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美しい屋敷に魅いられている

先日『The Others』という映画を観た。ジャージー島の大きな屋敷に住んでいる母と子どもたちのお話。戦争から帰ってこない父を待ちながら、不安な日々を送っていた家族のもとに、あるとき三人の使用人があらわれ、彼らが暮らし始めると、様々な怪奇現象に見舞われてしまい……というホラー映画だ。

最後のどんでん返しもさることながら、あの屋敷の閉塞感がとてもとても好きで、物語がほとんど屋敷のなかで完結するというのも良いなあと思う。部屋と部屋のあいだを燭台のあかりだけで進んでいくような、闇をかいくぐっていくような、屋敷のありかたと物語性に憧れている。ここ数年はずっとそうだ。

幽霊の扱いはとても難しい。振る舞いによっては、人間でいいじゃんとなってしまう。アンドロイドとかの機械仕掛けの人形もそうで、ひとの心をもってしまった人形は人間となにが違うの、となってしまい、釈然としないまま、物語を終わりまで追いかけるはめになる。幽霊はモチーフとしてぽんと出しやすいけれど、作者の死生観がもろにあらわれるから、よく考えて使ったほうがいいのだ。たぶん。

死者の脅威を損なわないまま、生者と共存している感じ、互いに影響しあっている感じ、ああいう関係を書きたい、書きたいとずっと思っていて、ようやく今年、それが形になりそうだ。私がこれから書くお話は、死者というよりは、屋敷の記憶がメインになるけれど、それも一種の亡霊だと、私は思っているので、気にせずに書いていこうと思う。

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