『こうじ』の由来と『麹』と『糀』の違い
画像はイメージです。今日は『麹』と『糀』の違い。そして、そもそも、なぜ「こうじ」と呼ぶようになったのかを書きます。
「こうじ」の由来
そもそも、なんで「こうじ」を「こうじ」と呼ぶのでしょう?
1つめの由来の理由としては「コウジ」の発音については、いわゆる『記紀』の時代に「加無太知」(カムタチ)という記述が見られます。おそらくは、『カビが立つ』→『カムタチ』という音韻変化であったのかなと推察されます。その後は『カムタチ』『カウタチ』『カウチ』『カウジ』『こうじ』となっていったと思われます。
もう1つの説としては韓国語で麹のことを「クッチャ」「コツチャ」と呼びます。これを漢字では『麹子』と書きます(正確には麦にょうに曲)。『子』は『ジ』とも読みますので(王子様とか)、これは読み方が変わって『コツジ』『コウジ』となったとも考えられます。
個人的には、一つに決めきれる物ではなくて、その両方の経路の影響をうけて「こうじ」になったというような気がします。
なお、弊社に伝来されている資料では、ひらがなで「かうじ屋三左衛門」という表記の物もあります。
『麹』と『糀』
さて、『麹』と『糀』の違いですが、結論から言えば、『麹』は中国から伝わった漢字、『糀』は日本で発明された漢字、いわゆる『国字』です。
これは、先回のコウジの違いの記事のとおり、中国は麦の餅で麹を造っていたので、麦という字が用いられたのではないかと考えられています。そして、日本に入ってきて、日本は米でコウジをつくるので、米編に花で、『糀』になったのではないでしょうか。
そして、いつごろ『糀』という字が作られたのか。江戸時代には『糀』という字を使っている文献が現われるようになります。
有名なところでいいますと、歌川広重の『江戸百景 外櫻田辧慶堀糀町』という絵がインターネットで見ることが出来ます。(ライセンスの関係で掲載できないので、作品名で直接検索して下さい。)タイトルの通り『糀』の字が使われており、作品の中にも、筆書きで『糀町』と書かれています。ちなみに、現在の麹町に相当します。
『麹』と『糀』の使い分け
さて、皆さんが悩むところですが、この使い分けは、何かルールがあるわけではありません。ただ、業界やそれぞれの企業や組織の慣行としての使い分けはあるようです。具体的には、学会や行政など公的機関では、ほぼ100%『麹』の字が使われます。
種麹、米麹、麹、製麹などですね。特に最後は『セイキク』と読み、麹を作ることを意味します。『キク』は『麹』の音読みなので、国字である『糀』だと『キク』とは読めないです。
逆に、カルチャースクールなど一般マーケットでは『糀』を使う例も散見されます。食品の原料としては『麹』も『糀』もどちらも見かけるようになりました。『糀』を意識的に使われている方は、『米が原料のコウジは糀を使う』という基準を設定して使っているケースが多いようです。
なお、当社としては、『糀屋三左衛門』などの固有名詞や『塩糀』などの商品名は『糀』、それ以外の物質そのものを指し示すときは『麹』を原則にしていますが、あくまでも原則です。
ただ、当社の郵便物の1割、特にダイレクトメールは圧倒的に『麹屋三左衛門』なんですよね。團伊玖磨さんという作曲家がいらっしゃいましたが、『団伊玖磨』宛のダイレクトメールは、『私は團伊玖磨であって、団伊玖磨ではないから、別人宛の手紙を開封してはいけないだろ』と開封しなかったという逸話があります。
最後に、当社宛郵便物の宛先間違い例を掲示して終わりたいと思います。
例:麹屋三左衛門←一番多いです。
例:糀谷三左衛門←東京に糀谷って地名あるからね。
例:粕屋三左衛門←手入力をした人間かOCRが読めなかったのかな。
例:糀屋三佐衛門←まあ、これは理解の範囲。
例:糀屋三左衛問←1文字ずつ入れて最後に油断されたようです。
例:糀三屋左衛門←ぱっと見分らないが、なぜこうなった?
例:糀式会社 株屋三左衛門←ちょっとまて。なにがおきた。
これで届く日本の郵便制度は凄いです。
今日の話はここまで。
(せっかく郵便いただいた皆様、ネタにしてごめんなさい)