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黒麹の話

というtweetをいただきまして、書かなきゃと思いつつ、今になってしまいました、ごめんなさい。

今日は黒麹について書きます。

そもそも黒麹とは

そもそも、黒麹とはなんでしょう?それは、黒麹菌で作った麹です。というと身も蓋もないですが、黒麹とは焼酎や泡盛などに使われる麹の一つで、黒麹菌という名前の通り、黒色の胞子をつける麹菌で出来た麹です。

その特徴としては、クエン酸を生成することにあります。クエン酸ってきいたことありますよね。レモンとかに入ってるやつです。自然界の中では、比較的メジャーな酸で、人間の体内でも(というか、基本的に酸素を吸う生き物なら全部)「クエン酸回路」といって、食物からエネルギーを取り出して活動するためになくてはならない反応回路で使われています。

では、なぜ、黒麹菌はクエン酸を生成するのか。それは、焼酎や泡盛の主要生産地である九州/沖縄地方は、ご存じの通り日本の中では暑い地域であり、クエン酸を生成することで、焼酎や泡盛の製造途中で腐らないようにするためといわれています。酸っぱいお酢(酢の酸は酢酸といいます)をご飯に混ぜると保存が利くみたいな話ですね。

他の麹菌との違いは、こちらのnoteもご覧ください

学名、および、国菌

さて、この黒麹菌、学問上のお名前、学名はAspergillus luchuensisと言います。学名は斜体で書く慣習がありますが、noteの機能上そのままでいきます。

Aspergillusはアスペルギルスと読みます。Aspergillus oryzae だとアスペルギルス・オリゼーと読みます。いわゆる黄麹菌のことです。今日の所は、Aspergillus oryzae=アスペルギルス・オリゼー=黄麹菌というところは、話の前提のレベルにさせてください。

このluchuensisは、アルファベット通りに読むと「ルチエンシス」となりますが、実は沖縄を示す「琉球(りゅうきゅう)」に由来しています。そのため、「リューキューエンシス」という読み方があります。

ちなみに、学名の名付け方ですが、学名で地域名を入れる場合は~ensis 発見者の名前の場合は~i または~iiと名付けます。

そのため、麹菌じゃなくても、リュウキュウマツは学名は”Pinus luchuensis”と言います。また、沖縄地方に咲くヒメサザンカの学名は ”Camellia lutchuensis”です。


さて、麹菌は国菌という話があります。注意したいのは、Aspergillus属の菌が全部「国菌」に認定されているわけではありません。しかし、このAspergillus luchuensisは、「国菌」に認定されている麹菌の仲間に入っています。

詳しくは、国菌認定を行った日本醸造学会のサイトをご覧ください

麴菌とは、
わが国で醸造及び食品等に汎用されている次の菌をいう。
(1)和名を黄麴菌と称する Aspergillus oryzae。
(2)黄麴菌(オリゼー群)に分類される Aspergillus sojae と黄麴菌
の白色変異株。
(3)黒麴菌に分類される Aspergillus luchuensis(Aspergillus
luchuensis var. awamori)及び黒麴菌の白色変異株である白麴
菌 Aspergillus luchuensis mut. kawachi(i Aspergillus kawachii)。
注)Aspergillus niger(クロカビ)は、黒麴菌とは異なる菌種で
あり、麴菌には含めない。

黒麹の製麹の仕方

さて、続いて、黒麹の作り方です。ぶっちゃけ、この章は、黄麹で一回、米麹などをつくったことがある人の想定をしています。

というわけで、いきなり品温経過を出します、、というところですが、当社販売の黒麹菌を購入された方へのプレゼントにしておりますので、画像の掲載は控えさせていただきます。

大きく、文字でコツを言えば、普通の米麹の作り方と違って、麹造りの後半に30度台前半まで温度を下げます。このくらいの温度がクエン酸が良くでるんですね。

麹造りの大枠としては、前半戦に麹菌の菌体量を稼ぐ、後半で求める酵素と今回の場合クエン酸の生成を促していく、という考え方は、黄麹での米麹づくりと同じです。

ここから先は、有料のワークショップやセミナー、もしくは、当社の商品購入特典なので、ご勘弁ください。

(でも、たまに、clubhouseで、乗せられたら喋ります。)

黒麹づくりで注意すること

さて、この黒麹、一般には、黒色というと強そうな感じがしますが、実は、黄麹菌と比べると、圧倒的に黄麹菌が強いです。

当社が持っているデータだと、黒麹と黄麹を99.5対0.05(つまり、0.5%)で混ぜて麹をつくると、この程度でも、クエン酸をつくる能力は0.5%のダウンでは済まない影響が出ています。

ご家庭で黒麹をつくる時、多くの方が、まず黄麹で麹をつくって見ている方だと思いますし、器具、環境も同じ物を使われると思います。しっかりと道具、環境とも清潔に保ち、くれぐれもコンタミネーションには気をつけて欲しいと思います。

黒麹の用途

黒麹の用途、とかきましたが、黒麹の白色変異である白麹(Aspergillus luchuensis mut. kawachii)も含めて、お話しすると、やはり、「クエン酸」に着目した用途が多いようです。

近年では、クエン酸の風味に着目し、清酒製造の際に(その場合は、ほぼ白麹になります)使用することもありますし、黒麹でつくった甘酒も近年商品化されている物も多く見かけるようになりました。

味覚としての酸っぱさは、本来は「毒を避ける」ために、酸っぱいというのは危険なシグナルとして機能しており、実際、硫酸、塩酸など、「酸」は人間にとっては害を及ぼす物質も多いです。

しかし、クエン酸は、先述の通り、人間にとっても必要不可欠な酸です。なので、人間の味覚にとっても求められる酸っぱさとなっているようです。(伏木亨「味覚と嗜好のサイエンス」より)

そのため、塩麹や甘酒など、これまでも、直接麹を味わう商品のブームが定期的に来ていましたが、この黒麹も、新しいおいしさをもたらすものとして、使用法がドンドン広がっていけば良いなと思っています。

基本的に、レモンが合う物なら、何でも合います。米で黒麹をつくれば、そこに米の甘みも乗ってくるので、優しい酸っぱさをもつ食材だと思います。


私は、カルパッチョにあわせるのが好きです。


今日の話はここまで

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村井裕一郎
最後までご覧いただきありがとうございました。 私のプロフィールについては、詳しくはこちらをご覧ください。 https://note.com/ymurai_koji/n/nc5a926632683