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追い付かなくていいし、消化しなくてもいいんじゃない?「君たちはどう生きるか」

宮﨑駿の最新作「君たちはどう生きるか」を見てきた。
ストーリーなどの詳細はいろんな人たちがレビューで紹介しているので
、ここでは割愛。
※ネタバレももあるので、未見の方はご留意を。

油断するな、マッハで抜かれるぜ

この作品は、消化に時間がかかる。
見終わって1日経ったけれど、まったく消化していないし、1週間たっても消化が終わらない気もする。

消化できない理由は、まずスピード感。
ストーリー展開が早い。場面転換も早い。
次から次へと登場するキャラクターたちにも追い付かない。
このスピード感に追い付こうとすると、あっという間に、マッハで抜かれる。
その結果「わけがわからない」という感想となってしまう。

そして、これまでのジブリ作品とは違う、少年の感情描写に驚いた。

これまでの作品の主人公は、明るくて純粋で正義感の強い子が多かったが、
本作の主人公は、鬱々とした気持ちを心に秘めている。
生臭くてドロドロとしたダークな感情を持っていて、
とあることがきっかけで、その感情が爆発してしまう。
その感情描写に不意打ちを食らってしまった。
ジブリ作品はこうあるべき、というイメージとの乖離に追い付けなかった。

そのフタ、少しだけ開けてみる?

でもこの乖離こそが、大事なのかもしれない。
いつでも正しい気持ちでいられることは難しいし、誰もが生臭い感情を持っていて、その感情にフタをして生きているのではないか。

ダークな気持ちのフタを閉め続けていると、感情が腐敗しガスが発生して、ふとしたことで爆発してしまう。

そうなる前に、フタを少しだけあけて、中をのぞいて
「自分はこういう気持ちを持っているんだな、それも自分だな」
とガス抜きをしてみる。
怖いけど、臭そうだけど・・。えいやっと重たいフタを開けてみる。
ちょっとした勇気が、自分を認めることにつながるだろうし、それこそが成長といえるのかもしれない。

本作の主人公は感情を爆発させ、様々な生き物と出会い、少しずつ自分を、そして他を受け入れていく。
受け入れる=成長していく=そして人生は続いていく。
だから、あのラストシーンでいいのだ。と、今になって思う。

この作品は消化するのに時間がかかる、と冒頭に書いたが
そもそも、消化しようと焦ることはないように思う。
ゆっくり咀嚼して、少しずつ飲み込んで、自分の血肉に変えていけばいい。
この投稿を書いていて、そんなことに気づいた。


一緒に鑑賞した方の感想も書いておく。

この作品はストーリーを求めるものではない。
あの風景はナウシカに出てきそうだな。
あのトーストやシチューは、ラピュタっぽいな。
と、これまでのジブリ作品を彷彿とさせるシーンが多々あったので
自分が好きなジブリ作品をもう一度見たくなった。

改めて見直すことで、自分の心がどのシーンで動くのか、
どのセリフに心奪われるのかが再確認できるだろう。

自分の好きなもの、大切なものを改めて知ることで
自分がどう生きるのか、どう生きたいのかが見えてくるように思う。




























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