性が社会増になる」ということは、それだけ、新産業が盛んになり雇用が生まれている、なんなら、余所の地域から就職しに来るぐらい魅力的な雇用があるという活気の証拠であり、また、教育・保育・医療などキャリアを継続するための社会福祉環境が整っていることを意味する、

まさに、今後の地方発展のバロメーター、総合指標なのです。

そして、女性の社会進出が増えれば、それはそのまま、豊橋市の域内経済の成長につながります。可処分所得の多い女性が増えれば、当然まちなかの商店だって活性化するでしょう。そして、女性に優しく過ごしやすく活躍できるまちであれば、それに引き連られるように、高齢者、障がい者、LGBTQの方、シングルマザー、貧困家庭、外国人、、様々な社会弱者にも自然と目配りが効く、そんな街になっているだろうと思います。

子育て世代でなく独身女性をターゲットに

また、勘違いしやすいところですが、女性進出のターゲットは「子育て世代の母」ではなく、「独身」です。

はっきり言います。地方の社会人口増で「子育て世代」に働きかけるのは悪手です。

こちら、日本生命のデータです。

引用します。

移住話題で必ずと言っていいほどでてくる「子育て世帯誘致」は、東京に一極集中し続ける20代の若い独身男女が、東京都で家族形成を行った後のライフデザインに働きかけるタイプの施策であり、最低限でも、以下の大きな移住に伴うライフデザインの変更を、対象となるカップルに要請せざるを得ない
夫の仕事、妻の仕事、子どもの育つ環境、の大きな3つのライフデザインに関する変更である。それは、まだ家庭形成していない独身男女へのアプローチよりも、はるかに複雑な意思決定を対象者に対して迫ることになる。

まあ、そういうことです。

「子育て世代支援策」は大変重要です。私も子育て世代の1人としては充実を望むところです。ですが、子育て支援策は、学校教育制度や医療福祉制度など国家政策とも密接に関わる=地方の独自性を出しづらい分野です。

その中で、各自治体が「子育て世代の移住」を獲得しようと頑張っていますが、なかなか決定打になるほど、すなわち、上記にあるとおり、「夫の仕事、妻の仕事、子どもの育つ環境、の大きな3つのライフデザインに関する変更」を決定するほどの支援策の差を、地方自治体間同士で創り出すのは大変難しい。です。

子育て世代支援策は、あくまで、「今住んでいる住民への福祉サービス」という枠組みで考えるのがベターと考えます。

引き続き引用します

東京の転入超過人口の7割を占める20代前半は、独身者がほとんどであることが示されており、さらに、2番目に定着数の多い20代後半においても、男性の7割、女性の6割が独身者である。
つまり、統計的に見れば、東京都に増え続ける人口は、そのほとんどが独身者であるということができる。
もっというと、独身であるからこそ、ライフデザインの変更を伴うような大胆な越境が可能となっていることを示している

ということで、だからこそ、「独身」がターゲットになり得るのです。

5つの基本方針

まず、この目標を達成する為、以下の5つが基本方針になるのではないかと考えます

01.女性雇用の創出支援
02.域内・域外と産業政策のターゲットを明瞭化
03.デザイン・経営の大学誘致で産業イノベーションを
04.Nature&History&Culture  Higashimikawa
05.STEAM+2H教育

以下、順に説明します。

01.女性雇用の創出支援

これは、一丁目一番地。『女性が働きやすくする』という間接的な政策ではなく、もっと直接に『女性雇用を創出する』ことを目的にします。

現在、豊橋市でも、男女共同参画社会の実現をめざし「とよはしハーモニープラン」が提唱されています。

女性にまつわる諸問題の多方面に目配せのきいた、総合的で良い計画だと思います。一方で、ありとあらゆる問題、育休/産休などの働き方改革も、キャリアアップの能力支援も、学校現場での性平等も、あるいはDVからの保護も、LGBTなどの少数者支援も、その全てを包括しており、担当部署は、市民協働推進課です。この部署は外国人などの問題も担当しています。

率直に、私は、ジェンダー政策は、アプリケーションじゃなくてOSなんだと思っています。

医療・防災・農業振興・教育・男女共同参画というような並列の並びではなく、医療には当然女性医療の問題(女医さんを増やすとか、不妊治療の助成金とか)があり、防災にも例えば女性の消防団長などがあれば、避難所での女性特有の衛生用品とかプライバシーとか言う観点が生まれ、農業振興でも女性の地位が向上することで女性の就農者も増え、教育だってジェンダーギャップを教育の中で是正していくという論点がある、、、

という、全てに関わる問題なのです。

さて、なぜ女性雇用が増えないのか。その答えは前出のnoteに書いていますが、

学校教育を通じた意識改革やDV対策などはもちろん必要な行政施策ですが、こと、働き方改革だけでなく、そもそも『女性が働きたいと思う職種や産業が産まれないことには、女性流出はどうしようもない』という問題を解決しなければならない

では、どういう雇用がよいのか。それは前出の記事に書いてあります。

豊橋では飲食サービス業が一番多く、医療、福祉、製造業、卸売り小売り業が多く、東京都で上位の情報サービス業や、その他のサービス業、映像、音声、文字情報製作業などの職種が少ないことが見て取れます。

明らかに、「東京にある仕事」と「豊橋にある仕事」の中身が決定的に違う、ということが読み取れます。逆に言えば、まさに、「東京では多くの従業者がいる産業であり、豊橋には従業者がいない産業」こそ、「やりたいことで流出してしまう女性が就職したいと思える仕事」といえる

産業振興政策として『女性雇用創出』を位置づけて、産業部の中に『女性雇用創出課』を組み込み、『ジェンダーギャップ問題』は『産業振興の問題である』という意識を明確にし、産業面に着目したアプローチを専門的に取扱い、目標達成への強力なドライバーとすることが必要なのではと思います。

そして、市のアンケートでもジェンダーギャップ(男性優遇)を感じる分野として、「職場」「政治」「慣習・しきたり」と回答する割合が多くなっています。

(学校については過半数が感じなくなったというのは大きな成果と思います。)ビジネスのジェンダーギャップが解消されるまちを作ることが、豊橋が輝く、一丁目一番地なのです。

02.域内・域外と産業政策のターゲットを明瞭化

さて、『女性雇用を創出』するためには、これまでにない観点での産業振興が必要になります。

豊橋は、一般に、農工商のバランスがとれた街、といわれています。農業生産高も全国1,2位を争うレベルのトップクラス、工業も三河港を有し、豊橋科学技術大学をはじめとする先端技術の開発にも余念がなく、様々な最先端技術を持った工場が林立しているまちです。

正直、もう、技術力、十分にあります。このまち。それは先人のたゆまぬ努力の結晶。そして、いよいよ、それをもっともっと花開かせるため、マーケットで戦略的に高付加価値を獲得するタイミングではないでしょうか。

「製品」と「商品」は違います。会計用語的にも違いますが、私なりに定義すると、『製品』とは工場や農地で作られたもの。それに対して、買う人が価値を感じることにより『商品』になります。

『製品』は造り手目線、『商品』は買い手目線。いわゆるプロダクトイン、マーケットアウトとも言えるでしょうか。あるいは、デザイン主導主義とユーザー主導主義と言えるかもしれません。

しかし、豊橋が得意とする「ものつくり」は、現在、課題過剰に巻き込まれているともいえます。

詳しくは、上記の山口周さんの記事に詳しいです。主要部分引用します。

モノが過剰に溢れかえる世界にあって、私たちは日常生活を送るにあたって、すでに目立った不満・不便・不安を感じることはなくなっています。これはつまり、今日の日本ではすでに「問題が希少化」していることを示しています。
(中略)
「問題」と「解決策」のバランスについて、過去を振り返ってみれば、原始時代から20世紀後半までの長いあいだ、常に過剰だったのは「問題」であり、「解決策」は希少でした。多くの人々が、物質的な側面で大きな「不満・不便・不安」を感じており、だからこそ、それらの問題を解決できた個人や組織に富が集中したのです。
(中略)
 このような世界において、かつて高く評価された「問題解決者=プロブレムソルバー」はオールドタイプとして大きく価値を減損することになる一方で、誰も気づいていない問題を見出し、経済的な枠組みの中で解消する仕組みを提起する「課題設定者=アジェンダシェイパー」が、ニュータイプとして大きな価値を生むことになるでしょう。

どうしても、ものづくりは性質上、『発注者が、スペックやコストについて課題を出す』→『技術を磨いてその条件を乗り越える製品を作る』→『採用される』とい『問題点先行型』になりがちです。

しかし、それを乗り越えていく『課題設定』『問題を発見する』力こそが、新産業には欠かせない力であり、それは、技術力を磨くことではなく、多様な価値観で物事を捉えることから産み出されるのです。

ここに女性雇用が産まれる可能性と、そのニーズがあるのです。

そして、豊橋が継続的に発展していく為には、外貨を獲得する必要があります。つまり、『豊橋の外で売れて、豊橋に収入をもたらす商品やサービス』です。これには、観光など、『外から豊橋にやってきて、豊橋にお金を落とす産業』も含みます。

下記の記事にも書きましたが、地方が稼いでいくためには、「高付加価値、高価格帯の域外向け商品」の経済と、「日常品の経済」を、完全に分けて考える必要があります。そして、利益を稼げる高付加価値商品を販売し、それを給料所得として分配し、地域内の平均所得が上がれば、域内経済の付加価値も向上していく、というルートが絶対必要です。

もちろん、『より安く』側が必要ないわけではありません。地域の中で循環して、地域の中の資源を地域内で供給消費し、地場の雇用を産み出していくことも必要です。地元の商店で適正価格で物の不足なく消費生活を送れること。そのための、農業、工業、商業も、また地域には必要なのです。

そう、農業、工業、商業という括りではなく、農業の中でも地元の人へ野農産物の供給を見据える目線と、農産品に高付加価値をつけて域外へ販売するという、『全く意識の持って行き方、戦略が違う方向性が、一つの産業に共存する』のです。

どちらも大事です。しかし、そこに求められる社会的使命や責任、経済戦略上の位置づけは全く異なり、必要な行政施策や人材も必然的に異なってきます。

そこで、これらを解決する為には、市役所の体制も整える必要があります。もし、大胆に提案するならば、現在産業別に分かれている、豊橋市の産業部を「域内経済活性課」「域外進出振興課」と再編します。

そして、観光+高付加価値農業、高付加価値農業+産業技術開発、地産地消農業+商店街活性、などのように、「域内・域外」の目的によって、農業、工業、商業の枠を超えた連携がスムーズにとれるようになると、従来の枠組みに留まらないより戦略的な産業政策が出来るのでは、と考えます。

上記1と合わせると、市の産業部の中に、『女性雇用創出課』『域内経済活性課』『域外進出振興課』が再編登場します。この方が、市の産業ビジョンが、より明確になるように思うのは、私だけでしょうか。

03.デザイン経営の大学誘致で産業イノベーションを

さて、既存の有形無形の資産を活かしながら、『マーケットで付加価値』をつける為には、ブランディング、そして、イノベーションが必要になります。

この、ブランディングとイノベーションを起こす手法として、近年『デザイン経営』という単語が注目を浴びています。まずは基本として特許庁のホームページをご覧下さい。

主要部引用します

「デザイン経営」とは、デザインの力をブランドの構築やイノベーションの創出に活用する経営手法です。その本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すことです。

もう少しかみ砕いた物は、このロフトワークス社のサイトが分りやすいです。

技術だけでは差別化が難しくなった企業の価値について、“デザイン”を経営の資産と捉え、活用することで、ブランド構築とイノベーションを推進していく経営手法です。企業の存在価値を改めて定義し、目指す姿を実現していく手法としても力を発揮します。

まさに、技術立国としての立場を築き、今度はその技術を使って、イノベーションを創出し、産み出された商品のブランディングを図っていかねばならない、豊橋の産業にこそ必要な概念ではないでしょうか。

そして、豊橋は、デザイン経営を採り入れた実績を持っています。

豊橋市東七根町の道の駅「とよはし」は、デザインを重視する経営に力を入れる。同道の駅によると、市内では珍しい取り組み。生き残りをかけた変化を迫られる中、地域の「ハブ(中核)」として地元企業のけん引役も担い、経済活性化を図る
企業戦略にデザインを取り入れる考え方は「デザイン経営」と呼ばれ、国も企業の競争力強化に向けて普及を進めている。

道の駅とよはしさんはnoteもやっています。

是非、この流れを維持するだけでなく、行政としても強力に推進して欲しい。

そのためには、拠点となる研究機関、そして地元企業と協業できる専門機関が必要です。その役割を担うのは、デザイン経営部門を持つ大学・大学院、そのものズバリの誘致が難しくとも、研究室やサテライトキャンパスなどの設置ではないでしょうか。

現在、日本では、このようなデザイン経営、あるいは、前提にあるデザイン思考を学ぶ公的な機関は、多くが大学の学部に設置されています。そして、このデザイン経営部門を持つ大学が市内に出来ることは、「市内の女子四大比率の高まり」そして、「その後の地元への残留」に直結します。先述の調査での『女性が働きたい職種』との親和性も非常に高いからです。

国内有数レベルで技術に優れた豊橋科学技術大学と、コミュニケーションや社会学的なアプローチでの地域課題解決に優れた愛知大学、福祉やビジネスに強みを持つ豊橋創造大学に加えて

この、デザイン経営系研究拠点が豊橋に加わり、先に提案した「域外進出振興課」の施策と合わせて、新たな産官学連携を起こしていく、その先には、これまでにないデザイン主導のイノベーションが「豊橋のものつくり」と「豊橋の地域活性」に生じ、若い世代が大いに活躍していく、そんな未来が待っていると思いませんか?

他地域の例としては、山形県鶴岡市が慶應義塾大学の先端生命研究所を誘致し、一定数の学生も鶴岡に居住してキャンパスに通っています。あるいは別府市には立命館大学の経営する別大学法人があります。完全な新規設立は難しくとも、サテライト設置など果敢に取り組みたいところです。

個人的には、ほのくに百貨店の跡地に研究機関を核に、および、デザインやマーケティングを業務とする民間企業が入居するデザインセンターのような物が建つと、その道路の向かい側に新設予定で、「ラーニング・クリエイティブ」に重点を置くとされている「まちなか図書館」との高い相乗効果が期待されると思っています。

そして、豊橋で必要とされる新産業のイノベーションをデザインドリブンで起こすこと、女性流出を防ぐキャリアを域内に作り、雇用を産み出し社会増を実現していくこと、その2つの同時解こそが、『デザイン経営系研究機関を誘致し拠点化する』ことなのです。

さて、この『デザイン』の思想がこの地域に根ざすためには、そして、根ざしていけばいくほど、豊橋の文化(カルチャー)が豊潤なものになっていきます。

鶏が先か、卵が先か、ですが、この地域の固有のカルチャーがあるからこそ、そこに、この地域ならではの内発的なデザインイノベーションが起きるのです。

そう、次の政策方針は『文化・カルチャー』です。

04.Nature&History&Culture

はい、これはちょっと格好つけました。だって、『東三河の自然・歴史・文化を大切にする』って表現した瞬間、いかにもな行政っぽさが出て雰囲気が伝わらないんだもん。

Nature&History&Culture、すなわち、自然・歴史・文化です。これは、私の中では、明瞭に順序づけがあって、この地域特有の自然、すなわち、山、川、空、谷、森、草、花、海、土という自然と、獣、鳥、虫、魚などの生態系があります。これは、人間誕生以前からずっと続く『自然』です。

その『自然』の中で、人々の原始的な暮らしが始まり、川を使った輸送や、けもの道がやがて街道となり、平地にまちができ、水の利用しやすいところに田んぼが出来、あるいは水害のない台地に畑が出来、春夏秋冬の季節に適応するように、夏の衣類、冬の衣類、旬の食事、寒暖や乾湿に応じた建築物の構造が出来、人類の『歴史』が始まっていきます。

そして、その『歴史』は、文字のない時代からの口伝えの伝承があり、何世代もの生活の積み重なり、人と人との交わりの重なりを経て、有形無形の形で、ある種の生活の様式や行動の価値観、審美眼の基準が、形作られていきます、これを『文化』といいます。

そう、『自然』を元に『歴史』が産まれ、そして『文化』が誕生します。

さて、この地域において具体的に観てみましょう。この地域は鳳来寺山、豊川、三河湾と太平洋に囲まれた地域、これはこの地域に集落が誕生する以前から存在していました。

そして、人間が入植し、各地に『村』ができはじめます。初期の暮らしのなごりとして、当時の海岸性沿いには貝塚が多く発見され、少し時代が近づくと、石巻や三ッ山など古墳遺跡の形になります。その後も、自然条件の影響を受けながら、祭礼のための寺社ができ、市場ができ、街道ができ、城郭ができていきます。

その積み重ねが、現在のこの地域の『文化』を作っています。

さて、行政区分としての東三河地域には8市町村あります。しかし、豊川の水は、「ここからが新城市、ここからが豊川市、ここからが豊橋市」など、水自身が考えているでしょうか。東三河に打ち寄せる波は「ここまでが蒲郡の海岸、ここからが豊橋、ここから田原の海岸」など区別するでしょうか。住宅地図では境界線が引かれていても、ロワジール豊橋の最上階から見渡す風景に境界線はありません

もっといえば、人間だって動物の一つであり、生き物としての身体性が文化に影響を与えています。行政区分など関係なく、概ね、人間が一日昼夜で歩きでいける範囲ぐらいが「住んでいる地域」と、身体感覚で認識出来るのではないでしょうか。

その感覚を大切にしたいと思います。

『グローバルに考え、ローカルに行動する』という『グローカル』という単語があります。『ワールドワイド』ではなく、『グローバル』という単語がポイントです。即ち『世界(ワールド)』ではなく、『地球(グローブ)』に着目しているのです。

地域社会学者の鶴見和子さんの文章がとても分りやすいので引用します。

・・・地域はまず自然生態系を共通とする、そしてひとまとまりになっているところ・・・
(中略)
・・・その地域の定義をまずお話しいただいて、そして国家を単位とすると、どうしても世界になる。世界連合とか、国連とか、そういう非常に政治的な関係しか見えてこない。だから、地域を単位にすれば、グローブ(地球)につながる。地域の集まりが地球だと。だからグローバルに考えられる。

これ、そのまま東三河地域にも当てはまると思います。

豊橋、豊川、といった行政区分に着目すると、どうしても政治色が強く出る。

そうではなくて、平井とか、牟呂とか、石巻とか、高師とか、下条とか、八町とか、新川とか、細谷とか、牛窪とか、千両とか、田峯とか、玖老勢とか、海老とか、西浦とか、塩津とか、江比間とか、六連とか、吉胡とか、そういった『地域』の集まりこそが、豊川生態系を一つにする東三河を構成しています。

そして、それぞれの地域には、それぞれの歴史とがあり、文化が育まれています。それこそが、まさに、豊橋、ひいては、東三河の固有のかけがえのない文化資産なのです。

そして、これを前提に政策の話に移ります。

自然が固有であるからこそ、歴史や文化も固有になる。自然・歴史・文化が結びつくほど、原理的に『他の地域に真似できない独自性』となります。その強みを磨いていくことで、まちなか地域の商業においては、個性的な商店、商品が並び、活気につながり、農業地域においては農産物の付加価値となり、工業製品については文化に基づくオリジナルな発想が生まれていくのです。

そして、この強みが特に活かせるのは『観光産業』になります。コロナも何年も続くわけではありません。まさに、外貨を獲得する、地域の外から来て地域にお金を落としてもらうのが観光であり、とりわけツーリズム、滞在観光です。

ツーリズムとツアーは違います。ツーリズムはこの地域により長く滞在してもらう。お金の流れに着目すれば、ツアーで儲かるのは斡旋する都会の代理店です。ですが、ツーリズムになるほど、地元での食事、地元での買い物が増え、地域内に留まる資本が増える。それは、地域経済の強さに繋がります。

そして、この『地域』に基づく日常的な営みを意識することは、自然と東三河の一体感を強めます。それは行政のお仕着せではない、真の地域協力につながり、交通、福祉、医療、様々な面において連携の基盤となるでしょう。

固有の自然から生まれる歴史と文化、つまり、日常的な営みこそを大切にし、それを『カルチャー』として認識し、磨きをかけていく。これこそが、豊橋に必要な文化政策だと思います。

文化政策というと、とかく、いわゆる『ハイカルチャー』(文化に、ハイもサブもないとは思いますが)に注目が行きがちです。もちろん、高度に洗練されたものを観て、感性を養うのはとても大切です。わたしも美術館、博物館は大好きです。じゃなきゃ、芸大に進学なんかしていない。

『文化』は、劇場や公会堂、文化会館、美術博物館などで観賞する物だけが文化じゃありません。日常の営み、食べるもの、住む場所、着る服、そして、人と人との関わりが重なる場にも『文化』が宿るのです。

芸術は『観る』だけのものでなく、日常的に『する』、いや、『している』ものです。

いわゆる『ハイカルチャー』だけでなく(もちろんハイカルチャーも大切)、もっと芸術、文化を特別なものでなく日常におろしていくこと。日常の文化性に能動的、自覚的になれるような仕組みを作っていくこと。

それは、デザインドリブンでイノベーションを産業におこし、雇用を拡大していこうとする産業政策につながり、なにより、私たち一人ひとりの生活を、確実に、彩り豊かなものにしてくれると思います。

『オンライン授業』『テレワーク』などで『居住地を選ばなくなった』といわれます。だとするならば、『オフラインの日常の固有の魅力』が『どこに住むか』を選ぶに当って重要なポイントになります。

もっといえば、それは人間の固有の感覚に依存します。「なんか心地よい」「なんかワクワクする」「なんか落ち着く」、そのような場は、その場の空気というのは、一朝一夕ではなく、歴史の積み重ねによって、人と人との交わりの重層によりできあがります。日常の積み重ねが「愛着」をうみ、懐かしさや心の落ち着き、居心地の良さに繋がっていきます。

そんな、いわば「自然と歴史に根ざした文化の副流煙が充満した街」であればあるほど、地球(グローブ)単位で観たときに、突出するローカルになるのではないでしょうか。

では、そのためにどうするか?次の話、教育に移ります。

05.STEAM+2H教育

STEAM教育という言葉があります。

もともとはSTEM教育と呼ばれ、理工系教育を指す言葉でした。これは、愛知県の取組みにも反映されています。

Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)の4分野(STEM)に重点を置いた「ものづくり愛知の未来を担う理数工学系人材」を育成する教育力の一層の底上げを図る必要があります。

言葉の意味は上記の通り、科学、技術、工学、数学となりますが、ここに、A(Arts 芸術・リベラルアーツ)を組み込んだものがSTEAM教育となり、文部科学省、経済産業省も推進しています。

これは、ものづくりに基盤を置く豊橋にとって、まさに必要な教育です。ものづくりの基盤となる理工系人材を育てる環境は、豊橋はかなり整っており強みになっていると思います。豊橋科学技術大学、サイエンスコア、地下資源館、自然史博物館という公的施設、そして何より、身近に工場がある環境は、まさに「理工系の副流煙」を吸える環境にあります。

ここに前出の芸術・デザインの要素が加われば鬼に金棒。あっという間にSTEAM教育の先進地になる余地を、この豊橋は兼ね備えています

そして、この豊橋の独自性を育んでいく為に欠かせないのが"History(歴史)"と"Health(身体)"教育です。歴史を学ぶ重要性、これは、前項で文化は自然と歴史に基づくというところで説明出来ていると思うので割愛します。

Health、つまり身体についても、文化は身体性とは切り離せないものであり、また、そもそも「健康な生活を送る為の知識と体力」は何においても必要なことです。ここには、体のつくりの話も、スポーツを通じた体作りや、日常に運動を取り入れる習慣づくり、スポーツへの親しみ、そしてさらには、体を作っている物、食べ物への興味関心と理解の育みや、あるいは、医療や衛生に関する知識、男女の身体的違いや妊娠出産に関する正しい性教育知識なども含みます。

従来、学校教育では、体育・部活動というのは「集団行動」であったり「努力の継続」であったりというところに主眼が置かれていました。近年、大分、その色は薄まっていますが、改めて、スポーツの「個人が健康的な日常生活を送るためのもの」をより意識して、幅広い種目に触れられる仕組みが望ましいのではないかと思います。

中1の4月に選んだ種目が、全て本人の適性にかなっているわけではありません。実は水泳に才能のある生徒が、3年間、野球に取り組んでしまうこともあります。既存種目の維持だけではなく、全国大会がない、全国的な組織が無いようなマイナーな種目でも、中学校複数で合同チームを結成すれば、『自分に合っている種目』『自分が心から楽しいと思える種目』の選択肢に多数触れる機会、様々な種目に触れる機会を生徒に提供することで、バランスの良い成長が出来るのではないかと思います。

教育の機会と可能性はすべての人に開かれていなければなりません。近頃「教育格差」という言葉がありますが、家庭の所得の差によって受けられる教育レベルに差が出てしまうこと、これは機会の平等という面からも、当然是正が必要です。給食費をはじめ部活動、制服など教育周辺の費用について、出来る限り行政が負担し、家庭の支出を減らしていってほしいとおもいますし、収入が十分でない家庭への手厚い支援は必須です。

そして、所得格差の克服だけでなく、虐待、DVを受けている子どもなど、所得以外の障壁で、十分な教育を受けられない児童をなくしていく。まさに SDGsの目標である「誰一人取り残さない世界」を実現するために、教育行政の担う役割は大変大きいです。

そして、所得以外に着目するのは、当然、性差。「女子だからそこまで高学歴にならなくて良い」あるいは「男子だから手に職をつけなければ」というような、男女のステレオタイプにはめることなく、特に、ものつくりのまちとしていくのであれば、「女性の理系専門職」は必要性の極めて高い人材です。「理系4大への女子進学率」というのは、行政の目標指標に入れて良いのではないでしょうか。

さらには、結局、日本の教育費がかさむのは、「塾がないと上位の学校に進学できない」ということ。学校外教育での家計負担が大きい。これを解決するには学校教育で塾が不要になるレベルにしないといけない。一般的な一人親家庭の収入でも理系大学に無理なく進学できることが理想ラインになってくると思います。

そのためには、「落ちこぼれ」を防ぐだけでなく、「自力で進める児童生徒にはどんどんと進ませる機会の提供」も必要でしょう。数学に興味があれば、小学校のうちから微分積分に取り組むような児童がいても良い。興味関心の発露に天井を設けてはいけない。豊橋は「子どもの可能性が好きなだけ伸ばせるまち」であって欲しいと思います。

そして、「教育」は子どもだけの話ではありません。人生100年時代と言われ、60歳は折り返し地点とさえ言われます。でも、60歳の人が大学で習ったことは40年前の知識です。私も今年で40歳ですが、私が大学院で学んだ当時最先端の概念は、今ではブックオフの中古本に書かれているような話だったりします。

市民として、また、職業人として、常に継続的な学び、一生続く学びが必要な時代になっています。大学の誘致など、教育機関の充実を通じて、「社会人の実務に耐える学びや・生涯通じて基礎になる教養の獲得」が継続できる環境を整えること、また、豊橋にいることで、知的刺激に溢れた日常が送れる「文化」を育んでいくこと。これも、行政の役割と言えるでしょう。

そして、そのような「自分自身の継続教育を受けてのキャリアアップ」も「自分の子どもにも最先端の教育を低予算で」実現できるまちであれば、自然に、若い独身世代が「このまちでキャリアを積もう」と選ばれるまちになると思います。

まとめ

さて、下記五項目について、豊橋市に実現して欲しい提案を書いてきました。

01.女性雇用の創出支援02.域内・域外と産業政策のターゲットを明瞭化
03.デザイン・経営の大学誘致で産業イノベーションを
04.Nature&History&Culture  Higashimikawa
05.STEAM+2H教育

これ、全てが繋がっています。

女性雇用を支援していくために、産業政策のターゲットを明瞭にし、これまでにない職種、産業を生んでいく。そのイノベーションには、技術だけでなくデザインの力が必要になるので、その拠点を誘致する。そして、誘致するだけではなく、日常生活の中からNature&History&Cultureを育てイノベーションが起こる風土を作る、そのためには生涯に亘るSTEAM+2Hの教育が欠かせない。そして、その教育が受けられることはキャリアの安定化に繋がり、女性雇用が増えていく。

全てがスパイラルに繋がっています。

私にも、2人の娘がいます。彼女たちが活躍する時代になったとき、思う存分活躍できる豊橋であって欲しいと、心から願っています。

最後までご覧いただきありがとうございました。 私のプロフィールについては、詳しくはこちらをご覧ください。 https://note.com/ymurai_koji/n/nc5a926632683