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エッセイ_2「楽しくて悔しかった【文学フリマ東京38】振り返り」

5月19日(日)文学フリマ東京38開催。半年ほど前から楽しみにしていたイベントであり、実際に足を運んで楽しむこともできた。

振り返りのnoteを書こうと書こうと先延ばしにしていたら5月が終わっていた。このまま書かずに終わるのも寂しい気がするので、思い出として書き残そうと思う。

某夢の国を彷彿とさせる待機列の老若男女

こちとらGoogleマップを使っても迷うほどの方向音痴かつ都会に出る頻度の少ない田舎者。事前に自宅から会場までの行き方を確認していたものの、都会の喧騒に圧倒されて乗り換えミスを連発してしまった。
会場までたどり着けるか不安になり、出店者として準備していた友人に迷子である旨を伝える始末。次回から会場が変わるようなので再び迷うだろう。

快速に乗りかけた人生初のモノレールに感動しながらどうにか会場に到着したが、待機列の人の多さに驚いた。第一展示場と第二展示場で待機列が別だったが、どちらも多かった記憶だ。某夢の国を思い出したのは僕が田舎者だからだろうか。

若者ばかりかと思っていたが、待機列には老若男女が並んでいた。僕を陰キャと形容するならば、明らかに陽キャと呼ばれるであろう若者もいた。実生活では絶対に相容れない属性の人間同士が同じ目的で並び合う不思議な空間。

怖そうないかつい見た目のあの人も、仲睦まじい着物姿の老夫婦も、ベビーカーを押す子連れの人も、あの場に並んでいた全ての人が文学を愛していると考えるととても幸福な空間であった。出版不況が嘆かれる昨今だが、「文学の未来は何の問題もなく安泰なのではないか」と錯覚さえしまうほどに。

所感①友人やフォロワーさんに会えた

1番の目的は、出店している友人やフォロワーさんに会いに行くことだった。

3人の友人が出店していたが、会うのは2019年以来実に5年ぶりのこと。会った瞬間に僕が誰かを理解してくれたことがとても嬉しく、一瞬で5年前に時間を共にしたあの頃に戻れた気がした。日頃から深く関わっているわけではないが、会えば昔と何も変わらずに話ができる。大人になるとなかなかできない関係性をこれからも大事にしていこうと思う。

5年前と変わったことといえば、友人たちはやりたいことを少しずつ叶え、僕は相変わらずくすぶったままということだ。ドライな言い方をすれば前へ進み続けるクリエイターと立ち止まったままの消費者。「ああ、早くそっち側に行きたい」と純粋にそう思った。5年間何をしていたのだろうと。
文学フリマに出店することが目的ではないが、誰かが会いたいと思える人間になりたいし、そういう作品を生み出したいと思った。

友人のほかにnoteのフォロワーさんにも会うことができた。SNSでつながった人に会う人には初めての経験だったので、緊張して全然上手く会話はできなかったが、「本当に実在した!」という芸能人にでも会ったような感覚だった。顔も本名も知らないまま出会ってもSNS上の共通認識のおかげで会話ができるおもしろい時代。

所感②山田チャーハンという名前を一生背負うのだろうと思った

文学フリマの会場にはプロの作家として活躍している人の出展ブースもあり、そのうちの1つが旗原理沙子さんのブースだった。第129回文學界新人賞を受賞した人であり僕の目指す道を先に行く人だ。

ブースにお邪魔する前に文學界のブースで受賞作が掲載されている号を購入し、あわよくばサインをいただこうという企みは見事に成功した。

「お名前どうしますか?」と聞かれ、「山田チャーハンでお願いします」と答えると「あ、なんか知ってるかも」と言われた。
何者でもない僕を認識している?何かの間違いかと思ったが、どうやらTwitterで見かけておもしろい名前だから頭の片隅にあったとのこと。

人生で初めて会うプロの作家。目指す道の先を行くプロの作家。名前だけが独り歩きしている感は否めないが、そんな人に認識されていた名前。「ああ、きっと山田チャーハンという名前を一生背負うのだな」と変な覚悟が決まった瞬間だった。6年前に酔った勢いで名付けられたあだ名は本名以上に大事な名前になりそうだ。

結局持ち前のコミュ障が発動して全然会話はできずに終わってしまった。恐れ多くて「僕もそっち側に行くので待っていてください」なんて口が裂けても言える雰囲気ではなかった。書き続けてきた人間と書かずにくすぶっている人間の圧倒的な差の前にただただ恐縮するばかりだった。

楽しくて悔しかった文学フリマ東京38

友人やフォロワーさんに会えたこと、プロの作家に会って会話できたこと、文学愛の熱気を肌で感じられたこと。感想を書き始めたらキリがないだろう。

「楽しかった!」で終われなくもないのだが、やはりどことなく「悔しい」が心に残る。何かを成し遂げてきた人と何もしてこなかった人の差をこの目で見て、肌で感じたからだろう。

近いうちに必ずそちら側に。


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